健康・医療 - ロギカ書房作品一覧
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 少子化は非婚化が背景としており、男性の生涯未婚率は28 %、女性は18 %にも達するようになりました。こうした傾向が生じた理由について社会学者がさまざまな角度から検討を加えており、要因は複合的であり複雑です。理由がなんであれ、少子高齢化の現実的問題として直ちに浮上するのは労働力不足であり、一国の経済的な基盤を揺るがすだけに国としてなんらかの対策を講じないわけにはいかない。必要な労働力を確保するには生産性の向上を目指すAI 技術への進歩に期待する向きもあるが、基本的にはやはり人的資源です。具体的には女性労働力の確保、高齢者の就業期間の延長、外国からの移民など考えられるが、なんといっても核となるのは何と言っても女性労働力の活用です。こうした発想に基づいた国家政策はいまや世界的な潮流になっています。 本書のテーマであるフェムテックは女性の生理的、社会的、経済的負荷を軽減し、QOL を高め、そして社会進出を促進するための技術であり、いわば時代の要請に沿ったデバイスであります。とは言うものの単なるテクノロジ―に止まらず社会的含意を内包しているためにさまざまな価値観が錯綜している現代社会では、技術開発の方向に異なる考え方があることは過渡期としてむしろ当然であろう。医療に関連した技術は比較的コンセンサスが得やすいが、それでも代理出産や未婚者の凍結卵子、人工受精などについて倫理的議論があります。さらに医療の枠を飛び越えたバラエティに富んだ技術などについて法規制が必要かどうかにもすでに議論の俎上に載っております。 本書ではこうした今日的な情況のなかでの議論に資するために科学的エビデンスを提供する目的で編集されました。執筆して頂いた方々は女性(Female)問題に強い関心を持ち、かつ技術的(Technology)側面に専門性を持つサイエンティストであり、客観的記述に徹して頂きました。読者諸氏の参考となれば幸いです。
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 みなさまこんにちは。産婦人科医として40年以上不妊治療に取り組んでいる堤治と申します。この本を手に取って頂いているみなさまの多くは、ご自分が不妊症ではないかと悩まれたり、不妊治療に取り組もうとされていると思います。不妊を心配されるご夫婦は26組に1組、実際に不妊治療を受けたことがあるご夫婦は4.4組に1組とけっしてまれなことではありません。 本書の目的とするところは、みなさまの疑問に答えながら妊娠する仕組み、不妊の原因や治療法などをご理解頂き、不妊治療の敷居を下げて受診してみようかなと思って頂こうというものです。もしかしたら、この本を読んだだけで、「そうだったのか」と自然妊娠される方もおられることも期待しながら話を進めてまいります。 各章の最初にそれぞれの章のねらいとそこで知って頂きたい疑問点をQ&Aという形でお示しします。不妊外来でお話していると患者さんに「もっと早く知っておきたかった。どうしてもっと早く教えてくれなかったのですか」と言われることが少なくありません。初診ではじめてあった方には教えようがありませんが、みなさまにはぜひ、読み進みQ&Aにご自分でお答え頂けるように読み込んで頂ければ幸いです。 不妊治療を大きく分けると一般不妊治療と生殖補助医療の2つがあります。流れとしては一般不妊治療が先行し、よい結果が得られない場合体外受精などの生殖補助医療が適応となります。生殖補助医療は保険適用にもなり体外受精で生まれた子どもは年間7万7千人、日本で生まれる子どもの9人に1人を占めています。生殖補助医療は大きな成果を上げる一方、光と影でなかなか妊娠が成り立たない難治性不妊が浮かびあがっています。本書でも解説させて頂き最新の治療法についてもお話します。 不妊治療をより立体的にご理解頂けるように、本書にご協力下さった方々がおられます。8章はみなさまご存じのシンガーソングライターの大黒摩季さんが子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症に苦しみながら不妊診療に取り組んだ経過を患者さんの目線でお話くださいます。9章はご自身の不妊治療経験から東尾理子さんが立ち上げたNPO法人TGPの取り組みを紹介くださいます。林謙治先生は産婦人科医ですが、厚生行政にもお詳しく、10章「少子化と生殖医療をめぐる社会環境の変化」を執筆くださいました。 前置きはこれだけにして、第1章「妊娠のなりたつしくみに」進んでいきましょう。