あらすじ
貧困削減や開発援助、感染症対策、平和構築、紛争予防、環境保全、ジェンダーなど、国際協力に関する24のテーマを取り上げる。現場の研究者の目に映った開発途上国の厳しい現状や課題を中心に、開発経済学の視点から、ダイナミックに変化している開発途上国の姿を伝え、国際開発の取り組みを紹介する。
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Posted by ブクログ
発展途上国の問題。
貧困、感染症、教育、知的財産、環境etc...
さまざまな問題を紹介し、他に、より学術的な分析、
たとえば産業集積(一つの都市や地方に産業が集中して経済活動をなす)、
そして技術革新の例、たとえば農業においての東南アジアにおける
「緑の革命」(1960年代からつづく、生産拡大のための米の品種改良など)
の紹介などがなされている本です。
各章の一つの単元が7Pで区切られていて、よくまとまっていて、
集中して読む分には読みやすいです。
ただ、それでも法制度のところなどは、言葉がうまく頭に入ってこなかったので、
ちょっと苦労して読みましたし、理解度は低いです。
そういう、ちょっと難しいところがあります。
岩波ジュニア新書なのですが、たぶん、中学生が読むにはけっこう厳しいと思います。
現代文が得意でいろいろな言葉を知っていたり、辞書で調べる労をいとわない人には
いいかもしれません。
海外で国際協力をしようと思っているわけでもないのに、何故このような本を
読んだかと言えば、内容からいろいろ類推して役立つことがあるだろうと
思ったからです。その読み通り、格差社会が到来している今の日本においても、
上記の貧困や、それと保険の問題ですね、そういったことがらが、
まるで遠くの出来事ではなく、日常の問題だということに気づくことになります。
日本は豊かですから、そういう社会の暗部的な問題って、霧に隠れているような
感じだと思うんです。そこを、発展途上国の現実を眺めることで、
他人の振り見てわがふり直せじゃないですが、自国の状態を把握するのに
フィードバックがあったりします。
条件付き現金移転政策というものが、途上国向けにあります。
たとえば、85%以上の出席をする子どものいる家庭の母親に対して、
補助金を与えるだとかというものです。
これって、日本でいえば子供手当じゃないですか。
子供手当が条件付き移転政策の簡易版のように見えてくる。
そして、なぜ条件付きなのかというところが本書に書いてあります。
85%の出席によって、勉学に挑む時間が増えて、子供の教育レベルが上がるというものです。
そのためには、出席させたことに見合う、教育の質っていうものが必要になってきます。
さて、そのあたり、日本の子供手当はどうなのか。
どうも、教育レベルを上げるためじゃないことが推察されますね。
つまり、高齢化、出産率の低下をおさえるための、現金(所得)移転政策なのでしょう。
また、他の諸問題についても、ぶっ飛んだ類推を必要とせずに、
日本の現状を改めて考えるのに役立つかなという気がしました。
問題認識に適しています。
ということで、本書の結びにも書いてありますが、
国際開発の問題全体を広く見回すのに向いている本でした。
国際協力をやりたいなと漠然と考えている方は、
まず、この本を手に取ってみて、どういうものなのかを把握してみて、
それから、気になるカテゴリーを新たに深く掘り下げてみるのが
良いかと思います。
まぁ、いまは日本が大変な時期ですから、海外に目を向けていられない
人が多いかもしれないですが、それであっても、
さっき書いたように、日本の諸問題としても読めるものなので、
時間のある方はさらっと読んでみても損はないでしょう。
Posted by ブクログ
国際協力や援助に係る様々な論点が、浅く広く紹介されている、教養学部のオムニバス講義のような一冊。
入口としてはよいし、JETROアジア研をはじめとする執筆陣の意欲を感じた。
<メモ>
- 環境問題、共通だが差異のある責任
- 開発援助、贈与・融資・技術協力、借り入れは計画的に
- 貧困の罠(貧しいから教育・投資できない→貧しいまま)、マイクロファイナンス
- 技術とは一定の資源から大きな成果、先進国で開発されたものより優れた「適正技術」(100ドルパソコン)
- IT、携帯電話→情報入手コストダウン→価格安定・生産効率UP・コストdown
- イノベ、産業集積、産業クラスター理論と空間経済学
- グローバリゼーション、価値観のグローバル化と市場(経済)のグローバル化★後者は手放しで喜ばれるべき?
- 医療従事者を途上国から先進国に引き抜くことは犯罪?(技術供与もできるし送金もできるし志望者増で結果的に途上国にも従事者が増えるのでOK?)★インフラ輸出はいいのか?
Posted by ブクログ
国際協力、主に開発途上国へどんな援助が出来るのかについて、外務省やJICAの立場から書かれた本と位置づけることができる。副題にあるように開発経済学についての現場での目線からの入門書といえる。1つだけ大きく考えが違うのが、WTOなど自由貿易についてのことだ。体制側の人が書いているからだろうが、農業や食糧自給・安全の面から自由貿易が善とはおかしなことだ、そういうところに気づいてしまうと、途上国の医療関係者の頭脳流出も肯定していたりと、本当に途上国の庶民のことを考えているのかと疑いが濃くなって行く。国際協力ということは、どんなことでも疑ってかかるべきということを教えてくれる本ではあるのかもしれない。