【感想・ネタバレ】アフター・リベラル 怒りと憎悪の政治のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年02月07日

各章のつながりがよく、読み進めていく中でリベラリズムが直面する難題が少しずつ理解できます。
日本人がイメージするリベラルではなく、左派だのパヨクだのすぐカテゴライズしたがる人に、ぜひ読んで頂きたいですね。

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Posted by ブクログ 2021年08月15日

これまでのリベラルデモクラシーのあり方について、最後にこれからのあり方を提言してくれているのはとても参考になりました。

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Posted by ブクログ 2021年07月07日

田中拓道「リベラルとは何か」からの吉田徹「アフター・リベラル」!このワンツーパンチは効きました。きついです。遡ってミチコ・カクタニ「真実の終わり」まで繋がりました。同時進行でBREXIT、トランプ、コロナ、香港、という出来事も、アフター・リベラルという眼鏡をかけると連環した流れとして見えてきます。2...続きを読む0世紀後半の世界を作ってきたのはリベラリズムであること。そしてそれがパンデミックで崩壊しつつあること。そのふたつのことが明快に論証されていく本です。その時々で生まれてきたリベラリズムの多様性「政治リベラリズム」「経済リベラリズム」「個人主義リベラリズム」「社会リベラリズム」「寛容リベラリズム」…それぞれの均衡が破れて不整合が生まれている「暗い時代」、それが今なのです。ニューノーマルってコロナを乗り越えていくポジティブなキーワードだと思っていましたが、本書の副題にあるように「怒りと憎悪の政治」がスタンダードになる時代なのかもしれません。しかし、著者は言います。「リベラリズムの最大の強みは、それ自体が多様な意味合いを持っていることにある。実際に、過去のリベラリズムは、歴史の大きな転換点をみて、深い自己の刷新を遂げてきた。…」と希望を捨てません。あとがきも「もしも恐怖と破壊がファシズムの主要な情緒的源泉だとするならば、愛情こそが基本的に民主主義の側に立つもの」というアドルノの叙述で閉じています。コロナが「暗い時代」を作ったわけじゃなくて、もともと進んでいた「暗い時代」がコロナで噴出しただけであり、ニューノーマルはリベラルのアップデートにかかっているのだと思いました。

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Posted by ブクログ 2021年05月12日

やっとトランプ現象がわかってきたような。。。

というか、冷戦後の世界政治が理解できなくなっていたのが、ようやくわかってきたような。。。

いやいや、80年代の新自由主義のあたりからわからなくなっていたのが、ようやくわかってきたような。。。

ともすれば、日本とか、アメリカとか、ある国で今なにが起き...続きを読むているかという状況論的な話にちょっと歴史的な経緯を解説するというようなものになりそうなテーマなんだけど、これは、冷戦後の世界で起きていることをかなり包括的に、ロジカルにまとめたもので、相当の説得力をもった議論だ。

国によって、時代によって、その意味する内容がかなり違うにもかかわらず、戦後の世界で広く共有された理念であったリベラリズムが退潮していった理由をしっかりおさえ、なぜ権威主義的な政治が立ち上がっているのかを論じている。そして、その展開として、歴史認識の問題やテロリズム、ヘイトクライムなどについても、一貫性をもって解説していく手際はお見事。

とくに、新自由主義とナチズムの類似性の指摘は、驚きつつ、なるほどな論立てだったな〜。(まだ、納得まではしてないけど)

現実をしっかりおさえつつ、さまざまな学術研究や理論的、哲学的な議論を振り返りつつ、いわゆる「現実」の分析だけにとどまらず、社会構成主義的な視点も踏まえつつで、すごいな〜、と感動を覚える。

これだけの内容が300ページ強の新書におさめられているので、ページごとの情報の凝縮度は高い。多分、単行本、3冊くらいで扱うような内容だと思う。専門的な知識がないと読めないほどには難しくはないと思うけど、読み通すには一定のパワーがいるかも。

