【感想・ネタバレ】夜の声を聴くのレビュー

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Posted by ブクログ

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出だしこそ衝撃的だけど、人との関係に意味を見いだせず、家に引きこもっていた隆太が、定時制高校に通い、人は見た目ではわからない部分があり、本で見て知っていると思ったことも実際には違って見えたりと経験を重ねて成長していく話。
多分ウリのポイントはミステリの方なのだろうけど、この作品はミステリとしての完成度よりも成長譚としての方が良いと思う。

定時制高校で知り合った大吾は、リサイクルショップ兼何でも屋で住み込みで働いている。
少しずつ明かされた大吾の過去。
それは幼少期に家族全員を惨殺された、たった一人の生き残りだというものだった。
それに比べれば母に愛されなかった自分など…。

何でも屋に持ち込まれる小さな仕事に伴う小さな謎。
それを解決していくことで繋がっていく一つの大きな謎。
これが、割とわかってしまうのだ。
ああ、音響で11年で…って。

もちろんそれは単純な繫がりではないけれど、「ここ大事」ってフラグが立ってしまっている。
だから私は、ミステリと言うより成長譚として読みました。
登場人物たちそれぞれの止まっていた時間が動き出した、という意味では、大人も救われているわけだし、読後感も悪くない。
ただ、大吾にとって世間はいったい何だったのか?
その後の彼は、過去を思い出して懐かしむことはなかったのだろうか。

それから、最初のリストカットの後、主人公が小学生の時に後者の3階から飛び降りたこと、リストカットした百合子の叔父の飛び降り自殺、依頼人の血のつながらない息子が屋根から落ちたことなど、やけに落下事件・事故が多いので、何かの布石かと思ったけど違ったね。

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2023年02月20日

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タイトルに惹かれて読んだ本。初めての作家さんで、目の前で手首を切った女性に遭遇という入り口に、ライトノベル?と思ったら、出口が全然違って、人生は何がきっかけでどういうふうに変わっていくかわからないものだなと思った。
低周波で不定愁訴が起きるのは知っていたけれど、人工的なものだけでなく山から吹き下ろした風が低周波を起こし、登山者が異常行動を起こして命を落とすこともあるというのは初めて知ったので、ものすごく勉強になった。

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2022年01月22日

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主人公がいたからこその偶然のような必然
いくつもの出来事、出会いがうまく組み合わさった結果が事件解決につながったと思うとすごい
貧困、ヤングケアラー、一家殺人と苦しい問題多々(主人公のトラウマも幼いこどもにしたらかなりしんどい…)
突然の別れだったけれど大吾が元気そうでよかった

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2021年11月05日

Posted by ブクログ

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定時制の生徒の話から、そこでの友達が働いている「月世界」というリサイクルショップの話になる。便利屋業もやっていて、そこに持ち込まれた、カブトムシの幼虫が全滅した話、たぬきに化けた息子 お母さんと妹がなかなか会ってくれないといった相談事を受け、解決する。

カブトムシ全滅は、起きていない火事を偽装して、高い階から飛び降りさせ自殺にみせるという殺人で、火事に見せるためにドライアイスを使い、その処理でカブトムシが死んだというように完全にミステリ。青春ものと思って読み始めたのでびっくり。それでその事件は解決したのに、章立てや連続短編集との扱いもなくてそのまま話がすすんでいく。最後は、大吾の家族は強盗から殺されており、その犯人と目された男の母親がリサイクルショップのオーナーであることがわかる。犯人と目された男は自殺しており真犯人かどうかは分からずじまい。それについては低周波の影響と、東野圭吾みたいになってきた。そして別に真犯人がいたことで、ちょっと『砂の器』のような大きい展開となる。最後は青春ものとしてハッピーエンドとなる。ちょっと毛色のかわったミステリだ。
本の雑誌2020年度エンタテインメント(北上次郎)ベスト10 1位

(1) 宇佐美まこと『夜の声を聴く』(朝日文庫)は、つらく悲しいドラマの先に素晴らしい読後感が待っている魔法のような小説だ!【おすすめ本/北上ラジオ#23】

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2021年05月17日

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伏線回収をきちんと行っているミステリー。もっとホラーやイヤミスと思ったら、怖い方には振れず青春小説系に振れているのが意外だった。

ミステリーと青春小説は相性が良いがこの作品もその相性を上手く使っている…というかその特性を生かしている。

キャラクターの中に少々ザツな個性の人(結局、リスカの女性は主人公の定時制高校入学のきっかけになっただけ?とか、堅物執事とか)もいて、物語上大きな瑕疵ではないけど、もうちょっとエエとこに当てはめてあげたら生き生きしそうやのになぁ、

など少々の難癖はつけれないこともないが、些末なこと。きちんとまとまった良い青春ミステリーだと思う。

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2021年04月22日

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この作品も善悪で単純に語れない人間の複雑な内面の襞に胸が震える。
心に苦しみを抱えた隆太は入学した定時制高校で気さくで明るい人柄の大吾に出会い、彼が住み込みで働くリサイクルショップ「月世界」に出入りすることに…。外からの刺激に少しづつ動いていく隆太の気持ち。すっかり定時制高校の青春小説のノリの前半が、後半は過去の一家殺人事件の解決に迫っていくミステリーに一転して「月世界」を通じて広がった人々の関係性がスルスルと繋がっていく様が素晴らしい。
長いトンネルの旅が終わって静かにそれぞれの居場所に散る余韻もよかった。

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2021年01月24日

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便利屋「月世界」に依頼された数々の難題。
一見何の関係性もない出来事が徐々に繋がっていく。
バラバラに散らばったパズルのピースが次々に揃い、スッキリした爽快感を味わった。

世の中に絶望し引きこもりとなった青年が、入学した定時制高校で出逢った貴重な経験はその後の彼の道標となる。
人と人との縁…楽しいことも辛く悲しいことも、全てひっくるめて糧にして前進することの素晴らしさ。
膝を抱えもがき苦しんだ夜の底から見事に這い上がった姿が眩しく清々しい。

宇佐美さん初読み。
噂と違いそんなに怖くなくてほっとした。

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2020年12月14日

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「愚者の毒」と同じ作者だったので。

もともと、できる限り事前の情報が無い状態で本を読みはじめる。
読み始めるように、している。
電車の中の煽るような広告や、
口の上手い落語家の書評に痛い目にあったせいもあるし、
シリーズものを愛する反動なのかもしれない。

とくにこの作者は、
ミステリーなのか、ホラーなのか、ファンタジーなのか、
どこに進むのかわからないピンボールを見守るどきどきがある。
今回は、突き落とされたり、穴に落ちたり感はなかった。

リストカッターの女性に出逢ったことで、
ひきこもりから定時制高校生になった主人公。
同級生が住み込んでいるリサイクルショップにも通うようになる。
飛び降り事故の謎、狸の謎、リサイクルショップの謎。
謎が解けた時、親友となっていた同級生は旅立った。

人が成長していく過程は美しい。
つぼみが開いて、花開くごとく。
読み終わって、映画の「Stand by Me」を思い浮かべたのは
私だけではないはず。
いつもより、優しくて甘い「お話」だった。

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2020年10月06日

Posted by ブクログ

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いろんな要素がぽつぽつ出てきて、
それが一つずつ繋がって、
最後に落ち着きました。

様々な生死感があって、
同じものを共有することの難しさを感じました。
ただ、誰もが死を想像することで、
生きることができるんだなと思いました。

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2020年11月01日

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