あらすじ
「ウルトラマン」の意匠世界を構築した芸術家の名著!
「シン・ウルトラマン」のデザインコンセプトの原点『真実と正義と美の化身』も掲載
成田亨(1929年生~2002年没)は
『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に
実質的な美術総監督として参加、
怪獣・メカなどのデザイン全般を手掛けた伝説の人物。
本書は1996年に発刊、近年は入手困難となっていた
成田亨の自伝『特撮と怪獣 わが造形美術』に
初版から25年の間の情報を略年譜や仕事目録に追加するなど
増補改訂して復活したものです。
映画『シン・ウルトラマン』(監督:樋口真嗣、企画・脚本:庵野秀明)
に登場するウルトラマンのデザインコンセプトの原点でもある
油彩画『真実と正義と美の化身』、
そして本書のために描かれたオリジナルデザイン原画も掲載されています。
芸術家・成田亨が、怪獣デザインの発想、自身の彫刻作品、映画特撮美術など
その類稀なるアートセンスのすべてを語り尽くした名著です。
<内容>
おもな目次
ウルトラマンの顔の構造
ウルトラマンの美と強さ
『ゴジラ』の特撮現場に入る
壊れるビルの作り方
宇宙空間や雲をいかに描くか
半抽象造形に傾斜する
「強遠近法」を考案する
『ウルトラQ』の撮影現場
高山良策と金城哲夫
怪獣デザインの三原則
自信作ガラモン
怪獣のイメージと造形化作業
ウルトラマンは七頭身である
構造的怪獣レッドキング、ゴモラ
ギャンゴ、ベムラー、ガボラ
ザラブ星人、ジャミラ、ダダ
シーボーズ、ゼットン
マンからセブンヘ
竜と鬼は神の怪獣である
etc
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
公開延期とのことですが今年のお楽しみ、シン・ウルトラマンのトレーラーでのカラータイマー無しバージョンに触発され成田亨画集「ウルトラ怪獣デザイン編」を開き、そしてそこで成田のカオス=怪獣、コスモス=ウルトラマンというコンセプトに触れ、もっともっと成田亨の言葉に触れたくなって1996年出版の本書にたどり着きました。出色の面白さ。成田亨の語りで構成しているのですが芸術家らしい、そして自分でデザインしているからこその力強い言葉が次々繋がって気持ちいいです。P142『それで、「ゴジラ」ってのは全体構造がないでしょう。ただ、だらだらした体があるだけ。その点、僕の「レッドキング」ってのはいかにも構造的でしょう。」P154「現在、怪獣の発想は、東洋も西洋も神話時代で終わっている。人類はそれ以後今日まで妖怪だけを追ってきたんです。そして、怪獣映画、特にアメリカの怪獣映画はほとんど妖怪映画だった。唯一『キング・コング』があるとしても。ゴリラが巨大化しただけであり、円谷英二監督、オヤジの『ゴジラ』もただの恐竜にすぎないと思う。」ひぇー!これも今年のお楽しみ「ゴジラVSコング」も形無し!なによりも心に刺さったのは…P180「だけども僕がやった『ウルトラマン』というのは。プロヂューサーは栫井さんだと思うんだけど、僕にとって定かじゃない。脚本もない。まったく。ぺらぺらの企画書があるだけでね。監督の決定なんてのはずっと先の話だから、誰もいない。美術の作業が先行して、金城哲夫さんと相談して話を決めていくわけです。そして、出来上がったフィルムは。主演、誰ですか?主演・黒部進ですか。違うでしょう。主演・ウルトラマンでしょう。というとこは『ウルトラマン』は美術が主体の作品なんです。僕がデザインしたのは、主役のウルトラマン、敵役の怪獣。そしてその主役と敵役の間をつなぐ、役者がいます。黒部進とか小林昭二、それの服装から何から、飛行機も全部デザインしました。車もデザインしました。だから、かつての映画作りとは全然違うんです。要するに、美術が全部なんです。」そうかもしれない。ウルトラマンやセブンで特撮に心ときめかせた世代としては自分のネバーランドは成田亨の頭の中なのかもしれない…と思いました。もしかしたらきっと同じ原体験を持つ庵野秀明監督のシン・ウルトラマンって、円谷ウルトラマンから成田ウルトラマンへの脱却を図る映画なのかもしれない…と妄想しました。NHKのプロフェッショナルで彼が語っていた父親の足の欠落への複雑な思いと成田亨が幼少期の事故で抱えていたカッタイという左手への意識も、もしかしたらシンクロしているのかも。「シン・ウルトラマン」も「ゴジラVSコング」もメチャ楽しみです。あと成田亨の仮面ライダーの初期の怪人デザインへの一定の評価も新鮮。「シン・仮面ライダー」の原点もそこにあるのかも、と思ったりして。
Posted by ブクログ
自分の作り出した作品に対しての、芸術家としてのこだわりを強く感じる1冊だった。
不満や悔しさなどが率直に伝わってくる一方で、怪獣デザインの三原則など作品を受取る子どものことを第一に考えた愛情溢れる方でもありとても興味深かった。
細かい所だと、弥勒菩薩のアルカイックスマイルの話や影響を受けたり受けなかったりした彫刻家の話などがおもしろく、さらに色んな作品をみてみたくなったし、何より語り口がざっくばらんでとても面白かった