【感想・ネタバレ】短歌ください 明日でイエスは2010才篇のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

穂村さんのダ・ヴィンチ投稿のため、傾向と対策を知る参考書と思って取り寄せた 2010-2013年(第31-60回)連載分をまとめた単行本の加筆修正した文庫版 表紙は陣崎草子さん
ブク友の5552さんも張飛さんもライバルですからねっ

題詠はほんと苦手、今度のお題は切手だけど思いつかない
テーマは多彩で罪、同性、数字、自然、体、味、エロ、距離、声などなど
自由詠も募集していて、『どちらのテーマも上限はございません。どんどん送ってください』ですって
皆さんの「穂村さんに読んでほしいんですけど!!!」と渾身の最高傑作を差し出し、素晴らしい作品が目白押し、才能のぶつかりあいですっ こりゃあ穂村さんに選んでもらって掲載まで遠い道のりだ
同一作者で他の投稿作品も良かったら一緒に載せちゃうという贅沢さ
解説は、投稿少年高校生だったのに今ではNHK短歌の先生という寺井龍哉氏にお願いだなんて、素敵すぎます☆彡
「短歌を作るということは、多かれ少なかれ、うそをつくことでもある。」
「穂村弘は、こんなにも気軽な調子で、こんなにも罪深い営為に、読者たちを誘うのだ。その罪深さが、本書の愉悦の豊かさである。」
5552さん情報にもあった、木下龍也さんも常連でよく載ってました

どれも良すぎて選びきれないので、穂村さんの講評を抜粋します 褒め言葉も素敵
限りなく幻に近い愛の真実
自分自身の内側に充ちている命の反映
無軌道な情熱を込めた歌は多いけど、その逆の静かな現実的対応を詠った秀作は珍しい
ユーモアの反射神経に惹かれました
意外性、ドライブ感、パラレルワールドなどが多用されてました

ご自身のことを開示しているのも楽しみ
募集テーマは料理 僕は林檎を剝くことと素麺を茹でることしかできないんですけど。
募集テーマは幸福 私は散歩や買い物やお茶をしていると幸福なんだけど、人によって感じ方が違いますよね。
募集テーマは地元 僕の地元は作務衣を着たおじいさんが無農薬野菜を抱えてスケートボードに載っているようなイメージのところ

女子便所からもおんなじ空が見えおなじ身体の向きになるはず
月光の降る大通り警官と婦警が手と手つないで渡る(寺井龍哉、18歳)
動物は何も言わずに死んでゆく人間だけがとてもうるさい
だしぬけに葡萄の種を吐き出せば葡萄の種の影が遅れる(木下龍也、24歳)
お二人ともたつやさんです?!

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2022年09月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「どこにでも行ける気がした真夜中のサービスエリアの空気を吸えば」サービスエリアって特別な感覚になる。嗅覚も聴覚もとても澄んでほんとうにどこまでもどこまでも行けるよう。人工物の匂いから自然が救い出してくれるような、どこか懐かしい香り。不可思議で少し足がすくむ感覚。思い出してアンニュイな気分になった

「煮え切らぬきみに別れを告げている細胞たちの多数決として」こうでも結論づけなくちゃ前に進めないよなぁ。とも詠めたし、全力で拒絶しているとも仮定できた面白い歌。人間関係の断ち切りの難しさを感じる

「筆圧の強いあの子が今日は来たイヤホン外して「かりかり」を聴く」今日は、はいつも心待ちにしている人なのかな。前のめりで相手に関心のある様子は捉え方によっては怖く感じてしまうんだけど、気になる人を少しでも感じたい欲が露骨に出ていて愛おしい歌。イヤホンっていうフレーズを見ると、私はどこか閉ざされたイメージを持つのだけれど全力で開いている歌の空気感がすき。かわいい

