あらすじ
独裁政権と闘うジャーナリスト、難民キャンプで暮らす少女、配偶者から硫酸で顔を焼かれた女性、震災で家族を失った被災者、誘拐され結婚を強要された女子大生――。世界最大規模の報道写真祭で最高賞を受賞した気鋭の写真家が、世界各地で生きぬく人びとに寄り添い、その姿を報告する。カラー写真多数。
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Posted by ブクログ
何年か前に、タイトルが気になり買ったものの、読まずにそのままになっていました。読んでみて、あらためてまだまだ知らないことばかりだと…全世界がコロナに右往左往し、一方でオリンピックで一喜一憂…でも個人レベルでは想像もつかないような人生を送っている人たちがいる。「尊厳」にも格差があるのでしょうか。実際何もできなくても、このような現実があることから目をそらしてはいけないと思いました。それにしても、著者の行動力はすごい。突き動かす情熱を感じました。
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人間の尊厳をテーマに世界各地の社会問題を取り上げた新書。フォトジャーナリストの筆によるものだが、新書だけに写真は少ないが、写真だけでなく文章にも迫力があり、強く心に残った。
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本書で今まで目を向けないできたことを、知ることとなった。自分が育ってきた環境や、いかに平和ボケしているかを痛感した一冊だった
ネットを見ていてもたまにこのような記事や、写真をみることはあるが、本書のあとがきにもあった通り見たくないから見ないことができるのが私たちで、私はショッキングである内容に目を背けて来たが、見たくないと思っていても目を背けられない問題に直面しながら生きなければいけない人がいると言うこと、筆者の諦めずに世界で起きている様々な問題を伝えようと言う姿勢が写真や文面からひしひしと伝わり、自分に対し情けなさや恥ずかしさを感じた
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日本人の常識では考えられないことが世界各地では起きている。日本人とまで言わなくても、私自身がこの様な世界の事実を知ったのは本書が初めてであった。ニュースで流れるウクライナ戦争、アフリカスーダンの内戦も繰り返し何度も放映され、気がつくとその様な大きな出来事をテレビやインターネットから断片的に得ているだけであった事に気がつく。ニュース番組も勿論視聴者の興味を惹きつける事件や出来事を優先的に流さざるを得ないと思うし、世界で起きてる出来事全てを流すことは時間がいくらあっても足りない。だから大きなニュースから優先的に、事の重大さに比例した時間枠が取られるのは当たり前だ。それを否定するつもりも無い。
だが考えてみるとそれも随分身勝手だなと感じる。要するに自分主観な考え方なだけだ。ニュースで流れる内容だけが世界の全てでは無く、そこに暮らしている人から見た重大さは私とは異なる、こんな当たり前の事でも日常生活では容易に勘違いして生きている。
本書は筆者の学生時代の経験やその後ジャーナリストを目指す中で感じてきた想いをストレートな文章とその場を切り取る写真で構成されている。私は趣味レベルの写真技術しか無いから、技術などは語ることが出来ないが、そこに居る人々の感情が写真の表情から十分に伝わってくる。勿論文章があることでより一層鮮やかさを増しているのは間違いないが、筆者の想いは十分に伝わってきた。
馴染みのないアフリカの国々、観光地とでしか知らないアジアの国、そしてソ連崩壊後の東アジアの独立国。そこには我々の常識では到底考えられない事件や慣習が存在する。驚きと恐怖で読み進めるが、実際にそこにいた人々や筆者にとっては想像できない様な悲しみや絶望を感じさせたであろう。自分の病気も知らない子供や、それを見守る親族たちのどこにもぶつける事が出来ない叫びを感じる。
