あらすじ
これまで人類が育んできた多種多様な思想文化。それらについての知識は、グローバル化した社会を生きる私たちにとって欠かせない基礎教養であり、同時に自分や他者の物の見方や考え方を理解するための土台でもある。本書では、そうした古今東西の思想を、その成り立ちや相互作用を複眼的にとらえる比較思想史という視点から紹介。ギリシア・ローマから、日本、インド、中国の思想、さらにはポストモダンや現代正義論まで、知っておきたいそのエッセンスをやさしく説き明かす。
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Posted by ブクログ
各国、各時代の宗教や哲学を新書らしくひとまとめにした思想入門書。
あまりに古今東西網羅的な一冊なので、一回通して読んだだけではとても理解しきれない笑。それでも何度か読み返して理解してみたくなる。
著者の言いたいことが詰まった「おわりに」「あとがき」の切実さはきちんと届いた。
「自由」を得る手助けとして「思想」を知り、取捨選択を経て、この世に唯一の自分を生きていきたい。
Posted by ブクログ
我々はついつい自分と違う文化・背景をもつ民族や他者を「○○は△△だから」と画一的に見てしまい、その裏側や本質に迫ることを忘れてしまう。
そしてその民族や地域には宗教や思想が存在し、それが人々の行動に影響を与えている。
その太古から続いてきた宗教や思想を紐解くことで、彼らがなざそのような行動を取ったかを理解し、また我々自身も自分たちが思っているほど確固たるものではないと気付ける一助になるかもしれないという思いで
書かれた本。
内容は
1. ギリシャ・ローマ文化
2. ユダヤ教・キリスト教・イスラム教
3. インド思想
バラモン教、ジャイナ教、仏教、ヒンドゥー教
4. 中国思想
儒教、老荘思想、朱子学、陽明学
5. 日本思想
神道、仏教、儒学
6. 近代哲学思想
カント哲学、ベンサム功利主義、ルソー、ヘーゲル
7. 現代思想
ポストモダン、実存主義、ポスト構造主義
もちろん世界にはここに挙げられなかった考えや思想は山のようにあるとは思うけど、主流を追うだけでもこれだけ違いがあると知るのは大事なことだと思う。
そしてこれらはどの思想が良くて、悪いでは無くてどれが自分たちを形作り、また自分は何を選ぶかという話だけだと思う。
特に中国思想、日本思想のところは外国人に日本人とは?について説明するときに役立つと思った。
ただ、ざーっと読み進める関係でほとんど頭には残らず、むしろ著者が最後に書いた「おわりに」と「あとがき」が一番読む価値があると感じた。
日々のなんでもない毎日、特別でない自分自身が、二度と出会うことのできない一度きりの出来事であると認識することが「生きる行」なのではないか?
これにはその通りやな。。と感じ入った。
Posted by ブクログ
中村隆文(1974年~)氏は、千葉大学大学院社会文化科学研究科博士課程修了の哲学者。専門は英米哲学思想、リベラリズム、法哲学。神奈川大学国際日本学部教授。
著者は本書の狙い・目的について、「はじめに」で次のように語っている。「人間の思考・価値観・世界観というのは多面構造的であって、誰かを-それが他人であっても自分であっても-理解するにあたっては、その振る舞いや考え方を形作っている文化的・思想的背景をきちんと捉える必要がある。・・・異文化理解とは、それぞれの文化の背景にある構造や歴史を踏まえつつ、自身のそれとはどのように同じでありどのように異なるのかを比較し、「何か」を摑むことにあるのではないだろうか。」、「言いたいことは、自文化や異文化を知り、古今東西の思想などを学ぶことは、それまで見えていた「世界」や「他者」や「自己」の見え方が-解像度が上がるかのように-クリアとなり、そしてそれが豊かな色合いを持ったものであることを知ることにも繋がる、ということである。」
本書で紹介されるのは、以下のような膨大な、古代から現代まで、かつ、西洋から東洋までの思想(宗教と哲学)である。
第1章:ギリシア・ローマ文化(ギリシアの神々/ギリシア神話の世界観/理性主義/ローマ文化)
第2章:ユダヤ教・キリスト教・イスラーム(ユダヤ教/ユダヤの試練の歴史/キリスト教/キリスト教の拡大と多様化/イスラーム)
第3章:インド思想(バラモン教/ジャイナ教/仏教/ヒンドゥー教)
第4章:中国思想(多種多様で豊かな思想文化/儒教/老荘思想/その後の中国思想)
第5章:日本思想(神道と自然崇拝/日本の仏教/儒学/国学)
第6章:近代の哲学思想(カントの道徳哲学/功利主義思想/世界の理性的発展)
第7章:現代思想(ポストモダン/実存主義/ポスト構造主義と脱構築/理性主義の復権と現代正義論)
ベストセラー『サピエンス全史』によれば、人類の中で、サピエンスを他の人類(ネアンデルタール人等)と差別化した最大のポイントは、「虚構(フィクション)」を信じ、語ることができる能力を獲得した「認知革命」にあるというが、「思想」、殊に「宗教」は、その中でも初期段階において絶大なる力を発揮したものである。
ところが、現代に至っては、その「思想・宗教」が、サピエンスの中での分断を煽る最大の要因ともなっており(同様に「虚構」である「貨幣」の影響も大きいが)、なんとも皮肉なものと言わざるを得ない。しかし、見方を変えれば、今こそ、我々サピエンスは、異なる「思想・宗教」を理解し、互いに許容することにより、分断・対立を乗り越えられるのか、即ち、サピエンスとしてもう一段進化できるのかを、試されていると言えるのかも知れない。
古今東西の思想を網羅的かつコンパクトにまとめた本書は、そのための第一歩となりうる一冊だろう。
(2021年1月了)