あらすじ
孤児院で育った少女ベス。用務員にチェスを習い天賦の才を開花させた彼女は、やがてウィートリー夫人に引き取られ、各地の大会で強豪プレイヤーを相手に次々優勝、男性優位のチェス界で頭角を現す。孤児院で与えられた安定剤と、アルコールへの依存とも闘いながら、ベスはついにソ連の大会で最強の敵ボルゴフに挑む――。世界的な大ヒットドラマの原作となった、天才少女の孤高の挑戦を描く長編。
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Posted by ブクログ
2021年に発売された本書であるが、年をまたいで読み始めることに。あっという間に読み終えてしまった。読み始めから「面白い作品に出合えたかも…」という期待を持たせたが、その予感は的中した。私個人としてはかなりハマって読めた。主人公のベスが非常に魅力的に映る(表紙のドラマ版の役者さんの印象もあるかもしれないが)。
単にチェスで無双しまくるかと思いきや、年齢が上がってくるにつけ、神童も人間関係やお酒におぼれて挫折を味わったりするさまを淡々とテンポよく描いていく。「淡々と」と書くとどうしても「あっさり」として物語に浸れないのかというとそうではなく、どうしてそうなるのかベスの心のうちがしっかりと描いているし、なんなら言葉以上に心のうちのベスは多弁なのである。それがまた主人公を魅力的に見せるゆえんである。
また、要所要所で出てくるベスを取り巻く友人やチェス仲間たちも単なるその場しのぎのキャラではなく、「ラスト」へ向かうための重要な役割を果たす。使い捨てのキャラクターが実は一人もおらず、「ベス」という人間を構成する重要なポジションにあるため、終盤はアツい!
きっと単に一人で無双するシーンの連発ではこうも物語には浸れなかったであろう。著者の構成力には恐れ入る。
本書は原版はかなり前に出されたのだが、チェスという「盤面」を創造させるためにかなり工夫が必要であったらしく、長らく邦訳されていなかったらしい。訳者の方もなんとか少しでも本書の世界観に浸れるように駒の動きなどを序盤に説明していたりと頑張っている。勿論、その努力は功を奏したと思うし、このように長らく未邦訳ながら「埋もれている」面白い本に出会えたという貴重な体験をさせていただいたことに感謝したい。
Posted by ブクログ
孤児院でチェスを身につけ、チェスで台頭していくところが印象的。彼女は清廉ではない。能力と勉強熱心な姿勢のみで突き進む姿がたくましい。さまざまなこともただ体験する、というだけのクールさ、アルコールや薬物に頼る姿にもリアルさがある。ラストの戦いの前、孤独に押しつぶされそうになったところで救いの手が差し伸べられる、しかし自分だけの力で勝ち切るのは見事だった。表紙にもなっているアニャテイラージョイの強い眼差しはベスそのものだと思った。
Posted by ブクログ
誰かも書かれていましたが、
私もNetflixドラマで観覧してから原作を読みました。
映像を観た後だったので、原作が読みづらかったという事は無かったです。
ただ、映像を見た直後は史実だとばかり思っていたので、原作も読んでみたくなったのですが、
実はフィクションだった知りビックリしてしまいました。
それだけ、話が上手く進んでいたし纏まっていたように思います。
孤児院で孤独と疎外感に蝕まれながらチェスを習う→勝利すると周りから注目される→脚光と孤独と勝負に塗れながら酒に溺れる→本当の人間の温かみを知る。
孤児という不安定な心や、その不穏な空間、
チェスでは、感情を表に出すと負けてしまうんじゃないか?!という緊張感。
最後の最後まで何かを押し殺していたベスが、
エンディングで、まるで感情の波が襲ってくるようなhumanism的要素が押し寄せてくる小説で、構成が素晴らしかったと思います。
映像ではアニャ・テイラー=ジョイが可愛くて(本当に子供のようでした)
原作を読みたくなる切っ掛けでした。
チェスの事は私も解らない事が多かったけれど、
ベスと同調したように手に汗握る部分もありました。
ただ、実話としては『完全なるチェックメイト』という映画がチェス物語として多く知られているようです。
クイーンズ・ギャンビットも少なくとも、この作品を参考にしている部分もあったのかな?と思います。