あらすじ
生き地獄だったはずの強制収容所は、最良の教室だった。
それを開ける鍵は自分のポケットに入っている。
鉄格子がどれほど頑丈であっても、
人はそこから抜け出すことができる。
―人生のすべてが贈り物―
何事もなく順調な人生などない。愛してくれるはずの親からの虐待やネグレクト、パートナーのDV、思いがけない事故や病気、大切な家族の死……。トラブルを避けることはできないが、そのトラブルに対してどう対応するか、どんな態度をとるかは、自分自身で選択できる。選択することをやめ、誰かを恨んで不幸を嘆いているだけだと、人は心に監獄をつくり、永遠に自分で自分を閉じ込めてしまうことになる。
本書では、こうした傷ついた人がつくりやすい心の監獄について、実話をもとに紹介し、その脱出法を解説する。
1,被害者意識の監獄
2,感情を避ける監獄
3,セルフネグレクトの監獄
4,秘密の監獄
5,罪悪感と恥の監獄
6,古い悲しみの監獄
7,正しさの監獄
8,恨みの監獄
9,不安と疑いの監獄
10,批判の監獄
11,絶望の監獄
12,許さない監獄
本書は10代でアウシュヴィッツに強制収容されて両親を失うという「選択の余地ゼロ」の過酷な体験をしたイーガー博士が、その後の人生のあらゆる局面で、「受け身の被害者」ではなく「自由な人間」としてさまざまな選択をし、自分自身を取り戻した経験をもとに生まれた。喪失、苦痛、飢え、死の脅威の中でも生きのび、自分自身でいられることを学んだ収容所での経験は、あらゆるトラウマに悩む相談者へのアドバイスとして現在も生かされている。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
感情とは、扁桃体に象徴されるように理性ではコントロールできない獣を飼っているようなものだという表現を思い出す。後悔も恐怖心も嫌悪感も、考えたくもない出来事が何度も頭に浮かんで、その度にネガティブな感情に支配される。自分の身体なのに、自分で統制出来ないものだ。それでも何とか、クヨクヨしても仕方ないとか、悪く考えないようにしようと、後天的な理性で、それを飼いならそうとする。いずれ、獣は時間と共に消えていく。
では、心の監獄とは何か。著者はアウシュビッツに強制収容され、その過程で両親も殺されている。本では自らの体験を語るよりも、著者に対する相談に答える形で展開される。監獄とは、トラウマでもあるが、自己防衛のために形成した内なる聖域とも言えるのかも知れない。そして、その中において自らを保護したのは良いが、そこに囚われてしまう。恐怖の内側の自由にいながら、恐怖の境目には触れられない。それを乗り越えるのは「許す」こと。勘違いしてはいけない、他者ではなく、自分を許す事が重要だというのだ。
許すとは何なのか。ここからは私感だが、自分に課した約束事や思い込みを解き放ったり、もう少し力があれば事態は避けられたのではとか、因果を自らの責として考える事から解き放つ事ではないだろうか。背負っている荷物を下ろす事ができれば。