あらすじ
オーストリア・シュタイアーマルク州北部に、ヘリアナウという全寮制の学校がある。インディゴ症候群を患う子供たちのための学園だ。この子供たちに接近するものはみな、吐き気、めまい、ひどい頭痛に襲われることになる。新米の数学教師クレメンス・ゼッツはこの学園で教鞭をとるうちに、奇妙な事象に気づく。独特の仮装をした子供たちが次々と、車でどこかに連れ去られていくのだ。ゼッツはこの謎を探りはじめるが、進展のないまますぐに解雇されてしまう。その15年後、新聞はセンセーショナルな刑事裁判を報じる。動物虐待者を残虐な方法で殺害した容疑で逮捕されていた元数学教師が、釈放されたというのだ。その新聞記事を目にした画家のロベルト・テッツェルはかつての教え子として、ゼッツが手を染めたかもしれない犯罪の真相を追いかけていく──軽快な語り口と不気味さが全篇を覆い、独特な仕掛けがさまざまな読みを可能にする。既存の小説の枠組みを破壊して新しい文学の創造を目指した、神童クレメンス・J・ゼッツの野心溢れる傑作長篇。
◆円城塔氏
ナイフのような思考回路に指を滑らせていく
これは人が読んでよい類いの書物であるのか
◆山本貴光氏
私はなにを読んでいるのか?
デジタルゲームで遊ぶときのように、
つぎつぎと現れる多様な断片の組み合わせから、名状しがたい意識が創発する
これは、近づく者を狂わせる複合現実小説(Mixed Reality Fiction)だ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
普段私が本を読む時にどれだけストーリーを重要視しているのか、文章の分かりやすさに頼っているのかを痛感した。
とても自由な小説で、久しぶりに読む力を鍛えることができた気がする。
1ミリも理解できなかった。
でもそれで良いんだと思う。
文字通り一生に一度の読書体験。
本来なら沢山調べながら自分なりの結末の解釈をすれば良いのだろうが、なにしろ読んでて楽しいものではないので読む作業をすることしかできなかった。
あまりの疲労感に眩暈がした。
500ページ超えの小説を2週間かかけずに読めたことが私にとって何よりの収穫だったかな。
Posted by ブクログ
自分にとっては「狂ってる」というのは褒め言葉であります。理由は、平凡で顔色伺ってマウントしかすることない凡人よりも、確実に生きることに対して誠実であるし、人生を楽しんでいるだろうし、確実に自分の世界を持っていることです。オーストリアという国は真面目に狂っているという印象なんですが、この作品では作者が実名で主要人物の一人として登場してきます。内容はインディゴ病と名付けられた病気が、周囲の人の体調を狂わせていく話で、もっとその謎について追求するのかと思ったらそうでもなくて。この病気はほんとにあるの?