あらすじ
東京下町の風情残る谷中にたたずむレトロカメラ店・今宮写真機店。中古のクラシックカメラを専門に扱っている三代目店主の今宮龍一とアルバイト山之内来夏の元には、さまざまな客が謎を運んでくる。カメラの修理も得意とする今宮は「修理の基本は観察です」と言い、鋭い観察力と推理力で次々と謎を解いていく――。数々の魅力的な名機とカメラを愛する人々が織り成す、心温まる連作ミステリー。
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Posted by ブクログ
全編にわたって優しい雰囲気に包まれている作品、舞台が谷中、そして舞台となるお店で扱うのがフィルムカメラだから、ということも作用しているのでしょうか…。
レトロカメラ店の店主とそこでアルバイトをしているヒロインが主役の物語。店主がお客にまつわる謎を解き明かすというものなのですが、殺人や強盗の凶悪犯罪ではなくいずれも日常の身の回りの出来事です。ただ、そのどれもが真相を知るとなるほどと思わせられるもので、出来事に関わるひとたちが持っている優しい想いに溢れています。
”謎”の真相もいかにも謎解き本のために作りました、というレベルのものではなく、日常のささいなこと、あるいは当事者の想いが積み重なって生じたものですから、悪役・悪人が登場しないんですよね。
こうした点が作品全体を通した”優しい雰囲気”を醸し出すことに成功しているのだと思います(このレビューを書きながら自分でも感じた心地よい読後感の正体がわかり納得…)。
最終章では来夏の秘密が明らかになるのですが、これは序盤でまったく気づきませんでした。改めて読み直してみるとたしかに善次郎との具体的な関係を示す記述はなく、描写されている内容からすっかりミスリードさせられていたというわけで、ちょっとしたサプライズ感でした。
Posted by ブクログ
謎解きできてしまう観察眼のある人に憧れるので、カメラ修理のスペシャリストである主人公もすてきだなぁと。髪が長くてボサボサっていうのが残念だけど、谷中にあるというお店も素敵そうだし、周りの空気も柔らかくて、穏やかに読めました。