【感想・ネタバレ】あなたを愛しているつもりで、私は――。 娘は発達障害でしたのレビュー

あらすじ

【第8回ネット小説大賞受賞作】深町夕子の娘、七緒は発達障害――自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断された。最初は、大人しくて賢い子なのだと思っていたけれど、だんだんと七緒は、奇妙なこだわりが強く、他者に興味を持たずコミュニケーションが苦手だということがわかってきた。「発達障害」だという診断を受けて、夕子は七緒を障害児も受け入れる幼稚園のプレクラスへと通わせることに。しかし七緒は周囲と馴染めず、問題が続いていき……。「七緒はどうしたら“普通”になることができますか……」娘との関係、夫との関係、ママ友との関係、自分の母との関係。“普通"とは違う娘を抱えながら悩み抜いた、母親の物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ


発達障害の娘七緒に向き合う母親夕子の内面のなかで葛藤が起きて娘を愛し守り育てるつもりで、現実では娘の特性を認められずに普通の子供にこだわってしまう様子が描かれている。診断がついたからと言って、良い主治医に出会えたからと言って、パートナーが理解してくれたからといって母子ともに大丈夫!と言える環境、心理的状態になるのには時間がかかることが伝わってきた。

今自分で自分の発達障害を疑い、精神科に受診して薬を飲んだり対策をしても、ミスは無くならないし親からの理解はあまり得られない。発達障害だとわかってもそこで自己受容できるわけではなく、そこから普通に対する憧れと自分への無力感が増していく様が、娘の他の子を比べて悩む夕子の葛藤と重なり、とても共感して読んでいた。
夕子の「何で普通にできないの?」という心の叫びは夕子が幼少期に母親からかけられた言葉が影響しているはず。その子らしさを受け入れよう、多様性を受け入れよう、とスローガンのように社会には浸透してきているが実際は「普通にできないあの人はおかしいんじゃないか?」「人に迷惑をかけてはいけない」と周りからの目の厳しさや、周りに求める「普通」のレベルはあまり変わっていないように見える。七緒と夕子がお互いちょうどいい距離感をもってお互い穏やかにすごせるような世界になっていってほしいと切に願う。

【参考文献について】
参考文献にある『メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服』を途中まで読んでいたので、その本でも取り上げられていた自他境界の曖昧さが生むメンタライゼーション不足を彷彿とさせるシーンが多くて興味深かった。
例えば、夕子が理想の母親をやれないことに心を痛めて心配して声をかけた夫に対して「「本当は一日中部屋から出もしないで何してるんだって思ってるんでしょう? 母親のくせに、教師だったくせにこんな小さな子を躾けることもできないで、これからどうするつもりだって言いたいんでしょう? 誠司は…」という場面。
このシーンで夕子は緊迫した状況の中で自分の心の中で起きていることを見渡す力が落ちて、心的現実が外的現実そのものと認識する「心的等価モード」に入ってしまっていると解釈できる。

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2024年03月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

発達障害を持った母親の苦労、葛藤がよく描かれた作品だったと思います。子どもである七緒から見たら良い親ではないかもしれないけど、懸命に頑張っている姿には涙するものがありました。
彼女が周囲に馴染もうとする生き方をしてきてしまったばかりに、子どもにも同じ生き方を強いてしまう。一見すると、それはとても残酷なのですが、そのようなことが今までの日本では当たり前のように繰り返されてきた。同調圧力に悩まされる人の声は無視されてきた。そのことが可視化されたような物語でした。
だからこそ、これから夕子は七緒を「皆」ではなく「一人」の人間として尊重してあげられるようになってほしいし、夕子自身も自分を尊重できるようになってほしいですね。自分にどれだけ向き合ったかで、子どもへの向き合い方が決まる。そんな風にも思わせてくれる作品でした。
また、子どもや周囲の大人の描写がとてもリアルで、実際にこういう人たちと話したことがあるんじゃないかと錯覚させられてしまうほど丁寧に描かれていたと思います。学びや気付きを与えてくれる物語をありがとうございました。

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2023年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

発達障害である子どもはもちろんだが、その親の苦しみや辛さがすごく伝わった。
保育所の担任や、千秋にかなりイライラした。
夕子に同情もしたが、そこまで苦しむのかと驚いた。
この本を読んで、発達障害の親の支援も必要であると感じた。
普通とは何か、みんな同じが良いのかと考えた。欠けているところを補っていくよりも、得意な部分を伸ばしてあげる方が良いのではないかと感じた。
毒親の子どもの苦しさも描写されていて、アダルトチルドレンや機能不全家族であるなと感じた。毒親に育てられた子どもは大人になっても苦しみ、自分で気づかない限り親に支配されたままであると考えた。

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2022年11月21日

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