あらすじ
人類史上最大級の謎! キリストの「復活」に驚愕のトリックが!? ーー体制に反逆する教えを説いて、民衆の熱烈な支持を得、「神の子」と呼ばれたイエス。だが彼は、反乱罪に問われ、十字架にかけられる。その死体は、密室状態の洞窟から忽然と消え、イエスは救世主(キリスト)となって復活した。人類史上最大級の奇蹟の真相と驚愕のトリックに、本格推理の英才が挑む。長編異色歴史ミステリー!
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Posted by ブクログ
イエス・キリストの「復活」を,本格ミステリとして描いた異色作。「神の子」と呼ばれたイエスは処刑され,密室状態となった洞窟に葬られる。しかし,三日後,死体は忽然と消え,「救世主(メシア)は復活した」という伝説が生まれる。この「密室から死体が消えた謎」を,本格ミステリとして解き明かそうとする作品である。
物語は三部構成。
「第一部 それ以前」では,主人公であるエジプト通商隊の一員が,エルサレムの人々にイエスという人物について聞き歩く。立場によってイエスの評価は大きく異なり,主人公は最終的に,「イエスとは,人々の願望や恐怖をありのままに映す鏡のような存在だった」と結論づける。そして,主人公はイエスがエルサレムへ入る直前に町を去る。
「第二部 それ以降」では,既にイエスは処刑されている。しかし,エルサレムでは「イエスは復活した」という噂が広まり,主人公はその真相を探るため調査を開始する。
主人公がたどり着いた真相は,ヘロデ・アンティパス領主に仕える家令クーザがイエス救出に協力したというものだった。密室のトリックは,洞窟が金曜日の夕方に閉じられた後,深夜前にもう一度だけ密かに開けられていたというもの。ローマ総督ピラトは真相を知りながらも,「真実とは,誰にでも扱えるものではない。復活の真実を知っているというお前は傲慢だ。」と語り,歴史に真実を残そうとはしない。このセリフが印象的だった。
「第三部 一年後」では,通商隊を離れた主人公が,イエスと思われる人物に救われる場面で物語は幕を閉じる。
全体の雰囲気は,歴史ミステリとして悪くなく,比較的読みやすい。しかし,本格ミステリとして見るとやや弱い。密室トリックは,「密室と思われていた洞窟が,実は深夜にもう一度開けられていた」という心理的なもので,特殊な知識も必要になる。意外性やサプライズもあまり感じられなかった。それでも,「イエス復活」を本格ミステリとして扱うという発想自体は面白く,雰囲気も嫌いではない。駄作ではないが,強く印象に残る作品でもなかった。評価は★3