あらすじ
世界中から絶大な人気を誇るリトルサンダー初邦訳コミックス。民主化運動が加熱していた2019年の香港で描かれた一大叙事詩。
SNSで圧倒的な人気(Instagramで71万人、Twitterで12万人フォロワー)を誇る香港のアーティスト、リトルサンダーの初邦訳コミックス!
絶対に結ばれない二人の、切なく激しい愛の物語。
パパと二人暮らしの少女「わかめ」。ある日狂ったパパに殺されそうになっているところを、わかめショップの店主「なみ」に助けられてから、彼女の人生は一変する。
他人に興味ゼロのわかめショップの同居人たち、海藻ばかりの食事…ぜんぶ大嫌い。
パパのことは好きじゃなかったけど、パパを殺したなみが憎い。彼を殺さなければ、私は自由になれない―――。
パパの死から9年後、わかめが振りかざしたナイフがなみの頭に突き刺さったその瞬間、わかめはある残酷で絶望的な「真実」に気が付いてしまう…。
因縁で結ばれた[わかめ]と[なみ]。
愛し合うはずの二人の運命は狂い、何度生まれ変わっても傷つけ合うことしかできない。
「なぜ彼らは生まれ変わって殺し合うのか?」
二つ目の真実を知ったの行方は…。
※本文中の一部特殊加工は電子書籍版では反映されておりません。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「なみ」という無愛想な男と、「わかめ」という可哀想な女の子が輪廻転生を繰り返して永遠に殺し合い、愛し合うお話。
絵柄の違い、インクの違い、紙質の違い、コマとコマの間、ページをめくるという行為…漫画本だからこそできる様々な表現を駆使して、平行宇宙の物語を紡いでいく。紙で漫画を読む楽しみと装丁の意義がこれでもかと詰め込まれている。
コマの中に描かれた世界だけではなく、紙面全体が、本の装丁が、そしてこの本を読んでいる私という存在が、全て組み合わさって1つの作品を形作る。
繰り返し繰り返し打ち寄せる波。海底に根を張り、波に揺られるだけの海藻。
「なみ」という青年。「わかめ」という少女。
無限に繰り返す循環の中で問いかけられた、「自分」の存在について。
それを描いた「漫画」という概念さえ物語の構成要素になっていた。
香港で生きる人々を描き続ける作家が、民主化運動で激動する2019年の香港でこの作品を作った。
読者の下方と上方に何層にも渡るメタ構造が出現する。
とんでもない作品を読んでしまった。しばらく興奮で打ち震えていた。