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Posted by ブクログ 2021年01月05日

見通しの立たない未来。原因の分からない様々な社会事象や事件に彩られた今。

そんな時代に、データに裏付けられた「見取り図」を提示した力作である。

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Posted by ブクログ 2020年12月07日

なかなかためになる本。今まで不可解だった世界の政治・社会などの情勢に対し、納得のいく解説がえられ、新しい世界像を手にしたような気分である。まあ、至高の価値とされる自由でも、社会の側としては、バランスをとるため、コントロールせざるを得ないことは起こりうるか? もちろん、その際には、何のための自由かリベ...続きを読むラリズムか、という認識がなければならないにしても。

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Posted by ブクログ 2024年02月17日

吉田徹(1975年~)氏は、慶大法学部政治学科卒、東大大学院総合文化研究科修士課程修了、ドイツ研究振興協会DIGESⅡ修了、東大大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学、JETRO勤務、日本学術振興会特別研究員、北大法学研究科准教授・教授等を経て、同志社大学政策学部教授、フランス社会科学高等研究院日...続きを読む仏財団リサーチ・アソシエイト。専門は、比較政治・ヨーロッパ政治。
本書は、近年世界的に広がる、リベラルな政治の後退と権威主義的な政治の台頭に加えて、歴史認識問題の拡大、世俗化に伴うテロやヘイトクライムの頻発、個人が扇動する社会運動等について、歴史的な背景を含めて、それらが相互にどのように関連しているのかを、政治学・社会学的に考察したものである。尚、内容の多くは、いくつかの共著や専門誌に掲載された論文をベースに書き改められたもの。
私は、昨今のリベラルの限界を指摘する多くの言説に強い問題意識を抱いており、これまでにも、田中拓道『リベラルとは何か』、萱野稔人『リベラリズムの終わり』ほか、様々な本を読んできて、本書についてもその流れで手に取った。
読み終えて、正直なところ、新書としてはあまり理解しやすい本ではなかった。というのは、初出が(専門的な)論文である内容をまとめているため、各章のつながりが見えにくく、各種引用もかなり広く深いためと思われる。
私なりに本書から読み取った理解を記すと以下である。
◆第二次大戦後に世界に広まった「リベラル・デモクラシー(自由民主主義)」とは、個人の「自由」を尊重するリベラリズムと、個人間の「平等」を尊重するデモクラシーという、元来は相性の悪いものが合体して成立した。それは、リベラリズムが経済的側面(資本主義)を抑制し、デモクラシーが政治的側面(ファシズムや社会主義)を抑制するという、それぞれの原理のネガティブな側面を薄めることによって可能となった。リベラル・デモクラシーは、戦後成長の中で生まれた中間層が基盤となったが、成長の鈍化、将来展望の不透明化が進む現在、中間層は政治的な急進主義(非リベラルな民主主義)に引き寄せられている。
◆19世紀以降、政治は、階級社会の対立軸である「保守vs左派」という構図をとってきた。しかし、階級政治の終焉、「ポスト工業社会」への移行に伴い、人々の価値観は、物質主義から脱物質主義(社会的・文化的価値観)」に変化し、政治の命題も、「社会はいかにあるべきか(資源・物質の再配分)」から「個人はどうあるべきか(価値の再配分)」に変わった。同時に、それまで対立軸を作ってきた保革政党が、保守政党の社会政策におけるリベラル化と、社民政党の経済政策におけるリベラル化によって、「リベラル・コンセンサス」を成立させたことにより、リベラルと、経済リベラルに反感を持つ労働者層と政治リベラルに対抗的な価値を掲げるニューライトが組んだ反リベラルの対立軸、即ち、「リベラルvs権威主義」という対立軸が生まれることになった。
◆1970年代以降顕著になった歴史認識問題の拡大は、それまで基本的に「公的な物語」であった歴史が、戦後世代が社会の中心になるにつれて、バラバラの「私的な記憶」(場合によってはフェイクの)の集合体となったことに起因する。それに伴い、政治は、未来の理想を語るものではなく、過去がどうであったのか、どうあるべきだったのかを論じるものに成り下がっている。これはかつて勝ち組だった中間層が、過去を美化するポピュリズム政治に惹かれることにも繋がる。
◆現在先進国を襲うテロやヘイトクライムは、社会に宗教色が強まったことが原因ではない。かつては、教会や宗教指導者の権威が強く、宗教が個人を操作していたが、現代では、社会が個人化したことにより、所謂「ウーバー化(サービスの提供者と利用者が直接結びつき、仲介者の役割を排除すること)」が進み、個人が宗教を自分のために利用するようになった。宗教の原理主義化は、伝統的な宗教・信仰のあり方から個人が離反したことによって生じているのであり、単に宗教を批判・抑制しても問題はなくならない。
◆そういう意味で歴史的起点となったのは、1968年に世界中で起こった、伝統的な集団(階級、宗教、地域、ジェンダー等)からの個人の解放を求める、所謂「新しい社会運動」である。しかし、個人化・個人主義の進展は、反作用として、上記のような社会の変容をもたらし、また、新たな他人との結びつきや社会・集団の形成を必要とするようになっている。
◆リベラリズムは歴史的に、「政治リベラリズム」、「経済リベラリズム」、「個人主義リベラリズム」、「社会リベラリズム」、「寛容リベラリズム」の5つのレイヤーに分けられるが、上記のような現象は、5つのリベラリズム相互の不適応(バランスの欠如)によるものである。個人の尊重は重要だが、その行き過ぎは、他人との差異を際立たせ、社会に対立と分断を作ることに繋がりかねない。リベラリズムの最大の強みは、多様な意味を持ち、かつ、自らを刷新・進化させられることにある。まずは、個人主義リベラリズムと寛容リベラリズムの均衡と、経済リベラリズムと社会リベラリズムの均衡を、そして、人間性の剥奪に抵抗する、整合的なリベラリズムへの進化を目指す必要がある。
「リベラル」、「リベラリズム」について一冊だけ読むなら、敢えて本書である必要はないが、相応に問題意識を持つ向きには、複数のうちの一冊として読む価値はあるだろう。
(2024年2月了)

