【感想・ネタバレ】死んだレモンのレビュー

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Posted by ブクログ

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タイトルからは全くなんの小説か想像もつかず。読んでみてびっくり、これはオモロい!

いわゆる勝ち組な人生の成功を得つつも、心に空虚さを覚え、ウツ的に空虚になった挙句、妻に逃げられ、交通事故で下肢を麻痺する大けがを負った主人公。

彼の人生を取り返す再生の物語と、ニュージーランド最南端の小さな町リヴァトンに隠された秘密を暴く物語、さらにはそこにどんでん返しのミステリーまで伴い、やや詰め込みすぎかとも思いきや、最後見事な着地を決める巧みさ。

小説の構成も見事で、現在パートと過去パートを交互に織りなすパターンは良くあるが、マンネリ臭は一切なく、王道のパターンの利点を存分に生かして楽しませてくれる。

これがデビュー作とは恐れ入る、次作以降も翻訳されるだろうか?是非追いかけたい作家がまた一人増えてしまった。

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2022年07月31日

Posted by ブクログ

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下は海、崖の途中で宙吊りって、『その女アレックス』の宙吊りの檻とどっちが恐ろしいやろかと震える。そんな絶体絶命の状況から始まります。

町の中心から外れた最果ての地で、明らかに怪しい三人兄弟の隣家に住むことになった主人公は車椅子、バツ1、元アル中。ひたすら暗いサスペンス劇になりそうなところ、彼の周囲に集まるのがユーモアに溢れた善人ばかりで救われます。

謎解きではなくて三人兄弟が罪を犯した理由を追求する物語だと思ったら、あらら、やっぱりそれだけじゃなかったのか。自費出版の翻訳とは驚き。ついでに、双子の出生率はベナンが世界でトップクラスという豆知識も(笑)。

映像化するとしたら、ちょっと年齢がちがうかもしれませんが、フィンにエドワード・ノートン、タイにドウェイン・ジョンソンというのはどうでしょう。温水のトゥイにはエディ・マーサンとか。三兄弟が悩むところ。少なくともショーンは男前じゃないと。

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2021年05月09日

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人口より羊が多いということをまず思い浮かべてしまうニュージーランドの意外な一面を知ることになった。ダークニュージーランド。。

脇役のセラピストと元刑事の神父が面白い、と思ったら、2作目は若かりし日のこの神父が主人公だそう。読んでみたい。

ネコチャンが酷い目に合うことや、鯨の話しなど、残酷さの許容範囲が広いお国柄なのかな、と。

『ペインスケール』の続きも読みたいのですが。

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2020年08月22日

Posted by ブクログ

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珍しきかな、ニュージーランド発ミステリ。
ナイオ・マーシュ賞新人賞受賞作とのこと。

幼い頃を南アフリカで過ごし、若くして成功した主人公のフィン・ベル。
35歳を過ぎた頃から、午前3時になると目覚めてしまう不眠に悩まされ、酒に溺れる。
妻との別れを迎えた矢先、交通事故に遭い下半身麻痺の障がいを負ってしまう。

事故後のリハビリ、セラピーを経て、まだ明確な意志は形作られないものの、酒を断ち、事業を売却し、”南の南、ニュージーランドの果ての果て”リヴァトンのコテージを購入し人生のリスタートを切ろうと移り住んできた。

そんなベルが冒頭、車椅子と共に崖で宙吊りになり、目前に迫った死を嘆くシーンに始まる。
車椅子ラグビー(マーダーボール)にも出会い、人生に希望を感じ始めていたのに。
なぜこんなことになってしまったのか。
全ては隣人のゾイル家に関わってしまったせいだ。。。

ベルがこの地に身を置くことになった6ヵ月前のパートと現在のパート。
次第に過去が現在に追いついてくる形式の物語。
原題「Dead Lemons(死んだレモン)」とは人生の落伍者の意とのこと。
ベルはリヴァトンの地で出会ったセラピストのベティから「あなたは人生の落伍者かしら?(障がいに甘んじ、人の助けに頼りながら苦しみに耐え抜く人生を歩むのか)」と些かキツい投げかけをされ、今一度自立を図るべく自己に向き合っていく。

