【感想・ネタバレ】文明論之概略のレビュー

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Posted by ブクログ 2022年01月08日

全編を通じて、権力の偏重と行政の無責任さ、学者の見識外れ、民衆の政治的関心の低さなどを嘆じる義憤が、通奏低音のように流れている。やむにやまれぬ思いで、一気に書かれたものであろうと推察する。
今から1世紀半近くの昔に書かれたものであるが、その訴えるところはいささかも古びてはいない。つまりは、この国の基...続きを読む本的なところは、明治の初め頃と何も変わってはいないということなのである。

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Posted by ブクログ 2017年12月05日

現代語ではないので
読み辛いといえばそうなのだけど
著者に出来る限り近い言葉に触れた方が
真意が伝わり易いと感じる。

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Posted by ブクログ 2017年01月14日

福沢諭吉の主著。ギゾー、バックルなどの文明史論を取り入れつつ、西洋文明と日本文明を対照させ、西洋文明に学ぶ必要を説く。明治8(1875)年刊。

本書の主張は明白である。西洋文明を目的とすべし、というのがそれだ。はたして今日の日本は、様々な点で西洋化された国となった。では、福沢の願いは叶ったといえる...続きを読むか。否であろう。本書刊行の70年後に日本は独立を失うことになったし、また現在の日本にしたって、福沢が指摘した問題点をどれほど克服したといえるだろうか。そもそも福沢が西洋に学ぶべしとしたその第一は精神(気風)である。が、現実の西洋化はもっぱら文物・技術・制度の面で行われてきた。今日、日本が直面している様々な問題に分け入っていくと、「結局、日本の文化が…」「日本人ってのは○○だから…」みたいな話になって終わることが多い。つまりは日本人の精神、気質や気風が問題となっているのであり、福沢が出した宿題がそのままになっているといえる。

また、本書は日本が西洋近代というものに直面して間もないころに書かれたものである。福沢は西洋と対面するその最前線にいた人物であるから、本書の記述からも福沢が抱いていた危機意識・緊張感といったものを垣間見ることができる。昨今の政治的議論の弛緩ぶりを想うとき、思考のスタイルといった点でも、本書から学べることは多そうである。

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『文明論之概略』は古い本なので、21世紀人たる私たちが読むにはいくらか障害がある(文体とか)。そこでお勧めしたいのが丸山眞男『「文明論之概略」を読む(上・中・下)』(岩波新書)との併読である。まさに「精読」といった感じの解説本であり、福沢の思想のより深い理解へと私たちを導いてくれるだろう。ただ、このプランは文庫1冊プラス新書3冊で、読み通すのが少々大変ではある。そこでより簡便なルートとして斎藤孝による現代語訳がちくま文庫から出ている。未読なので訳の出来不出来等のコメントはできないが、近代の古典の現代語訳という試みは評価したい。古典は多くの人に対して開かれてあるべきだ。

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Posted by ブクログ 2013年02月11日

昔の人がどんなに真剣にDevelopmentというものを考えていたかわかる本。福沢諭吉は脱亜欧論とかいろいろ色眼鏡でみられているが、じっくり読んでみると、現在の日本にもつながる名著だと思う。

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Posted by ブクログ 2013年03月21日

福沢は一国の発展段階をその国民一般の持つ学問的知識の水準により決まるとし,一国が野蛮の状態からより文明化された状態に移行するために,国民一人ひとりが学問を修め知識を増し組織から独立し自分の足で立つことを説きました.

この本は現代においても我々一人ひとりがいかにして生きるべきかを示してくれています.

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Posted by ブクログ 2022年04月28日

日本に足りないのは実学。数理学や近代科学。人は生まれながらの貴賎の差はないが、実学を学べば地位の高い人・金持ちになる。実学を学ばなければ、地位の低い人・貧しい人になる。▼国を守る。国のために命を捨てる。自由独立を守る。国民のわずかがこうした気概を持っているだけでは独立は守れない。国民ひとりひとりが独...続きを読む立自尊の精神を持たねばならない。「日本人は日本国をもってわが本国と思い、その本国の土地は他人の土地にあらず、わが国人の土地なれば、本国のためを思うことわが家を思うがごとし。国のためには財を失うのみならず、一命をも抛(なげう)ちて惜しむに足らず。これすなわち報国の大義なり」『学問のすすめ』1872

日本では被治者は治者の奴隷だという発想がある。政府に任せきり、国の事に関与しない態度。日本には政府はあるが、国民(ネーション)がまだない。まず精神的な態度を身に着けるべき。▼儒教は徳による統治ばかりで、体制の維持に利用されてきた。停滞の原因だ。違う意見を持つ多くの人が、さまざまな事柄に関して議論する自由の気風を制限してきた。また、儒教は能力のある者を抑圧する身分制度を正当化してきた。▼明治維新が起こったのは人民に、知恵の力が育ってきていたからだ。ペリー来航はきっかけに過ぎない。中国と違い、武士が天皇から権力を奪ったことも、自由の気風が生まれる遠因になった。『文明論之概略』1875

