あらすじ
フランソワ・オゾン監督「Summer of 85」原作!
'21年8月公開
はじめての「心の友」を失い
傷つき混乱する16歳の少年の心理を
深く描いた話題作。
16歳の少年ハルは、
「死んだ友人の墓を損壊した」という罪で
逮捕された。
だが「なぜそんなことを」という問いに、
ハルは答えようとしない。
深夜、18歳で死んだ友人バリーの墓で、
ハルは何をしようとしていたのか。
バリーはなぜ死んだのか…
ハルが唯一信頼する教師オズボーンの勧めで
書き始めた手記から、次第に、
ハルとバリーの絆と破局、
ふたりが交わした誓いが明らかになる…。
最も残酷な形で恋を失った少年の混乱と再生を描く、心に響く青春小説。
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魔法の豆缶を持った男の子を失った、混乱。
カーリが指摘した、真実。
ハルは、魔法の豆缶を持った男の子を愛するのではなく、バリー自身を愛さなければならなかったのだ。
ハルが、ハルとして、ハル自身の足で、この先も生きていくために。
だからハルは、バリーの墓の上で踊るのだ。
誓いのために。バリーのために。バリーと向き合うために。
ハルの混乱、悲しみ、絶望、そして変化、脱皮。
それらが心に流れ込んできて、苦しくなる。
生きることは、苦しい。
苦しいのに、人生は続いていくのだ。
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10代の頃から久しぶりに再読。表紙が派手になっていて驚く。
主人公の一人称で、学生らしいけれん味溢れる文体なのだけど、比喩やエピソードが絶妙の位置に配置されていて、丁寧に描かれているのが窺える。
当時は切ない恋愛描写に目が行っていたけど、今読むと本当の主題は恋愛ではなく、自分と対話する、人と向き合うという事なんだと分かる。
"言語というのはなんてすごいんだろう! たったひとことにこれだけの意味がある。それでも何も伝わらない。”
”「そう、誰かいたのは確かよ。でもあなたが思ってた人とは違った。わたしが思ってた人とも違ったかもしれない」”
素晴らしい青春小説なんだけど、かなり明け透けな話もしているので青少年に勧めづらいかもしれない。でも読んで欲しい。
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映画を観る前に途中まで読んで放置していたのだが、
文庫化されたことがなんだか嬉しくて
読み直す。
当たり前だろうけど…
映画よりずっといい。
ハルのバックグラウンドがよく分かるからかな。
ヴォネガットが好きで、
トールキンとその友だちの(ww)ルイスを馬鹿にしている。
〈死〉に興味がある、取り憑かれている16歳の男の子ハル。墓荒らしの容疑で少年裁判所に起訴される。
ハルが自ら再生?するために書きたおす、彼の手記の物語。それを書かせた、彼の文才に興味を持っていた教師のオジーが素晴らしい。(大丈夫、トールキンのすばらしさは、オジーがちゃんと訂正してます。「だがトールキンについてはまちがってるぞ。時とともに知恵がましたらわかるだろうが」と言った。がくっ。)
それから、魅力的な18歳の男の子、ハルが子どもの頃から欲しがっていた、魔法の豆缶をもった少年、バリー。
バリーに私もすっかり魅了されてしまった。
スピードに惹かれることを、丁寧にハルに話して聞かせるシーンが好き。
愛おしくて儚くて、この子が消えてしまうのは目に見える。その刹那的な怖さに依存してしまうハルの気持ちはわかる。
ハルのゆめの欠片を、自分のことのように読んでしまう危険なほど好きな本だった。
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出来事や感情を小説のように書き出す事で、友人でありボーイフレンドの死を乗り越えようとする少年に、何度もうるうる…。
また、情景描写がとても丁寧でした。知らない異国の地の物語ですが、あたかも自分も海辺の街で生まれ育ってきたかの様な気分にになれました。
解説もとても良かったです。
これは、映画も見てみたいです!独特なハルの雰囲気をどう映画に落とし込んでいるのか、とても気になります。
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「ハル、死についてどうすればいいかわかるか?笑い飛ばすんだ」
神聖なるBLの愉楽。
そして嫉妬と永遠の別れ。
殻に閉じこもり、
思い出を綴りながら、青春を葬る日々...
《笑い飛ばす》その問いは
彼の墓標を破壊することで答えを完結させた。
Posted by ブクログ
不思議な感覚。
主人公2人は勿論だけどカーリの存在が大きい。
言葉を紡ぐ事でハルが再生されていく瞬間は本当に美しい。
自分には到底真似できない感性なんだろうけど、だからこそ小説って面白い。
Posted by ブクログ
映画を先に観て小説を読んだ。
監督が映画化したいと言っていただけあって,
原作にかなり忠実だと感じた。
舞台がイギリスからフランスに変わったり,
お店がレコード屋から船のショップに代わってたりしたけど,
そこは全く違和感がないように,丁寧に変更されたんだと思う(たぶん)
読めば読むほどハルの失望感や動揺やパニックなど深く感じた。そんな風に勢いよく頭に心に入ってくる訳も素晴らしかった。
最後カーリがまさに真理とも言えることを勇気を出して友人であるハルに伝えていて,自分もそれでストンと納得できた。
ダンスのシーンは映画で観て感じて,小説でその心理を深く感じるのがオススメ。
Posted by ブクログ
まさにYA小説と言った感じ
高校生のハルがバリーとの出会いと別れを通して生き方を見つけるストーリーは多くのティーンネイジャー達を勇気づけてきたのだろうなと思う
Summer of 85 はこの小説をかなり丁寧に実写してあったけど、やっぱり小説の方がハル(映画ではアレックス)の感情が分かりやすくて良かったな。
映画での「ダビドは存在しなかった」この言葉の意味が引っかかってたのだけど、小説でじっくり読んで、「バリーは存在しなかった」の意味が分かった
Posted by ブクログ
私はどこまでも私であり、どんなに分かりあえる友人でも恋人でも家族でも溶け合ってまで支配も共有もできない。例えばどんなに愛を誓いあい分け合っても、親友の誓いをしても自分は永遠に一人であるという厳しさを教えてくれる一冊。
映画化された「Summer of 85」も、思春期の男の子の複雑で不安定な心情が美しく詩的に描かれていて良い!