そして震災で原発事故により入る事さえ困難だった地域での活動では日本人の良さも改めて感じる事が出来た。同時に未曾有の被害をもたらした地震と津波の恐怖を瓦礫の中に見た。
私は如何に自分目線で世界を捉えてしまっていたかという深い反省とニュースやジャーナリズムの限界、困難さを理解する事となった。
筆者も伝える事を仕事にし徹底的に懐に入ろうとするがそれも簡単な事ではない。言葉の壁、習慣の違い、経済的な問題など苦しい状況でも決して諦めない筆者の姿には世界が知らない、目を遠ざけている真実を伝えたいという想いが十分に伝わってきた。
危険な世界ではある。だからこそ価値がある文章や写真なのではない。危険な世界の背景にどの様な原因や経緯があるのか、真実に立ち向かっていく筆者の姿勢を垣間見る事で、視野を広げると同時にその様な真実に立ち向かうには我々に何が必要なのか、それを問いかけられ続ける。真実はそれを受け入れて懸命に生きる人々それぞれに存在している。
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同じ女性として、ショッキングな内容が多い。
特にキルギスでの誘拐婚
都市に住む女性が無理やり郊外の昔ながらのコミュニティが根付く場所へ誘拐され、そこの男性と結婚させられる。親族の説得や「伝統だから」という社会観念から、根負けして結婚を受け入れる。
相手も、一度か二度しか会ったことないのに…
写真だからこそ、被害者の絶望や諦めが言葉以上に伝わる
「写真を撮るなら、被害者を助けるべきなのでは?」という意見がある一方で、著者の立場は、自分が育ってきた環境とは異なった社会を切り取るとき、他者である自分がどこまで介入すべきなのか?を考えさせる
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本を読むのが苦手な私でも読めました。
1章の報道の自由のない国で、第4の硫酸に焼かれた女性たち、など日本に住んでる自分がどれだけ恵まれて、安心して暮らせてるのか、がすごく感じた。
個人的に5章の震災と原発が胸に響きました。
自分は当時6歳でニュースモルカー理解していなかったと思いましす。筆者が棺の写真を撮ったことで、娘さんは両親が最後一緒に居られてる、ことを知れてこういう繋がりができるのか、と思いました。
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著者の林典子さんは、写真とジャーナリズムに、意図せずある日出会ってしまった人のように思えた。
世界の片隅に、ニュースにならない、目を背けたくなるような現実が溢れていること。
それを写真に撮り報道しても世に知れ渡り変わっていくには多くの時間を要し、その被写体となった人達は直接には救われないというジレンマ、それでも写真を撮ること、そのような人達に寄り添い、生活を共にし、写真を撮ることはしかし一見すればこのような人達に大きなカメラを向けて付き纏う冷たい日本人と見えることを常に肌で感じながら、身を削りながら取材を続けているのだろうと感じました。
このような信じ難い現実を知ることとともに、林典子さんの思い、姿勢、成長も読み取ることができる、単なるフォト・ドキュメンタリーではない一冊でした。
震災の、あるご夫婦の一節には、ジャーナリズムとはまた違う、深い感動がありました。
Posted by ブクログ
結婚や交際の申し込みを断られた腹いせに硫酸を顔にかける。
どうしてそんなひどいことができるのだろう。どうしてそんなひどいことをした人間が罪に問われないのだろう。
パキスタンでは年間150人から300人くらいの女性が、硫酸をかけられる事件が発生しているらしい。それも氷山の一角で、地方の村では警察に被害届けを出さずに隠れるように生きている女性も多いという。
男のプライドを傷つけた報いとして、生き地獄を味わえという理屈らしい。
全くわからない。殴るとか、刺し殺すとかは日本でも頭のおかしい幼稚な奴はやるが、顔を焼くんだから、これはたぶん宗教観からくる報復なんだろうと思う。
ペットでもなく・・・虫でもなく・・・なんだ? 女性は人形か? 所有物だから壊してもいいということか?
