あらすじ
この本は企業に関するデータを用いて分析を行い、その結果を論文にまとめるために必要なことを説明しています。この本を読むことで、企業にかかわる実証論文を作成する能力を身につけることができます。この本は、いままでのデータ分析の本といくつかの点で明確に異なっています。
◆この本の特徴1--研究プロセス全体を学ぶ
この本の特徴の1つ目は、統計学だけではなく、テーマの決め方や論文の書き方などの研究プロセス全体について説明していることです。統計学の知識だけではなく研究プロジェクトを実行し、論文を書くための知識を身につけるという観点から執筆しています。
◆この本の特徴2--実証分析の結果を例として用いている
もう1つの特徴は、例として企業データを用いた実証論文を多数紹介していることです。この本では、できるだけ企業に関係する例を用いています。さらにこの本では、それぞれの章で学ぶ手法が実際の学術論文でどのように使用されているかの例が多数示されています。
◆この本の特徴3--XがYに影響を与えているということをどのように示すのか
この本では企業データを集めて「変数Xが変数Yにどのような影響を与えているか」というテーマに関して統計的な分析を行う論文を書くことを説明しています。
◆この本の特徴4--東洋経済新報社の財務データを用いた実例
練習問題には、付属のウエブサイトからダウンロードする東洋経済新報社の財務データを用いる問いがいくつかあります。実際の財務データを用いて分析できることが、この本のもう1つの特色です。東洋経済新報社の協力のもと、2000年から2009年の10年分の日本の時価総額上位200社の財務データを利用しています。企業データ分析を学ぶ教材としてはたいへん画期的です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
個人的にはすごく好きな本。
ただ、好みは分かれると思う。
何故なら、統計学を説明する故、ある程度「数式」を見慣れていないと読むのが多分辛いから。
証券アナリストジャーナルに掲載されるような論文をそれなりに理解して読みたい人にはまずこの本をお勧めする。
ぼんやりとしか理解していなかったことがこの本でクリアになったことがあったし、セルフで勉強するネタもそれなりに用意されている。
Posted by ブクログ
大学院の春学期の授業で「経営学研究方法特論」という科目を受講していた。その科目で用いていたテキスト。
「経営学研究方法特論」とは、文字通り読めば、経営学の分野での研究方法についてを教える科目であるが、実際に研究したものは論文にするわけなので、広い意味で「論文の書き方」を学ぶ科目であった。学術論文は、最初に論題に関連する先行研究を紹介、仮説を述べる。自分が検討しようとしている仮説は、これまでの先行研究の中でどのように位置づけられるのか、そして、何が新しいのか(すなわち、自分の世の中に対する貢献は何なのか)を宣言し、その仮説を検証していく。検証は、定量的に行う場合と、定性的(ケーススタディ・事例研究)があり、その結果を分析し、最初の仮説が正しかったのか等の検証結果と考察を述べていくというのが、一般的な形態である。
本書は、「定量的な」検証を行うために必要な、基本的な統計学・データ分析の方法を教えるものである。
私自身の修士論文は、事例研究による定性的なものを予定しているが、経営学の論文には定量的な論文も多く、それを読み解いたり、あるいは、あわよくば将来的に定量的分析を伴う論文を書くチャンスがあった時のために、この授業を選択したものである。
経営学の定量研究とは、例えば、「株主優待を増額すると、個人株主比率が増大する」というような関係が成立しているかどうかをデータを用いて検証する。この場合で言えば、例えば、東証プライム市場全企業について、過去〇年間の株主優待の増額比率と、個人株主の増加比率を見てみる、等が考えられる。関係をデータで分析する方法の一つが回帰分析であるが、実際に回帰分析を行ってみて、その結果が統計的に意味があるのかどうかを検証し、統計的に意味があるとすれば、それは仮説が検証できたとするのである。
考え方はシンプルであるし、実際の計算はエクセルがやってくれるのであるが、実際に論文の中で自由自在に活用するには、相当に経験を積まないといけないな、と感じた。