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Posted by ブクログ 2022年04月03日

権威主義体制と対峙する今だからこそ考えたいリベラリズム。やや総覧すぎて焦点が絞りにくいけど、考えるネタを提供してくれている。

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Posted by ブクログ 2022年03月22日

世界情勢はすっかり変わり、リベラリズムは衰退した。怒りや敵意に充ちた世界で、アフターリベラルはどのような世の中となっていくのであろうか。

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Posted by ブクログ 2021年09月05日

21世紀初頭の先進資本主義国における右派ポピュリズムの躍進や関連するオルタナ右翼の人種差別主義、歴史認識の政治化、過激なイスラーム主義によるテロリズム、me too運動などは、すべて1968年革命でリベラリズムが「個人」を解放した結果として生じている(本書の言葉で言えば「ウーバー化」)ということを論...続きを読むじている。

“ 政治は作用と反作用からなる。作用する主体や次元が変転すれば、それに呼応する反作用も新たな性質を帯びる。既存の政治がリベラルという価値に軸足を置けば、それへの対抗軸は非リベラル、反リベラルなものとなる。その事実を認めないかぎり、次の時代の政治は見えてこない。権威主義的なニューライト、保革政党によるリベラル・コンセンサス、歴史認識問題、宗教的ラディカリズムやヘイトはともに、リベラリズムと呼ばれる潮流が内在させてきた本質の副作用とみることができる。つまり、リベラリズムは、自らの(←288頁289頁→)勝利によって、自らの敵を作り上げてしまったのだ。”(本書288-289頁より引用)

1968年新左翼革命の個人優先主義が、実は1980年代のレーガンらネオリベラリズムとその支持層の保守主義者の間で通底していたという議論は、ポリティカル・コレクトネスの誕生を巡る論説でよく目にするが、本書全体から、今現在我々が立ち会っている社会の崩壊は、68年的なものの結果であり、そしてその終わりなのだということを感じた。本書で示されるように、個人の尊重というリベラリズムの原理が勝利したからこそ、今日にあってリベラリズムを擁護するのは困難なのであろう。その点では特に、本書で示されたウエルベックの『服従』(2015年)の読み解き(231-236頁)は非常に興味深かった。


