あらすじ
日本を代表する古都の外れにある小さな町――波岸町。
独特な方法を使って除霊する小百合は、ある寂しさを抱えながら
その町で相棒犬・ケンタとともに彷徨う魂を導いていた。
そんな小百合の元へ同業の除霊師からある依頼がもたされる。
簡単そうに見えたその除霊は、あることをきっかけに大きな事件に発展するが――!?
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人間の三大欲求の一つである“食欲”が刺激される連作短編集。
「幽霊を体に取り込んだ状態で一緒にご飯を食べる」という小百合の除霊方法。
設定として面白いけれど、結果として無茶することになるのでハラハラした。
でも会話ができる相棒犬・ケンタとの交流は読んでいて微笑ましかった。
美味しいご飯と心温まる物語が楽しめる一方、胸が締めつけられる展開もある。
切なくても元気をもらえる作品なので、ぜひとも続編を書いて欲しい。
Posted by ブクログ
小百合の除霊方法は本当に変わっている。
未練のある幽霊を自分の体に取り込んで、幽霊が食べたいものを一緒に味わって満足させて成仏させるというもの。
ケンタではないが、体を張りすぎていて心配になる除霊方法である。
カロリー面も金銭面としても心配である。
事実、太ったみたいだし。
全七話の構成なので、それぞれで様々な幽霊の様々なパターンの未練なり料理なりが出てきて面白かった。
カレーうどんにホイップクリーム(砂糖なし)の発想はなかった!
小百合が幽霊のために食べる料理は、上記のとおり、馴染みのあるメニューでも具材やら作り方やらが少し個性的で、そこも興味深かった。
終盤は、除霊の難しい話、そして名前は出ているのにご本人が一向に登場しない義父に関わる話になる。
多少は予想していたけれど、想像を上回る展開で胸が辛かった。
その後で、ちゃんとご本人が登場するんだもんなあ。
あの展開で泣くなというのが無理だ。
義父の話はこれで解決するが、解決しないのが相棒犬ケンタのこと。
犬ながら除霊もできてしまい、小百合とだけは会話できる不思議犬。
実は元人間のようだが、彼のことに関しては解決しないまま終わるので、全部解決してスカッとする話ではない。
何もかも解決して、バディ解消になると、それはそれで寂しいので、現状維持でもいいのかもしれないが、解決するパターンも見たかった気がする。
でも、作中の某キャラの言葉を借りるなら「欠けている」状態の方が魅力的なのかもしれない。
ケンタという謎を残したまま、不完全に終わる物語。
余白を想像して、読後も楽しめる物語、なのかもしれない。