あらすじ
キリスト教史の最も重要な1章
イエスの受肉からコンスタンティヌスによる「公認」までを描き、その後の西欧精神史に決定的影響を与えた最初のキリスト教会史!
イエスの出現から「殉教の時代」を経てコンスタンティヌス帝のミラノ勅令による「公認」まで、キリスト教最初期300年の歴史。以後記される教会史の雛形となって著者エウセビオスを「教会史の父」と呼ばしめ、アウグスティヌスの著作とともに現代に至るキリスト教世界の価値観の原点ともなった『教会史』全10巻を全訳、詳細な註と解説を付す。
エウセビオスの『教会史』は、イエスの出現からはじまってキリスト教が帝国の「公認宗教」と認知されるまでの、教会形成と発展の過程における歴史を語ったものである。その歴史とは、キリストについて「証しする」ことがキリストのために「殉教する」ことと同義語であった時代の歴史であり、キリスト教側の弁証家や護教家が、ユダヤ教や諸宗教にたいして、自己が奉ずる宗教の「存在理由」を明確かつ強力に主張するために、それを「定義した」時代の歴史でもある。――<「訳者はしがき」より>
※本書の原本は1986~1988年、山本書店から刊行されました。
感情タグBEST3
興味しんしん
もっとも初期のキリスト信者たちの様子がわかって、とても興味深かったです。勇敢な殉教者と、崩れ落ちるユダヤのエルサレムの対比。
敵のために祈る殉教者と、数々の異常な予兆があっても全く気が付かず悲惨に死んでいった回心しないユダヤ人。
エルサレム滅亡で死んだキリスト信者は1人もいなかったとか… その後の経過を知ることができる貴重な一冊です。
Posted by ブクログ
最初のキリスト教史とされるエウセビオスの「教会史」。巻末で翻訳者が愚痴っている通り正確な文章という感じではないけど、読みやすさについてはそこまで感じなかったので秦氏さすがだなあと思った。4世紀当時のキリスト教徒たちの認識ってこんな感じだったんだと思うと興味深い。ユダヤ人たちがイエス殺しとキリスト教徒迫害の「報い」を受ける様子、信徒たちが受けた拷問の様子なども誇らしく生々しく、たくさん引用して報告している。ローマ皇帝からの寛容令を勝ち取った当時、長い苦難を乗り越えて輝かしい未来が開けていく実感があったんだろうなあ。
訳者はエウセビオスについてキリスト教の反ユダヤ人感情をあおり歴史へ乗せた戦犯の一人だというようなことを書いている。その後の世界の歴史から見たら責めたくなるのだろうけど、当時のキリスト教徒たちがあれだけ苛烈な告発と拷問、虐殺にかかわり続けたユダヤ人たちを憎まないでいられるはずもないし、この時点ではそれもやむなしじゃんと思ってしまった。逆に敬虔なユダヤ人からしたら、キリスト教徒は殺したくなるほど憎い組織破壊者、異端者なのも分かるけどもね。