感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
目次
・物語が、始まる
・トカゲ
・婆
・墓を探す
どれもこれもそこはかとなく哀しいような恐ろしいような、ちょっとエロティックでもしかするとユーモラスな作品ばかり。
だけど一番好きなのは、やっぱり表題作だなあ。
男の雛型を拾い、同居していくうちに…っていう話なんだけど。
男の雛型ってのがまずよくわからない。
”大きさ1メートルほど、顔や手や足や性器などの器官はすべて揃っている。声も出す。本が読め、簡単な文章が書け、サッカーのルールは知らないがボールを蹴ることはできる、というくらいの運動能力がある。子供の背丈だが、顔つきは子供ではない。かといって、大人でもない。どちらともつかぬ、雛型らしい顔つきとしか言いようのない、中途半端な顔つきである。”
いや、やっぱりわからない。
素材は何?
主人公は彼を拾い、食事を与え、絵本の読み聞かせなどして育てるのだ。
主人公には恋人がいて、そのうち結婚をなどと考えているが、彼女の作品の多くの恋人たちのように、彼らの恋愛は極めて温度が低めである。
でも、彼は雛型に対して拒否感を隠さない。
主人公と雛型の仲が親密になるにつれ、そして雛型の体形がすっかり大人のそれとなった時、ふたりの間に恋が芽生える。
恋?
雛型にそもそも感情があるの?
行きつ戻りつする主人公の気持。
恋人という切り札もあるけれど、どうも読み進むにつれ、これは哀しい物語なのではないかという予感が押し寄せる。
もし私が拾うなら、男でも女でもいいので、1メートルより大きくならない雛型がよい。
毎日絵本を読んで、お散歩に行って、公園で遊ぼう。
どこに落ちているのかな。