あらすじ
2013年、江ノ島に邪神が上陸した。鎌倉周辺は狂気に沈み、“異界”と呼ばれる特異地域と化している。誰もが狂気に陥るなか、専門の心理士だけが正気を保とうとする人々の救いだった。女性心理士・間宮純(まみやじゅん)は危険な仕事をしている自覚がありながらも、怪異に魅せられつつある自分を否定出来ないでいた。純はとある事件をきっかけに無免許にして最高の心理士、島野偃月(しまのえんげつ)と出会う。異界に住み、怪異と対峙し続ける男に純が惹かれていくのは必然であった。邪神と狂気に陥る人々が織りなす本格怪異譚。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
邪神が江ノ島に上陸して数年。鎌倉周辺は異界と呼ばれる特異地域と化す。誰もが狂気に陥るなか、心理士として働く間宮純はある事件をきっかけに無免許の心理士偃月と出会う。偃月は異界の怪異に対し、異能で相対するのだった。
これまたHJ文庫レビュアープログラムで出会った作品です。邪神ということでもしかしてと思ったら、やはりクトゥルフ神話が土台にありました。
実はクトゥルフ神話は詳しくないというか、クトゥルフをモチーフや、題材にした作品を何作か読んでいるだけなのです。だから妖怪が出てくる物語と同じ感覚で読んでいたりします。
謂わば「そういうもの」として受け入れるという感覚でしょうか。バックボーンや由来などはわからないけれど、そこにそうしているもの。それこそまさに「怪異」ということになるのじゃないでしょうか。
知識のバックボーンがあればより一層楽しめるのでしょうが、それがなくとも面白い。淡々とした文章なので、却って想像力が喚起されることもあり、怪異と向き合って楽しむことができます。
短編4話収録。純が仕事して出会う怪異を、偃月の力を得て解決する。解決と言っていいのか迷うものもありますが、それこそ怪異譚なるものでしょう。このパターンの繰り返しかと思いきや、4話目にして偃月自身が物語を動かすことになります。
そんなアクセントで物語を閉じているため、却って続きが楽しみになるのですね。