最高のミステリ小説、ここに
ミステリ小説ではあるあるなのかもしれないが、本のページをめくってすぐに書かれていた登場人物の名前の数に、最初私は圧倒された。果たして話についていけるだろうか、そんな不安を抱えていたが、しばらくしてそれは杞憂であることに気づいた。本書では、兵隊さんの童話の通りにテンポよく人が死んでいくため、徐々に覚える名前が減っていき、作品の後半からは、ページをめくるスピードが早くなっていたように感じる。それはそれとして、次に内容について話していこうと思う。一言で言えば、最高である。確かに、時代が時代ではあるため、孤島から脱出する手段が一般人が運転するボートしかないことは、読者からしてみればまず引っかかる点ではあるが、それは読み進めていくにつれて、脳裏から離れていった。なぜなら、物語は「ボートが来る、来ない」から、「誰が犯人か」、へと変わっていき、読者をこの変化にうまく導くところは、さすがはアガサ•クリスティーといったところだろう。そして、「誰が犯人か」についてだが、最初私はマーストンと、アームストロングが犯人ではないかと考えていた。その理由としては、マーストンの死を断言できる者は当時アームストロングしかおらず、仮にマーストンとアームストロングが裏で繋がっていて、マーストンが生きているとしよう。その場合、アームストロングは他の皆の注目をそらして、自分の部屋にマーストンを隠れさせ、いざという時に、ミスブラントや、マッカーサー将軍を、彼をして影で殺させていたのかもしれないからだ。しかし、結果は、そうではなかった。なんと、犯人はあの判事であったのだ!さすがの私も、最初は作り話にも程があると憤ってはいたが、判事の織りなすトリックが明らかになった時、私はあまりの華麗さに脱帽した。ミステリ系の作品の一つとして、私は名探偵コナンを例に挙げるが、アガサ•クリスティーの作品はコナンとは違い、読者に犯人を探す上での鍵を、犯人が明らかになる前に、全て提示している。そうすることで、読者は本を読みながら犯人についての可能性を無限に推理することができ、そうすることでミステリ系作品の醍醐味をこの上なく味わうことができる。ちなみに、私はアガサ•クリスティーの作品に触れるのが今回初めてであるため、今後も色々な作品に触れていこうと思う。最後に、長々となりましたが、失礼します。