【感想・ネタバレ】リングサイドのレビュー

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Posted by ブクログ

台湾の林育徳さんの10篇の連作短編で、ひとつひとつが絶妙につながり合い、おもしろくてぐいぐいと引き込まれ読むのがやめられないほどでした。

実は、プロレスって見てるだけで痛そうであんまり好きではなかったので、プロレスをテーマにしてる小説を楽しめるのかなとちょっと不安だったのですが、もう一瞬でそんな不安が吹き飛び、読みながら出てくるプロレスラー調べちゃうくらい楽しめました。
本の帯に西加奈子さんのコメントで「この小説はプロレスについて書いている。それはつまり、人生について書いているということだ。」とあるように、ひとりひとりのプロレスを通した人生が私の心に深く響いてきました。

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2024年03月07日

Posted by ブクログ

メジャーマット出身で独立してフリーになって、でも自分の道場を首都圏郊外に作って若手を育成しているレスラーの自主興行道場マッチを覗いたことがあります。プレハブの道場なので基本的に観客席は狭いのですが1列目で地元のおばあちゃんがおでこに熱さまシートを貼って興奮しまくっていた姿に、ドームや武道館で感じるのと違うプロレス愛に出会った気がしました。最初は笑ってしまい、でもしみじみ感動したことを思い出しました。彼女はカラスのように叫びまくっていましたが、本書の「ばあちゃんのエメラルド」のように「きばるんだよ、ミサワ、早くおまえの緑の宝石を出しな!」って言っていたのかもしれませんね。三沢の「エメラルド・フロウジョン」が台湾で「緑寳石瀑怒濤」として愛されているというモチーフ自体が涙、涙です。日本と台湾、首都と地方都市、開発と空き地、WWEと日本のプロレス、プロとアマチュアプロレス、本土人と原住民、生と死、いろんなものの狭間にプロレスは似合います。そして人生の狭間はまさに文学の住んでいる場所だと思います。プロレスと文学がここまで寄り添った作品は初めてですし、それを世界文学として受け取った衝撃は大きいです。日本語版の著者まえがきから引用します。『プロレスに感謝している。プロレスは「流血の魔術 最強の演技」であるだけでない。僕にとって、それは「涙の芸術 最強の人生技」なのだ。』ありがとう!林育徳!

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2021年06月05日

Posted by ブクログ

素晴らしい試合を見せてくれている選手たちの負ってるリスクにハッとさせられたし、台湾に行きたくなりました。

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2021年05月05日

Posted by ブクログ

たまたま私が学生プロレス出身で数割り増しで感じるものがあったとしても、
純粋に文学として優れた作品であると感じた。

プロレス独特の美学、
アメリカンプロレスとの対比、
プロレスの真実と嘘とは。

プロレスファンなら一晩酒を飲みながら語れる王道のテーマだけど、ファン問わず著者のプロレス愛にのっかって、自分に重ねながら読めると思う。

自分自身、昭和の香りが残るお茶の間で熱狂してみていたあの頃のプロレスが大好きなのだが、
同じような人たちがこの本の中にはいる。

昨年『自転車泥棒』呉明益さんが私の遅ればせながらの台湾文学デビューなんだけど、
歴史、政治、日本との距離感、などなど…
台湾文学、面白い!

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2021年04月16日

Posted by ブクログ

プロレスをテーマにした台湾の小説。ただし主人公はプロレスラーではなく、人生が何か上手くいっていない人々がプロレスをきっかけに少しだけ前に進む連作短編集。なのでプロレスに明るくない人にも通じる普遍的な物語であるし、三沢光晴を筆頭に日本のプロレスの話も多数出てくるため「プロレスは好きだけど台湾プロレスには馴染みが無いよ」という人も楽しめると思う。個人的には『ばあちゃんのエメラルド』が出色。

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2021年03月07日

Posted by ブクログ

台湾を舞台としたプロレスがテーマの短編小説集。
「人」と「プロレス」との関わり方、出会い方は十人十色。落ち込んだ家出の夜を慰めるものであったり、年の離れた友人や親族との心を繋ぐものであったり、弔いの気持ちでみるものであったり、罪のない人の命を奪いかねないものでもあったり、身にまとうアイデンティティであったり…。
それぞれの物語がゆるやかに繋がっていく構成もとても素晴らしいし、最後の「青い夜行列車」での収束のさせかたは、一連の物語を連続して読めたことへの満足度を高めてくれた。

プロレスを語る人は往々にしてちょっとアツすぎる。だけれども、この本はそんな私にとってとても親切で、ゆるやかに台湾プロレスの世界に誘ってくれた。著者の前書きにあった目論見の通り。
図らずも、台湾という地域についてもいろんなことを知ることができて本当に面白かった。私とほぼ同世代の著者がみてきた台湾のリアルなのだろう。学生を取り巻く状況なんかはとても興味深い。

個人的に気に入ったのは、「ばあちゃんのエメラルド」、「紅蓮旅社」、「パジロ」。1つめは日本人なら言わずもがなな感じで、2つめは女性視点あるあるだからだろうか。パジロは、出生とアイデンティティというテーマが個人的に刺さることが多いためだ。

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何よりも、訳がとってもよかった。読みやすかったし、親しみやすい文章だった。三浦裕子さん、今後も林育徳さんの本がでたら、そして、台湾のおすすめの小説家がいたら、たくさん読ませてください。

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2021年04月04日

Posted by ブクログ

幼少期にプロレスの影響を受けて育った若者たちは
自分もプロレスラーになりたいと思う
リングの上に理想の大人像を見出してしまうのだ
しかしそれはあくまで理想
子供の夢である
台湾の地方都市開発によって思い出が壊されることに反発し
それでなぜかプロレスのパフォーマンスをやろうとして
死者を出してしまったグループの話を皮切りに
この作品集では
台湾の人々が、いかにプロレスと関わっているかという話が展開される
そもそもが非合法テレビ放送によって認知されたジャンルらしく
台湾のプロレスは、基本的に大手スポンサーのつかない
ローカルなレベルにとどまるもののようだ
しかしそれ故に純粋というか
すれっからしの日本プロレスが捨ててしまった理想も
まだ生きているように思われる
リングの上にアイデンティティを求める彼らは
「カネの雨」などという世知辛いことは言わないのであった

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2021年12月14日

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