序盤の掴みこそ良かったものの、ミステリ的な側面としては、隣人がかつての凄惨な事件の関わっていたのではと疑い、過去をほじくり返す内に自分の身にも様々な脅しや危険が迫るが、それにも屈せず真相に突き進む、というよくある話。
車椅子利用の主人公が特徴と言えば特徴だが、解説でも言及されていたリンカーン・ライムという絶大なる先例があり、二番煎じ感が。

また、著者はかつて法心理学の専門職に就いていたようで、時折プロファイリングめいた深層心理の分析と、濃い洞察、示唆が語られる場面がある。
これが肌に合う人はまた違う味わいがあったとは思うが、これもまた自分的には内的な難しい感情をこむずかしい理屈で説明されるのはあまり好きではなく、なんかちょっと違うかもとマイナス要素。

解説の受け売りだが、世界的に有名なニュージーランドのミステリ作家と言えば本書が受賞した賞の冠ともなっているナイオ・マーシュくらいしかいなかった(不勉強ながら存じ上げませんでした)が、このフィン・ベルが俄然注目株とのこと。
そうかそうか、国内外産問わず良質なミステリが色々と楽しめる環境にある日本にいて自分は幸せだなと思ったが、はて、そう言われてみると海外でも人気のある世界的な現役日本ミステリ作家って?と。
そもそも、翻訳されて読まれることってあるのだろうか?
海外ミステリに傾倒しぎみの自分が言うのもなんだが、もったいないなぁ。
けっこう面白い作品沢山あるけどなぁ、と全然違う方向に思考が飛んで行ってしまった。

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2023年09月03日

Posted by ブクログ

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ニュージーランドが舞台のミステリー。事故で下半身の自由を失った主人公が、26年前の未解決事件を調べ始めると命を狙われることに…。現在パートと過去パートが交互に出てくる構成だった。面白かったが、思っていたより殺される場面が多かったのでその点についてはあまり好みではなかった。

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2021年05月18日

Posted by ブクログ

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※ゲラ版先読み企画の感想を転記

ミステリというよりスリラーに近い内容で、残虐なシーンも出てくるので、読む人を選ぶ小説かもしれません…。
全体的に重苦しく、過去の事件の真相に迫っていくワクワク感は少ないです。主人公はネガティブな性格だし、最後まで読んでも爽快感はあまりありません。個人的には苦手な部類ですが、そういうのが好きな人にははまるのではないでしょうか。

一章が非常に短くまとめられているため読み進めやすかったです。反面、リーダビリティはそれほど良いとも言えず、何度読んでも理解しづらい文章がいくつもありました。特にカウンセラーのベティとの会話は漠然として捉えどころがないので尚更でした。
通常は否定文で終わる接続詞なのに肯定文で終わる、といったような文章のクセの強さは原文のせいなのか翻訳のせいなのか気になるところです。

現在と過去を行き来しながら少しずつ事件の全貌があきらかになっていくのですが、過去の語りが現在に追いついたときにクライマックスを迎えるのかと思いきや、途中から過去ばかりになり、現在に追いついても今ひとつ盛り上がらないまま真相はすべて事後に説明、というのはもったいないなと思いました。第二の真相についても「そうだったのか!」という驚きにはいたらず…。

ニュージーランドが舞台ということで、欧米との違いも楽しみの一つでした。何かが大きく違うわけではありませんが、しいて言えば人生におけるモチベーションが違うような気がしました。
タイを筆頭にいいキャラクターが揃っているので、もう少し掘り下げてほしかったです。マーダーボールも冒頭から出てきたわりにはプレイシーンがほとんどなかったのが残念です。タイがフィンに車椅子を作ってあげるシーンなんかがあってもよかったなと思いました。

個人的に印象に残っているのは、141ページの後半の下記。
「相手を悪人とみなせば、悪に立ち向かう自分は正義の味方。わかりやすく、単純なとらえ方だ。自分自身がどうあろうと関係ない、敵と立ち向かうだけでいいのだ。(中略)憎きドイツ兵が、あんなひどいやつらでよかった。あいつらが善人だったら、自分たちがやったことを悔やんで生きていかなければならないからな」
そんなに単純ではないから、生きるのは大変なんだよね、としみじみ思ったシーンです。

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2020年08月17日

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