祭祀(まつり)と政治(まつりごと)を明確に分けるべき。政治は損得勘定にかかわるものであり政党がすべきこと。天皇は自ら政治に当たるべきではない。民心融和の中心にならねばならぬ。天皇は党派によらない権威であるからこそ、危機に際して国民の一体化を容易にする。天皇は国民統合、歴史伝統の象徴であり、直接に政治権力を行使しないことにこそ意味がある。『帝室論』1882

(以前から支援していた金玉均による朝鮮近代化が西太后に潰された甲申政変1884の翌年) 中国や朝鮮は儒教思想に染まったままだ。日本はこれらの地域と共にアジアを興そうと考えることなく、西洋文明国と行動を共にすべきだ。『脱亜論』1885

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※大坂(堂島)生まれ。適塾(現大阪大学, 緒方洪庵)に学ぶ。

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Posted by ブクログ 2021年11月12日

文明を進めて独立を得る。文明とは、社会を人為的に操作する度合い?そのためには、規則や制度を整えるだけではなく、人民1人1人の独立の気風が必要。

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Posted by ブクログ 2018年03月20日

幕末から明治にかけて世界の中の日本の置かれた状況を冷徹に分析し、日本の植民地化を防ぎ国の独立を守るためにこそ西洋の文明を取り入れる必要があることを、論理的、体系的に、かつ相当の危機感をもって書かれた警醒の書。福沢は、内に憂国の思いを持ちながらも決して原理主義、絶対主義に堕することなく、全ての物事を相...続きを読む対的に比較衡量して、常に目的のための最適な手段を考えるリアリストである。単なる西洋かぶれの思想家ではないことがよく分かった。

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Posted by ブクログ 2012年11月04日

言わずと知れた福沢諭吉の代表作。

本書の内容は多岐に渡るが、彼がもっとも言いたかったことは「国体を保持するために、国民一人ひとりが合理的な思考(文明)を獲得しなければならない」というシンプルなものであるように思う。

すでに効用(実)がなくなっているのに古い習慣(名)に囚われ、思考停止に陥っている...続きを読む(=惑溺)例として、儒学者・漢学者・国学者が批判の槍玉に挙げられる。中でも孔子・孟子は相変わらず目の敵にされており、「そこまで言わなくても」と思ってしまうほど。読み進めている際、ふと「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」という鄧小平の言葉を思い出した。

もちろん、本書は素朴な文明礼賛ではない。福沢も「国の独立が目的であり、国民の文明はその手段である」と言い切っており、ここが意外とポイントのような気がする。

占いやスピリチュアルがいまだに流行る現代の日本。我々の精神は未だ文明からは程遠いと言うことができそうだ。

ところで、135ページに「巧言令色、銭を貪る者は、論語を講ずる人の内にあり」という件があるが、今をときめく経営者が何人も浮かんでしまうのは私だけだろうか。

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Posted by ブクログ 2011年12月30日

消費増税先伸ばしのニュースをみて、日本の政治が理解できなくなったので、文明開化の時代に遡って政治、社会の思想や背景を知ろうと手に取った。

実学の祖として有名な福沢諭吉だが、彼の思想は、今のグローバリストを量産すべしという胡散臭い議論とは全く別だった。
何のために外に目を向けるのか。
その目的は、新...続きを読むたな視点を取り入れて価値判断の基準を増やすことで、日本の社会問題をひとつでもふたつでも解決するためであるという自分の認識を確認した。

備忘録:文明とは人の安楽と品位の向上であり、それをもたらすのは国全体における智徳である。

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Posted by ブクログ 2011年12月21日

「学問のすすめ」よりも内容的にも若干難しいが、それよりも文章がぐっと難しい。なぜか「べからず」という語尾が頻発し、「その権威なかるべからず」などと、我々にあまりなじみのない言い回しなだけに、ぱっと見て肯定なのか否定なのか戸惑ったり。
しかし内容はなかなか豊かで、当時の日本人にしてはよく先まで見通して...続きを読む考えていたもんだなあ、と感心するしかない。
丸山真男が指摘していたように、確かに相対主義的な思考法が随所にあらわれているのも、面白い。
儒教の被支配者的な限界など、興味深い指摘が豊富だ。
日本(やアジア)は西洋に遅れている、という当時の切迫した思いは、しかし現在人類学的な観点から見ると、必ずしもそうとは言い切れないのだが、単に西洋を真似するのではなく、その本質に学んでさらに未来の文明にまで進もう、という意気込みはさすがだと思う。

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Posted by ブクログ 2018年06月07日

当時としては飛び抜けて開明的だったと思うが、今も読むべき古典なのかどうかは疑問だ。

ただ、明治の初め(出版は明治8年)に、日本のこれまでの歴史とその本質はまだしも、西欧の歴史と科学・技術の本質をこれだけ深く捉えていたかと思うと驚きを禁じ得ない。

内容よりも、その姿勢を学ぶべきだろう。クリティカル...続きを読むライティング(orシンキング)の見本だ。

・P224:日本の宗旨には、古今、その宗教はあれども自立の宗政なるものあるを聞かず。

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