【感想・ネタバレ】クルーシャル・アカウンタビリティ 期待を裏切る人、約束を守らない人と向き合い、課題を解決する対話術のレビュー

あらすじ

組織や家族が抱える問題の背後には、約束を破ったり、対処を嫌がったり能力が足りないメンバーの存在があります。ルールを破り、あるいは期限や約束を守らないことで、他のメンバーを傷つけるのです。そのうえグループ内で誰も発言せず、責任を負わないことで意思疎通が滞ると、最終的に個々が殻に閉じこもり、自問自答を繰り返すばかり。何の解決にもつながらないばかりか、新たな問題を生むことにもなりかねません。

米国のある研究では、メンバーが解決を目指すことなく失望感をいだき続けて孤立すると、組織なら業績を20から50%低下させ、夫婦なら離婚原因の大半になるとされています。単なる士気低下だけではなく、組織や家族そのものを崩壊させるというわけです。

本書で解説する、重大な場面での説明責任の果たし方は、問題を抱えるメンバーに安心感を与え、行動を促すノウハウであり、関係を害することなく日常的な問題を解決するツールです。

本書では「自己を改善する」「安心感を与える」「行動に移す」のIII部構成で、対話の例を数多く示しながら、具体的にどのように話を進めていくべきかを詳しく解説します。

たとえば、「第3章 ギャップを説明する」では、「約束を破る」「義務を果たさない」「不適切な行動をとる」といった“ギャップ”を、いかに本人に自覚させるか、そしていかに不安を覚えさせることなく共通の目的を持つかが語られています。実力を発揮できていないメンバーに、自ら気付き、目標を共有して変化を促すための第一歩をいかに踏ませるかが、最も重要なポイントであることが理解できるでしょう。

また、「第4章 意欲を持たせる」では、一般的に有効と考えられがちな、カリスマ性や権力、報酬に頼るのではなく、自然の成り行きに従いながら、相手の心の状況に合わせて意欲を喚起する方法が説かれています。

なかでも「第5章 容易にする」は、相手の能力や意欲を把握したうえで、その力量に応じたレベルにまでタスクを簡単にすることで、能力の壁を取り除き実行を促すノウハウが語られており、本書の最も特徴的な内容になっています。

最後に、スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』になぞらえ、ありがちな“12の言い訳”を例示し、その問題点と対策を伝授するための実践例である「第9章 12の言い訳」を読み込んでください。そのうえで、巻末の「付録」で会話スキルを自己診断すれば、あなたの対話能力を最高度に磨き上げ、チェックすることが可能に!

本書を手に取り、組織のコミュニケーション不足を根本的に解決する「クルーシャル・アカウンタビリティ」を具体的に学べるテキストとして、2013年から米国でロングセラーを続けている理由を実感してください。

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Posted by ブクログ

前作『クルーシャル・カンバセーション』に続き、人と向き合う際に誠意を持って接するための考え方などが書かれている。前作と比較して、「この人はなぜこんなことをしたと思うか」というような問題の原因を何に帰属されるかという観点が強く書かれていて、ピープルマネジメントに対して有用であると感じた。

相当に正義感が強い内容であるし、提案されているフレームワークが使いづらかったりと欠点はあるが、学びのある本ではある。


本書は3部構成になっている。

第Ⅰ部 自己を改善する
第Ⅱ部 安心感を与える
第Ⅲ部 行動に移す

第Ⅰ部では、主に他者によって発生した問題に対する原因をどのように捉えるべきかが書かれている。

> 責任ある会話の達人は、日常的にこのような「相手を人間扱いした問い」を立てて、相手の属性だけではなく状況を見て判断する。個人の性格だけではなく状況を考えた上で、次のような問いを立てることができるのだ。「この行動に影響を及ぼしている要素は他に何があるだろうか。何がこの行動につながったのか。本来は理性的なのに、非理性的で無責任な行動をとっているように見えるとしたら、自分は何か見落としているのではないか」(p.79 解決策 違うストーリーを組み立てる)

もちろん、実際には理性的でない振る舞いや悪意を考慮しないといけないだろうが、多くの場面で自分の認識を見直すきっかけになるような言葉ではある。

第Ⅱ部では、お世辞や相手を操作するような話し方などすべきでないコミュニケーション、相手と問題のストーリーを共有するための方法が書かれている。

> 事実を言うのではなく、曖昧で感情をあおるようなストーリーを語ったら、相手は感情的になるばかりだ。どの行動があなたの感情の原因になっているのか、これでは理解できない。共有すべきなのは事実だ。憶測でものを言わず、何が起きたのか、事実を客観的に説明しよう。(p.122 ギャップの説明)

また、同期と能力が一体であることについての言及があり、たしかに見誤りやすい要素である。楽観的とも見える記述だが、実際に尻を叩くに至るのは能力の壁を取り去ることを諦めた時だろう。

> あなたが賢明で冷静な上司なら、カイルには仕事への意欲があったのに”できなかった”ことはわかるだろう。そこへいくら意欲を引き出そうとしても、なんの解決にもならない。それどころか、それは残酷な仕打ちだ。カイルにとって必要なのは、目の前にある壁を取り除いてやることであり、尻を叩くことではない。そこで考えるべきは、どうしたら能力の壁を取り除けるのか、どうしたら相手が楽に、苦痛を伴うことなく業務を遂行できるかということだ。(p.173 診断を間違えるな)

第Ⅲ部には、考え方のフレームワークや、日常生活のいくつかの例えが記載されている。第Ⅱ部の繰り返しになっている部分もあり、分かりやすい例でこれまでの確認をするための補足のようなものと捉えていいだろう。

前作と比較して、より個人に対する議論の方法に注目した内容となっている。理想論を抱きすぎるのも危険だが、一つの考え方として職種を問わず有益であると感じた。

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2023年10月23日

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