「冬の朝窓開け放ちてあおむけば五体にひろがりやまぬ風紋」風紋‥風によってできる模様。なるほど。知らない言葉だった。言葉を知るとまた深くこの歌が身近に感じる。風は目には見えないはずだけど、確かにそこにいるな。様々な形で存在することを教えてくれるみたい。目には見えないけど確かに存在する。癒される。力がみなぎる。風って、自然って神様みたい

「俺なんかどこが良いのと聞く君はあたしのどこが駄目なんだろう」ストレートな言葉がしっかりささる。彼は質問しているだけなんだけどしっかり拒絶しているように感じるから凄い。わたし、ではなくあたし、としている女の子に純粋さを感じるから切ない。「あたし」はまだ世の中を知らない。恋愛を知らない。男性を知らない。なんだか懐かしくてやっぱりせつない

「行ったのか待てば来るのかバス停で本当のことはわからずにいる」バスの話だったのか!私は想いを寄せる人に対しての歌だと思っていた‥なるほど。でもその後の、本当のことはわからずにいる。という文は人生そのものを俯瞰して見ているように感じた。わからないんだろうな。だれにも本当のことは

「まだそんな幼いことをやってるの」言いつつ涙溢れるばかり」21歳の女性の歌なんだなぁと思うとより一層胸が締め付けられる。この成人した少女は大人にならなくてはやっていけない現実についていけてないのだろうなぁ

「針に糸通せぬ父もメトロでは目を閉じたまま東京を縫う」東京を縫うってすごい。針に糸、という細かいフレーズからいきなり東京って飛躍するから面白い。細かいことは苦手だよって聴こえてきそう。大都会で働くお父さん。偉大だな。世の中のお父さんが力強く感じた。

「お願いです。駅構内で不審物を発見しないでください。(駅長)」当事者の切実な思いが伝わる。わかるー!責任重いよなあ。緊張感あるよなあ。当番の日には当たらないでくれー!って誰もが願うもの

「さよならが弾けるときは音の粒まで深呼吸してやりたい」すごく覚悟のいることをサラッと受け止めてしまうこの人が素敵。痛みまで、悲しみまできちんと全て吸収しようとするところ、中々真似できない。全部全部大事にしていたいっていじらしさも感じてすきだなあこの歌

「この赤い手すりの下に動脈が埋まっているはずエスカレータの」機械に熱を感じることってあるな。まるで生き物みたいに温もりを感じるとき。もしかしたら命は吹き込まれているのかも知れない。廃墟とかもそうだもんな。それ自体が大きないきものみたいだもん

「享年は書かれてないのね牛肉の細切れ肉のパックの表示に」命日と表記が変わるだけで私たちの生活の何かは変わるんだろうな。加工、消費、と表記されるだけで生き物がモノに変わる物騒さが刺さる。生き物だって頭ではわかっているけれどそれを再度認識して有り難く命をいただいている人間はどれほどいるのだろう。惰性でお肉を選ぶ日もあるもんなあ。なんだか残酷で傲慢で横暴で‥人が人であることを反省する感覚になる

「部長室で頭下げても目の端に窓の緑をいつも入れとく」したたかで素敵な歌。一瞬ですきになった歌。自然っていつも寄り添ってくれる。みなぎる活力を与えてくれる。心身共に平穏無事を恵んでくれる友だと年々感じる。人からパワーをもらったりあげたりするのって時々とてもしんどいから。落ち込んだら自然に頼ってみるのがいい

「地球上の総人口が偶数であれとひとりの朝に願った」ひとりではやっぱり生きていけない。現実社会で手を取り合って生きていくパートナーは必ずいてほしいと切な願いが伝わる。自分の未来に対しての希望なのだろうけど、みんながそんな想いを持てたら日々はもっと穏やかになりそう

「こおろぎは鳴いているけど冷やし中華やめましたとは誰も言わない」はじまりは宣言するのにやめるときは何も言わない。確かに。そもそもなぜ冷やし中華だけはじまるのだろう。かき氷でも肉まんでもおでんでもなく冷やし中華

