小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
都内から2時間のニュータウンにマイホームを持つ主人公が、定年退職後の生き方に悩み、葛藤と試行錯誤を繰り返しながら、自身の生きがいを探す物語。
本書は小説でありながら、主人公目線の記述になっていないところがユニークでした。
会話以外の記述においても主人公のことを「山﨑さん」と終始「さん」付けで書かれている等、ストーリーを少し俯瞰した立場から眺めているような、不思議な錯覚を覚えます。
無事に定年まで勤め上げ、自宅のローンも完済。娘2人は元気に巣立ち孫にも恵まれている。
一見すると幸せな60歳、悠々自適な第二の人生の始まりだが、作中では『平凡なサラリーマン生活を終え、残ったのモノは都心から2時 -
Posted by ブクログ
『容子がいなくなってしまった状態に、私はうまく慣れることができない。
ふと、容子に話しかけようとして、われに返り、「そうか、もう君はいないのか」と、なおも容子に話しかけようとする』【作中20章より】
生前、直木賞をはじめとする様々な賞を受賞した名作家の遺稿から生まれたのが本著でした。
本著では、これまで日本経済を舞台とした社会経済小説等を中心に執筆してきた城山三郎氏が、今までの執筆スタイルとはまるで違う、『妻=容子さん』との出会いや、自身の心の奥底から湧き出てくる容子さんへの愛情、そして築いてきたその暖かな日々。そして二人三脚で歩んできた、いや、一心同体と言っても過言ではなかった容子さんを -
Posted by ブクログ
ネタバレ推しにまつわることには頑張ることができるし、ブログには文才があり、決してただ頭の悪い子ではないんだろうなと思う。
自分の子が、生活全てを推しに捧げてしまったらと考えると、どうしようもない気持ちになる。
推しがいなくなった後、彼女は日常に戻れるのか。
「推しのいない人生は余生だった。」
という言葉が心に残った。
引退発表後、「推しがいなくなる衝撃を、受け取り損ねている」とあった。
衝撃的なことがあっても、自分の感情で受け止める前にSNS等で人のコメントを読むうちに、自分の最初の気持ちがわからなくなること、すごく鮮明に印象に残った。