男の馬鹿な頭を矯正するより、これはまず国家が厳罰化して男の頭を殴らないと、この犯罪は無くならないと思う。
被害を受けた女性の写真は衝撃だ。被爆者の写真のようだ。被写体になった女性たちも本当は写真を撮られたくないのかもしれない。
しかし同じ女性として被害女性に寄り添うように取材した著者の意図が通じたのだろう。取材に応じ、このあまりにひどい現実を世界に発信することに協力する。
被害女性たちの生活も詳しく取材している。化粧をしたり、おしゃれをしたり、と女性らしい姿もとらえるが、それは家の中でのこと。外に出るときは顔全体を覆って、けっして顔を出さない。家の中での姿をとらえることができたのは、やはり著者が女性だからだと思う。
シリアで亡くなったジャーナリストの山本美香さんも戦火の犠牲になっている女性を取材し続けていた。女性にしかできない取材というのは確かにある。
あと、たぶんこの著者が日本に報道して有名になったんだと思うけど「キルギスの誘拐婚」の章がとても興味深かった。
長くなるから詳細は省くが、誘拐婚で結婚した80過ぎの老夫婦の話がこの不可解な伝統を一刀両断しているところが面白かった。
「いまの誘拐婚はただの流行だ」
相手の気持ちも考えず、強引に相手を攫うなんてことはしているのは今の若者だけだという。昔は親が決めた許嫁と結婚するしかなかった。愛し合っている二人の気持ちより、家のほうが大事だった。それが嫌で男は女を許嫁と両家から「攫った」 要するに駆け落ちみたいなものだったらしい。
それがどうしてこんなひどいことが”伝統”と思われるようになってしまったのか。
もし、これを昔から伝統として報道、紹介している媒体があったら、それはがセです。
誘拐婚は犯罪として重い量刑が課せられるようになったらしいので、早く無くなればいいと思う。
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マララさんのノーベル平和賞に関わる諸々の報道があって、『カーリーⅢ』でインドって怖いなと思って、そのあと後藤健二さんの事件があって、日本の常識ではフィクションにさえ思えてしまう日常が世界にはあるということを、根本的に私は知らなすぎるのではないかと思ってもう一度ちゃんと読んでみた。写真とそのキャプションを眺めているだけでも、世界の見方が変わる。
Posted by ブクログ
年若く、キャリアも浅いのに、ここまでの仕事をしていることに感心する。
個人的に人権派というのはどこか胡散臭く、信用していないのだが、虐げられた人々に寄り添いながら情景を切り取る(フォト)ジャーナリストというのは、シャッターを押すたびに身を削る思いをしているのではないか。
テーマごとのレポでありながら、通読すると著者の成長譚にもなっている。
東日本大震災の際に立入禁止区域まで入り込んで取材をしたのが海外メディアだけであった、というところに本邦マスコミの限界を見る。
Posted by ブクログ
きちんと生きている人の仕事は尊い
ここに紹介される
人たちは いずれも
なんらかの意味で人間としての尊厳を
剥奪された人たちである
林典子さんは
その人(被写体)に寄り添い
その人の心に寄り添えることができた時だけ
初めてそっとシャッターを切る
その人たちに
写真を撮るという作業を通じて
その人たちが
剥奪された人間としての尊厳を
もう一度取り戻しておられる
ように 感じる
Posted by ブクログ
特にパキスタンの被害者の写真が衝撃的だった。女性フォトジャーナリストが、被害者達と心の交流があって初めて撮られた貴重な写真とルポルタージュなので、直視すべき悲しい現実を鮮明に突きつけられた。
Posted by ブクログ
世界で行われている非人間的な行為の実態に、今の平和な日本との違いを痛感する。まだ世界の弱い人たちは、自由と尊厳を与えられていない。彼らはその厳しい状況下で、自分達の宿命として受け入れて生きていかなければならない。私たちはもっと視点をこれらの人たちに向けるべきだと思う。若い女性でありながら、危険な現場で勇敢に取材する著者の勇気にも感嘆した。
Posted by ブクログ
タイトルが直球。岩波書店っぽいなあ。
硫酸被害の女性と、誘拐結婚のところが衝撃的。
ある一人の人間が、どのような状況に置かれ、どのような気持ちでいるのか。それを知りたいと著者はいう。それを指して、「人間の尊厳」というのでしょう。かなり自分と近い感性を感じた。
こういう、重い気持ちにさせられる本が好きやなあとあらためて思う。読んでよかった。
Posted by ブクログ
世界の、自分が知らない場所でどの様なことが起きているのか、それを知る一助になった。
自分と同世代の人がこんな仕事をしているのを目の当たりにすると、自分がいかに好き勝手に気ままな生活を送っているかがよくわかる。
Posted by ブクログ
第一章、ガンビアの独立新聞社で命懸けで新聞記事を書く若い記者達の描写が1番印象深く残る。
意義の為に危険を冒してまで職務を全うし、実際に命を奪われた者。その道を諦めざるを得なかったもの。
第1章 報道の自由がない国で―ガンビア
第2章 難民と内戦の爪痕―リベリア
第3章 HIVと共に生きる―カンボジア
第4章 硫酸に焼かれた女性たち―パキスタン
第5章 震災と原発―日本
第6章 誘拐結婚―キルギス