【感想・ネタバレ】六つの奇妙なもののレビュー

あらすじ

証人の見ている前で被害者にコップを手渡した人物が犯人でないとすれば、毒を入れることができた者は誰もいない……。夭折した作家が贈る第一級の異色本格ミステリ。

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Posted by ブクログ

若くして戦地で亡くなったスプリッグの遺作で、本作は1937年に出版されました。
積読状態でしたが、某同人誌からスプリッグの未訳作品が刊行されるという予定を耳にし、邦訳のある本作を読んだ次第。

ロンドンのとある屋敷で開かれる降霊会の妖しい魅力に、ひとりの若い女性が絡め取られるところから物語は始まります。
霊媒師の兄とその妹に雇われた彼女も、いつしか霊媒としての能力を開花させ、さまざまな現象が身の回りで起き始めます。
一方、彼女の婚約者は彼女を救い出すために降霊会に紛れ込むのですが、降霊会の終わったあと、その青年に手渡されたコップの水を飲んで、霊媒師の兄が死んでしまいます。
青年は毒薬を持っていましたが、霊媒師の死因は違う毒薬によるものでした…。

青年が霊媒師を殺したのではないとすれば、誰がどうやって…という不可能犯罪物ですが、その真相自体はさほど魅力的ではありませんでした。
それより、この作品が魅力的なのは、サイコスリラーと言えばいいのか、ゴシックホラーと言えばいいのか、主人公のヒロインやその婚約者に次々と難題が降りかかり、次がどうなるのか気になって、読ませてくれたところでした。
本作は20世紀のロンドンを舞台にしていますが、21世紀の現在で起こってもおかしくはない気がします。

そして、背後に「統轄(ディレクター)」という人物の存在が示唆されます。難を言えば、最後の一章でその統轄の正体があっけなく明らかになってしまうことではありますが、統轄が最後に述べる、この作品のラスト一行は衝撃的です。

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2021年07月29日

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