【感想・ネタバレ】バグダードのフランケンシュタインのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本からは欧州よりは近いのに遠く感じるイラク。

舞台はイラク戦争(2003年3月20日 – 2011年
12月15日)のさなかの2005年、連日自爆テロが
発生する首都バグダード。

古物商のハーディーはテロが発生した後、
拾ってきた複数の人間の遺体を縫い繋いで、
一人の遺体を作り出す。するとその遺体に
テロで亡くなった若者の魂が入ってしまう。

様々な登場人物が出てくるけれど、誰一人
善人がいない。善人だと生き残れない。
みんな狡猾で寂しい。カフェの店主の
アズィーズだけは少し優しい。

中東×ディストピア×SFというより
中東の現代ホラーかなぁ。
この現代に占星術師まで出てくるのは
なかなか面白い。

イラク事情が読める小説なんてあまりない中で
このレベルの小説が翻訳され読めるというのは
ありがたいです!

**************************************
中東というなじみのない場所の小説を読むというのは
最初は目隠しされた状態で両手を引っ張られて、
おずおずと一歩ずつそろそろと歩き続け、
徐々に周囲が見えてきてゆっくり気を配りつつ
歩く感じ。

著者はイラクの小説家、詩人、脚本家、
ドキュメンタリー映画監督(多才な方ですね。)
1973年生まれ。最近この年代の海外作家さんが
目に留まるようになってきた。今後も楽しみ。

****************************************

「怪物」が「名無しさん」なのは元のことばが
そういったニュアンスのものなのかどうなのか…。
少しかわいすぎる感じ。




ちょっと下ネタですが…
クライマックスに差し掛かってるあたりで
大けがをしているハーディーが手洗いに行くシーンで
「どうやってちんこを出そうかと考える前に」(P370)
で吹き出してしまいました(;^ω^)
うーん、他の単語がよかったかな…いちもつとか。

0
2021年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

粗筋に書いてある内容ではあるし、イラクという文化背景やその展開は、決して読み易いとは言い難いのだが、虚実不明な語り、それぞれ勝手な登場人物、現実と魔術的な内容が入り混じり、つい読み進む。
文学的にも自爆テロの位置付け、名無しさんの存在の根源的意義など、文学的に追求すべきものはありそう。
「百年の孤独」とか「悪魔の詩」「哀れなるものたち」とか、記憶にある感じだとそんな系統。

0
2024年03月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2005年、イラク、バグダード。爆弾テロが多発する町に住む人々と、「名無しさん」と呼ばれる怪物の話。
息子の帰りを待つ老婆ウンム・ダーニヤール。爆発で友を失ったほら吹きの古物屋ハーディー。雑誌社で働き、社長のサイーディーに強く憧れるマフムード。占星術師を雇っている追跡探索局のスルール准将。
それぞれの身に起こった出来事の裏で、ハーディーが爆発でばらばらになった遺体を寄せ集めて作った「名無しさん」の犯罪が全編に渡って描かれる。

造主であるハーディーが単なる通過点でしかない、と断じられていたのが良かった。
罪なき人の寄せ集めであり、それぞれの復讐のために行動していたはずの「名無しさん」が、意義を見失っていく過程がグロテスクだった。魂よりも存在に執着していく。死にたくないと強く思う。
「完全な形で、純粋に罪なき者はいない。そして完全なる罪人もいない」
訳者あとがきがとても分かりやすかった。顔のない人々。魂を圧倒する肉体=存在。それらが2005年のイラクの混乱を表している。
愛する人や思い入れ深い場所なんかへの追憶は確かにあるが、そうした記憶は弱いもので、目の前に存在し直面する物体や状況に簡単に圧倒されてしまう、というのが良かった。端的に言うと心の弱さ、不確かさ、が前提にある。

0
2023年02月12日

「小説」ランキング