「君よりも少しだけ長いお祈りで、君はわたしよりしあわせになる」こんなふうに想えるわたしは誰よりしあわせになるんだろうな。いや、既にわたしはしあわせなんだ

「もう少し早く出会っているような世界はどこにもない世界より」もう少し早く出会っていれば‥違う場所で出会っていた‥出会い方のせいにすることってあるけれど、そんな世界ないですよって今の世界が世界なのだからって身も蓋もない歌で素敵

「しあわせな人ぶる君にみあうためコントレックスが不味くてもわらう」しあわせな人ぶるかあ。私たちは常に裏腹を含んで生活してるんだろうな。明け透けで生きても生きづらいリアル。愛嬌をもって建前をもってしたたかに生きるリアル

「くちびるの皮をひとかけ食べました。明日つぶやく予定の言葉」その皮の上で言葉は通り過ぎるはずだったのに早めにその皮を食べてしまったって想像したのだけれど、解説を見たら違ったみたい。SNSにつぶやくってことか!「つぶやく」=SNSやTwitterを想像するのってほんとデジタル社会だなあ

「一人旅装うブログ打つ君の携帯カメラに映らぬわたし」かなしい。さみしい。とてもストレートでリアル。一緒に過ごしているのにいないことになっていて、それをわざわざ証明してるようにも見えてつらい。わたし、いるよってきこえる

「背中をさする手の美しさを咳き込むわたくしは見ることができない」想像しただけで切なくなったり美しく感じたり。人の心は豊かだ

「鮭の死を米で包んでまたさらに海苔で包んだあれが食べたい」ごまかさないで言葉にされるとささる。生き物の死を美味しい美味しい食べている人間って‥

「改札の数が少ないあふれてる人が落ち着くまで並ばない」こういう手法のうたいかたもあるんだな。二句切れと言うのか‥

「「好きにしろ」父の口癖聞くたびに好きにできない呪縛にかかる」わかるなあ。好きにしろって自由とは真逆の意味に聞こえてしまう。だから言っただろうと未来からの声まで聞こえてくるよう

「明日からも生きようとする者だけが集う夕べのスーパーマーケット」力強い意志の集まる場所。ただの人じゃない。ただのスーパーじゃない。感度を持ってアンテナを張り巡らせているとこんな風に詩にできるんだなあ。日常に豊かさをくれる短歌の世界。日常であればあるほどその力に魅せられる

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2022年06月05日

Posted by ブクログ

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前作と同様に気に入った作品に付箋をつけて自分がどういうものに惹かれるのか考えてみた。
少し寂しさを感じるものが好きな傾向かな?
好きな作品を3首

どこにでも行ける気がした真夜中のサービスエリアの空気を吸えば

正しさが欲しかったから25時赤信号にひとり従う

長距離ランナー型・短距離ランナー型・六畳間這いまわり型

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2021年09月13日

Posted by ブクログ

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「あるある」や「新発見」を通り越してギョッとさせられるような短歌の群れを楽しんだ。というかおののいた。

60のママ、これ以上生きないで 死に近づいていくのがこわい

その傷がまぶたとなってひらいたらおそろしいからガーゼを当てる

声優を声優さんと呼んでいるあの子に呼び捨てされていた日々

聞いたことない花の名をあたしの名よりもはっきり言い切った母

「かぎかっこ、僕がつかうからとっといて」(だったら私はかっこでいいや)

愛ん家で見たエロ本と脱衣所のない風呂たぶん愛は美しい

だしぬけに葡萄の種を吐き出せば葡萄の種の影が遅れる

柔らかい笑顔するのね下半身は暴力的に動いているのに

飲みながらおしっこしたらそれはもう管よ私は一本の管

死ぬときにこの手握ってくれる人募集中 すこし急いでいます

明日からも生きようとする者だけが集う夕べのスーパーマーケット

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2020年11月07日

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