原田康子作品一覧

  • 蝋涙
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    蝋の雫のような真珠のアクセサリー。それを見るたびに蘇る、密やかな思い……。若き日への感傷をつづる表題作をはじめ、娘の出生に疑問を持つ父親の愛憎を描く「渚にて」や、夫婦の日常を通じて「老い」を語る「冬の月」など。人生の深奥を見つめた、珠玉の名作7編を収録。第38回女流文学賞に輝く、自伝的作品集。この7つの物語の中にきっと、あなたもいる。 誰もが経験する、生と死、愛と性、青春と老い、そして希望と悔恨。
  • 素直な容疑者
    3.0
    目覚めたとき、明の横で、女は息絶えていた。赤くよごれたシーツと、ベッド脇の血をたたえた水槽。逮捕された明が、自ら推理したのちに選んだ運命は? 少女の愛の渇きを見事に捉えたミステリーの表題作のほかに、女性心理の微妙な揺れ、また翳りを描く「窓辺の娘」「犬を飼う男」「街の神秘と憂愁」など全7編。
  • 風の砦(上)
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    幕末の北海道に生きた若き武士たち。ロシアの樺太進出を恐れ、江戸幕府は、東北諸藩に蝦夷地の警固を命じた。厳寒の地で歴史の荒波に翻弄されながらも、土地を愛し人を愛して、まっすぐ生き抜こうとする男と女を描く、感動の歴史長篇。人妻との運命的な出会いは、侍の道を超え、純粋な愛の旋律を奏で始める。厳寒の地・北海道の警固を志願した若き侍たちの運命は? <上下巻>
  • 素直な容疑者
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    女の横で朝をむかえる、はじめての経験、充ち足りて、それでいて何かもの悲しい。夢うつつに目ざめた少年の目に突然、赤く汚れたシーツ、真っ赤な水をたたえた水槽がとびこむ……。名前も知らない女はすでに冷たい。(「素直な容疑者」)他に北国の孤独な風景の中に微妙にゆれ動く女の愛と哀しみを描く「峠」「窓辺の娘」など六篇を収録。
  • 輪唱
    3.5
    釧路港を見下ろす高台の縁に建つ内藤家の魅惑的な三姉妹――引っ込み思案でぼんやり者の長女の泉、しっかり者で明朗な次女・麻子、勝気でおっちょこちょいの三女・通子。ある日、お見合いの日のせまった泉が肺炎にかかり、身代わりに約束の場所へ出向いた麻子に異変。相手の青年をみとめた瞬間、呆然自失して……。彼女たちの知らない複雑な出生の秘密、いろどり鮮やかに三人三様の女の〈愛〉を描いた長編小説。
  • 廃園
    -
    ――ふいに、簑島夫人のぬれたような黒い髪と眼を思いだした。わたしの指よりも白く細い、オパールの指輪をはめた彼女の指が、夫の体をまさぐっている。そんな沈んだ色合の場面を、わたしは心の中に描いていた……。単調な家庭生活に倦み、くずれた幻を追う人妻のむつ子。孤独をいやすために、血のつながらない従弟の“若い心”をくすぐる感受性の鋭い女。妻子ある男との無謀な恋にふけり、疲れ果て自殺に失敗した過去のある女の、“愛”の不条理を描いた長編傑作。
  • 北国抄
    3.0
    ようやく雪が消えて、海辺の崖の上の日だまりに桜草が芽を出すと、釧路の海霧のシーズンである。冬はひたすら寒い北国の自然の中で、季節のうつりかわりに敏感に反応する著者の詩。雪、湿原、石狩連峰の稜線の美しさ、針葉樹林などの自然の息吹や人間のいとなみを、洗練された文体で謳い上げる。エキゾチックな北海道の大自然を舞台に、小悪魔的なヒロイン・怜子が活躍するベストセラー『挽歌』の著者、初めてのエッセイ集。
  • サビタの記憶
    -
    比田さんはいつも夜、浴場に行く。よく私をさそった。でも私は、一緒に行くのがためらわれた。病弱であっても、私の乳房はふくらみはじめていた。乳首は桃色になり、こりこりと固くて、触れるとうずいた。針葉樹林にかこまれた湖畔の保養先で、病弱で孤独な一少女が体験したあの事件。湯気にけむったような薄黄色いサビタの花の記憶も鮮やかに……。原田康子初期の名作短編集、表題作ほか7篇。
  • 殺人者
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    10代から20代にかけ、病気と回復を繰り返す心の不安定な時に家出や駆け落ちを繰り返した21歳の淳子。ついに父の小切手を無断で使ったことを見咎められて、北海道で謹慎生活を送ることになる。ある日、彼女の下に逃亡中の殺人犯・礼太が転がり込んできた。理由もなく彼を匿った淳子は、やがて彼に対して奇妙な感情を抱くようになるのだが……。閉ざされた北の別荘で起きる男女の葛藤を描く異色サスペンス。
  • 日曜日の白い雲 (上)
    -
    1~2巻660~704円 (税込)
    父の反対を押し切って結婚したヴァイオリニスト百合は、離婚という重荷を背負い故郷北海道へ帰って来た。いまは、音感さえも失われ、ヴァイオリンを手にすることもない日々を送っている。ある日、百合は千歳の街で出会った青年パイロットに心惹かれてゆく。青年との新たな愛の始まりは、百合にとって新しい出発となるであろうか。緊迫した基地千歳を舞台に真実の愛の世界を描く感動のロマン。
  • 挽歌
    5.0
    “私が桂木さんに魅かれたのは桂木夫人の不貞を知ったからである。彼女のものうげな微笑をたたえた眼差しに私の心はいつしか捉えられ彼を愛すると共に夫人をも愛してしまう。それが死へ結びつくとは知らずに。”白鳥の羽根のそよぎにも似た若い女性の微妙な心の動きを追って北国の風景の中に展開する愛と死のロマン。
  • 窓辺の猫
    -
    長い人生を彩った愛しきものたちへの挽歌。30年余の歳月を北国の風土の中で共に暮らした犬や猫たち……デベソのシャム、花火の音が苦手のコリ-、ボケで長生したチロ……彼らへの愛情を自分史に重ね描く長編。
  • はなれ駒あそび駒
    -
    馬を愛し、駒を愛してやまない著者がつづるユニーク随筆集。オグリキャップを愛しトウカイテイオーに魅せられた競馬の楽しみを馬たちの想い出に託して語り、60の手習いで、駒音高く盤上に鉄火の心意気を示す将棋修行の快感を、先崎・羽生・谷川など若き名棋士たちの人となりと共に描きだす痛快エッセイ。
  • 鳥のくる庭
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    身辺のことどもを優しい目で拾うエッセイ集。長く北海道に住み、その一隅から季節の移りゆきを綴り、さりげない暮らしのひとこまの中の新しい発見を語り、旅・交遊・文学を思う。やすらぎに満ちたエッセイ集。
  • 海霧(上)
    4.0
    幕末の佐賀に生まれた幸吉は、米問屋に奉公に出るが、「新しい時代の産物」石炭に魅せられ、坑夫となってエゾ地へと渡る。広大な未開の地にあって、己の力と才覚で新しい人生を切り開いていくのだった・・・。幕末から明治、昭和へと、激動の時代をひたむきに生きた著者の血族を描いた物語。吉川英治文学賞受賞。(講談社文庫)

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