あらすじ
後に半グレ組織となる「怒羅権」の結成、メンバーとの交流、血なまぐさい喧嘩、拡大していく組織の裏側などをはじめとして、14歳で中国から日本にわたってきた著者の苛烈な人生が描かれる。
怒羅権はどのようにして結成され、どのようにして暴力団からも畏怖される組織になっていったのか、そして著者はなぜ13年という長い期間を刑務所で過ごすことになったのか。
現在は犯罪から距離をおき、刑務所の受刑者に対して書籍を送ることで更生を促すプロジェクトをしている著者の汪楠(ワンナン)氏。『NHKスペシャル』『ザ・ノンフィクション』などにも登場する汪楠氏が壮絶な半生をすべて語る。
犯罪集団へと変質していった怒羅権ですが、結成当初はこのような組織を目指していたわけではありません。日本社会で孤立していた中国残留孤児の子孫たちが生き残るため、自然発生的に生まれた助け合いのための集まりでした。創設に関わった古参メンバーの中には現在の怒羅権の状況を残念に思い、解散させたいという声も存在します。
この本によって自分たちのしてきたことを正当化するつもりはありません。自分たちが何者であったのか、なぜ怒羅権という怪物が生まれたのか、そして犯罪者として生きてきた私が服役を終えた今、日本社会をどう捉えているのか。自分自身の半生を振り返ることで、それを記していきたいのです。(はじめにより)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
面白くて一気に読んでしまった。
怒羅権という不良集団のリーダーとなった汪さん。
意外にも裕福なエリート一家に生まれ、父は医者という恵まれた環境だった。
そこからの経緯はネタバレになるので触れないが、バタフライナイフは柄がないから自分の手が切れて使いにくいとか、鍵屋を呼んで拉致して技術を教えてもらうとか、こんな事書いていいの?と思うような生々しい話が盛り沢山に出てくる。
(実刑を受けて刑期を終えて組からも抜けたので書ける)
当時の在日中国人の少年たちは貧しくて常に空腹で、喧嘩を売られても手に持ってるパンの耳を食べる方が大事だったという話や空腹で闘えないからナイフに頼ってたら、それを恐れられたというエピソードも面白い。
何よりも汪さん自身が喧嘩に明け暮れて、暴力団にも属して修羅場をくぐってきた腹の据わった本物だからその体験や価値観から出る言葉に説得力がある。
同じ在日中国人でも家庭環境(親)がしっかりしてるところは、逆に勉強して立派になって日本人を見返そうという方向に行く人も多かったそう。
人間の根底にある本能やサガがえぐり出される良い本でした。
Posted by ブクログ
重い内容だ。著者は文章を読んでも、過去に犯した犯罪の手口を見ても非常に頭がよく、また、現実を洞察する能力が高い。それでいて、過去の犯罪では、躊躇なく、大体な行いにでていて非常に怖いと思う。一人の弁護士との出会いが大きかったようで、人の痛みがわかる人間になっている。
よく、大犯罪者が、崇高な宗教人になるようなケースがあるけど、それに近い。著者が再び悪に走らないように現在の建設的なプロジェクトの発展を切に願う。
Posted by ブクログ
ユン・チアンの『ワイルドスワン』とか、村上龍の『コインロッカーベイビーズ』を彷彿させる半生、中国での文革から語られる様は、読み物としての引力が高くリアルなのだろうが私小説の趣き。『中国残留孤児70年の孤独』を思い出しながら読んだ。
著者自身は日本人ではない。従い残留孤児ではないが、継母が残留邦人であり、日本に連れて来られている。そこから日本社会に馴染めぬ日々が始まる。異物を排除しようとする日本人の空気感、虐めがあるというのは分かる。これは日本特有でもないが、しかし、いずれにせよ、著者は体験した。
非行はスリリングでドーパミンを出す。人よりも過激に振る舞う事で、自己防衛と自己陶酔、ステータス化させ、出世欲を満たす。特権階級を目指す表層の自意識に反し、深層は自暴自棄だから、守るものがなく抑制の効かないエネルギーにより更なる特権を目指し、それは次第にエスカレートする。構造的「無敵の人」化するという事だ。誰しも経験があるのではないか。しかし、誰しも、表層のウマミに対し、深層のリスクが上回り、過度な犯罪行為を踏み留まる。
特権を目指させない事。それにはリスクを高めるか、ウマミを低めるか。いや、特権の対立概念で考え、公平に扱うとか、冷遇をしないとか、社会悪を生む義務教育段階での家庭格差の補助により、フリーライダーの低減を目指すべきだろう。
Posted by ブクログ
ちょっとタバコ買いに行くくらいのノリで
「さらう」とか「刺す」というワードが使われてて、ファッション不良しかみたいことがない自分としてはカルチャーショック。
これだけリアルな世界があるのかと驚愕。
しかも近所。
ただ、アングラの世界の事象が知れるだけでなく、
なぜそういう環境になったのか、
根本的な理由は何かの整理、言語化が素晴らしくうまい。
非常に頭が良い人だなと思う。
特に、日本の同調圧力に端を発するいじめに苦しんだ経歴があり、なぜいじめが発生するのか、の原因特定、構造化などが整理できていて、いじめに悩んでいる子育て世代の親にとっては、相当気づきがあるはず。
Posted by ブクログ
THEノンフィクションでお馴染みの汪楠さん。
結局、この本を出版した後に再逮捕されてしまっていて、この本の説得力はさっぱり無くなってしまった。
(その他、怒羅権初代の佐々木氏から色々とYoutubeで虚偽の内容が多いなどと言われてたり)
ただ、自信の生い立ちや犯罪歴なんからはきっと真実なんだろうと思う。
再逮捕前、どこまで本心だったかはわからないが、いじめ問題についての考えは確信を付いていたと感じた。やはり、どの世界でもいじめはあるし、何も生まない。
また、本人が更正しても過去に被害にあったという人の傷は癒えるものではないというのも自覚しているようだ(最後に、かつて怒羅権のメンバーにレイプされたという女性から手紙が届いたという内容も記載されている)
色々と思うところはあるが、読み物としては非常に興味深い内容だった。
真偽はさておき、やはりこういうアウトローの人の自伝は自分には縁のない世界すぎて下手な小説よりもずっと面白く感じる。
Posted by ブクログ
「おわりに」の女性からのメッセージがなかったら、『ザ・ノンフィクション』で観たのと同じ印象だった
もうあんな過去には戻りたくないとか、別人として
生きるとか語るところだろうけど
“過去の罪は消えない”
汪さんは怒羅権を過去の罪として蓋をするわけでは
なく、罪と向き合いながら繰り返させないために
現在活動をしている
中国残留邦人、残留2世、日本への恨み、更生施設ではない刑務所、父親から見放された過去…怒りの拠り所はどこにでもあり、怒りを発散させてきた
たぶん、いまだに差別は消えていない
ツラいこともたくさんあるだろうけど、汪 さんは
正しく生きる決断をし、まわりにもその輪を広げて
いる
過去は消えないけど、人は生きている限りいつでも
変わることができる
汪さん、応援してるよ