“ 女性にもてないことをこじらせた中年男性を主題にした彼の代表作『素粒子』に典型だが、ウエルベックは人間を解放することはすなわち、その人間は自らの能力だけしか頼るものがなくなることを意味するから、結果として夥しい不平等を生むことにもつながると、あるインタビューで答えている。人間の責任は、社会にも家庭にも伝統にも歴史にも負わ(←234頁235頁→)せることができず、自分で負うしかなくなるからだ。そして、その負える責任の範囲は、個々人の能力や資本によって異なってくるゆえ、行き着く先は人生のあらゆる側面での不平等でしかない。
 だから、『服従』が告発するのはイスラム原理主義ではなく、人間精神を救済できない現代社会であり、それに宗教が利用されるという「ポスト世俗化」のロジックを描くものなのだ。
 ここで出てくるのが信仰の問題だ。小説後半、主人公フランソワは、文学大全の編纂とイスラムへの改宗を承諾して大学への復職を決心する。主人公は過去にカトリックとして育てられた記憶もあって、カトリック修道院に救いを求めて修行するのだが、結局、自分の役に立たない宗教には意味がないということをその過程で悟る局面がある。自分の人生にとって使えるか、使えないかが、信仰心を持つか持たないかの基準なのだ。だから主人公フランソワは、自らの出世と性的願望(一夫多妻制!)のため、なんとなくムスリムになることを、あっさりと決めてしまう。
 現代社会では、宗教こそが個人の欲望に服従することになる。個人の自己決定権が当たり前となった政治的リベラリズム優位の社会で、宗教への「服従」はあくまでも主体的に、自主的になされるという逆説が、小説のタイトル『服従』の意味なのだ。ちなみに「イス(←235頁236頁→)ラム」とはアラビア語で「服従」の意味だ。”(本書234-236頁より引用)



本書が見通す世界がそうであるからこそ、本書の特徴としては、個人に終始する発想の否定が挙げられるかもしれない。21世紀に入ってからのポスト・マルクス主義やアナキズムがコミュニタリアニズム志向なのはよく知られているが、リベラリズムもまた、共同体を重視する方向に向かうことで、リバタリアニズム的潮流との差異化を図るのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2021年01月14日

「リベラル」って言葉が広がり過ぎて、経済的な自由を追求する資本主義と、その行き過ぎに歯止めをかけたい社民主義が両方リベラルを、自称して争ってたりする状況をすっきり整理してくれた一冊。

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Posted by ブクログ 2021年01月10日

個人的に胡散臭さを感じる欧米のリベラルに対する疑問をよく調査してまとめた本だと思います。
歴史認識についての3章は「ホロコーストの問題が世界で広く認識されるおうになったのは1980年代に入ってから」「被害者としてのドイツの記憶が語られ始めたのは冷戦が終わった1990年代だった」という話が非常に興味深...続きを読むかったです。
リベラリズム再生の提案もしていて、内容が詰まった本多と思います。
可能ならば日本の共産主義や革命ごっこくずれの自称リベラルについてどういう見解か聞いてみたいなと思いました。

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Posted by ブクログ 2020年11月17日

私の最近の関心領域に合致するテーマだけに、大変に興味深く読み、かつ著者の多角的な視点から、大いに示唆を得た。かなりの力作。
ただ、テーマがあまりにデカいだけに、一読しただけではまだ消化不良…

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Posted by ブクログ 2021年04月16日

リベラル派が勢いをなくして久しいが,現在の保守が正しいとは言えないし,むしろ暴走を許していると思う.ではリベラルとは何か.しっかりと勉強してみたい.

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年11月10日

 よくよく冷静に分析している、40代の研究者の著書だ。
 「リベラル」の多様性を多くの研究者の知見をもとに、戦後の政治・民衆の動きを丁寧に読み解いている意欲的な新書、いまの世相を俯瞰する良書だ。
 五つのリベラリズムのレイヤー、「経済」「政治」「個人主義」「社会」「寛容」と分類して切り込んでいる 読...続きを読むみ物としては難解な類になると思うが、読み手もいち読に終わらず、よくよく考えながら読みたい一冊だ。
 若い層には丁寧に読みいてほしいと思う。

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Posted by ブクログ 2022年08月24日

タイトルが気になり読んでみた。気になっていたことが論じられていて参考になったが、テーマが難しい分、難解な内容だった。

ただ後日、読み直してみるとある程度わかる気がしたので。

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