優しさがしみる百合マンガ、いかがですか?
私が人生で初めて手に取った百合マンガです。
書影に惚れ惚れしてめくり始めた本作は、
女子が女子と出会う5つの物語を集めた短編集です。
どのお話も、素朴で生命力あふれるキャラクターが魅力的です。
表情やセリフに思わず口角が緩んでしまうくらい、誰もが人たらしで憎めません。
中でも、私のお気に入りは「さらば人間」。
舞台は、吸血鬼と人間が共存してはいるものの、いまだ吸血鬼差別が残る世界です。
最近彼氏に振られたばかりでツイてない主人公・キツネは、バイト先でじゃんけんに負け、寝こけている吸血鬼に閉店の声掛けをすることに。
恐る恐る声を掛けたはいいけど、全然起きない吸血鬼。
起きてもらわないと困るキツネが吸血鬼をつついてみたら、なんと指を噛まれてしまった!?
どうしよう、これじゃあ吸血鬼になっちゃう!
思い悩むキツネが目にしたのは、夜空を舞う「幸せのハンカチ」で……。
いつ人間でなくなってしまうのかと焦るキツネが、能天気な吸血鬼のペースにだんだん巻き込まれていく様子には、思わずくすっと笑ってしまいました。
そして、吸血鬼が語るハンカチの秘密を知ったとき、この愛おしい世界に泣きたくなりました。
なんだか、ちょっと人に優しくなれそうな予感がするお話です。
どこかぬるくて寂しい夏の夜に、ぜひご覧ください。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
同人誌に掲載していた物を含めた短編集です。
まるで小説を読んでるよう。ページを捲るたびに、そのページには収まりきらない匂いや彼女達の心の声、空気をまとっているような感覚に陥ります。ばったんさんの世界観は本当に唯一無二だと思います。
Posted by ブクログ
「姉の友人」で感じた志村貴子っぽさは減り、そこがよりよく感じられた。
もちろんすぐに作家性に直結するわけではなく、題材、長さ、描写を丁寧にするか、リズムよく進めるか、など構成と関係していると思うけど。
収録作は5+1。
「アンテロースの恋人」
タバコ屋のおばあちゃん×女子大生
「みどりのなかのみずたまの」
お金持ち小学生×貧乏な転校生
「初夏の葬式」
母親を亡くした女子高生×クラスの嫌われ者
「さらば人間」
吸血鬼×ニンゲン
「人魚姫」
失恋中の女子×旅先で出会った女の子
特別描き下ろし「さらば人間・After」
で、なんと電子書籍版限定の描き下ろし「人魚姫 - 100 years ago -」があるのだとか……ううむ……。
百合というよりはシスターフッドものというジャンルなんだろう。
そのジャンルにはまだ詳しくないので、王谷晶「完璧じゃない、あたしたち」の「繊細版」と無理矢理言ってみる。
他の方のレビューに「百合ものというより、女性の私的な独白がそれぞれの女性登場人物のかたちをかりて作品内で反響しているかのようなドラマ」とあり、ほんとそうだな、と思った。
生まれも育ちも異なるのに、本来わかりあえないはずなのに、どこか似ているかも、と感じられた瞬間って、唐突に何かが共鳴し響き合った驚きのせいで、世界がこの漫画のように見えるよな……(って自分の生活では経験ないけど)。
いくつかの作品に含まれる「毒」からは久野遥子も連想した。
Posted by ブクログ
人物の喋り方とか独特の雰囲気があったけどするすると話に引き込まれて読みやすかった。私も人魚姫の話のように旅先で素敵な出来事が起こって欲しいと思った。
Posted by ブクログ
独特だけどエキセントリックでなく、動きがあるが整理された絵柄。テーマは女性同士の感情の交流が多い。百合ものというより、女性の私的な独白がそれぞれの女性登場人物のかたちをかりて作品内で反響しているかのようなドラマである。そのため、たとえば男性の視点は描写やストーリーテリングの面からもほとんど描かれておらず、作品世界が閉ざされているような印象も受ける。