【感想・ネタバレ】アメリカ黒人の歴史 奴隷貿易からオバマ大統領までのレビュー

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Posted by ブクログ

始まりから現代にいたるまでの歴史の概要が分かりやすく書いてあります。肌の色が違うだけでこうも世界が違うのかと驚愕しました。こう言ったことをしっかり知って、アップデートしていって過ごさないとなと思いました。また本書は歴史の流れの勉強にもなります。歴史は繰り返す、ということがよく分かります。

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2022年06月13日

Posted by ブクログ

虐待と妥協の繰り返し。黒人差別とは政治的思惑に翻弄され続けて来た歴史なのだととても良く分かった。
国と法を後ろ盾に数百年かけて築かれて来た人種差別の根深さには途方のなさを感じてしまう。

本書を読み始める際には現代ではほとんど安定した状況を得られているものと考えていたが、終盤に書かれた現在の黒人が直面している様々な問題を見て大きな喪失感を覚えた。
特に産獄複合体なんかは奴隷制そのもので、自分の生きている同じ時代、アメリカと言う大国でこのような仕組みが稼働していることに驚きを禁じ得なかったし、とても恐ろしい。

長い歴史をとても簡潔にまとめており、非常に勉強になった。
この問題について初めに手に取る本としては最良の選択だったように思う。

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2020年09月08日

Posted by ブクログ

権利の獲得と言っても、決してきれい事ではなかった。常に駆け引きと隣り合わせで、安堵と落胆を繰り返し、進歩した部分もあるが、今もその道のりは見えない。深いところからの視点、感動ものに終わらせない視点、学問的良心に裏打ちされた表現に満ちた読書であった。

・ワシントン行進の際のスピーチは事前検閲されていた。
・権力を握るためには保守化する必要があった。

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2017年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大航海時代。アフリカから奴隷として連れてこられ、プランテーションなどで働かされるようになった黒人たち。本書はそのなかでも、もっとも注目されるべき存在とも言えるアメリカ黒人のその歴史を見ていくものです。

アメリカ黒人は、その酷薄な差別と厳しい苦難の道を歩んできたがゆえに、アメリカ社会の危機をもっとも敏感に感じとった存在であり、同時にアメリカ社会の変革の最前線に常に立ってきた集団である。

奴隷制という非人道的な仕組みは、支配する側の白人にも支配される側の黒人にもその精神面に深い影響を与えることは避けられないと思います。権利も時間もなにもかもを収奪するのが奴隷制ですから、それが常態化すると(奴隷制は黒人を対象にするものに限らず古代からある悪習ではありますが)歪んだ精神性が支配者のほうにも被支配者のほうにもあらわれてくるものではないでしょうか。そして、そんな歪んだ精神性で作られていく社会は人々の歪んだ精神性を反映したものであり、その歪んだ精神性で形作られた社会がさらに歪んだ精神性を再生産したり助長したりしていくものになってしまう。

たとえば女性の地位の問題だってそうなのでしょうが、この本のテーマである人種差別のような根深い社会問題というのは、公正ではないのにまるで空気のようにありふれてしまって意識もされにくくなる「盲点化」とでも表現したくなる状態に陥ることに待ったをかけることで問題として表出するのだと思います。「本来、我慢しきれるものではないし、我慢するものでもないのだ」と気付いたりわかったりし、つよく意識していくことは真っ当です。ですが、「盲点化」(「盲点化」は「固定化」とも言えます)を望む者はたくさんいて、そこで戦いがおこる。終わらない人種差別の戦いには、収奪する側の深い欲望(利権)によるもののみならず、差別する側にとっても彼らより優位に立っていなければならないという、生存競争においての強い不安感による強迫観念がからみついているところも見えてきます。

アメリカ黒人たちは、奴隷解放や地位向上などの分節点の多くを、南北戦争や世界大戦などの戦争時下社会状況がポジティブに作用することによって迎えていました。たとえば第二次世界大戦中、敵対するナチスドイツが行っているユダヤ人排斥をアメリカが非難しても、リンチ殺人すら暗黙のうちに処理してしまうほどのアメリカ国内でのむきだしの黒人抑圧があり、それをもしもナチスドイツから指摘されて「アメリカ民主主義の欺瞞」を証明するものとして宣伝されたならば、アメリカの正義が大きく揺らいでしまう。そのために、政府が黒人に譲歩していくのです。さらに黒人側もしたたかに駆け引きをして自分たちの境遇を改善していきます。しかし、これらの前進にはかならず揺り戻しがある。南部の保守的な白人に代表される人たちの力も根強いのです。

少しずつよくなっていく様子から、状況をよくするために戦ってきたアメリカ黒人たちの一歩一歩が本書から読みとれるのですが、公民権運動の頃のキング牧師の登場にはやはりこれまでの黒人指導者を越えている感じがつよくしました。スケールといい、カリスマ性といい、能力といい、とても大きく感じられるし、実際そうだったのでしょう。彼による非暴力での活動が広まっていき、ほんとうに大きなうねりになっていく。しかし、偉大な人物ではあっても苦悩はつきなかったであろう様子がその行動の記述から読みとれます。それだけ複雑でままならない問題であり、政治的な駆け引きもあるし、その深い部分が彼にはよく見えていたのだと思います。

現代は、当時とはまた内容に大きな変化が生じている黒人差別問題と反対運動や暴動の状況があるようですが、キング牧師のような人物がでてくるときっと何かまとまるものがあるのではないかと想像してしまいました。最近の人たちにありがちな、小手先の知識でどうにか状況を打開しようというのではなくて、知識や教養を支えながら周囲にもその存在をじゅうぶんに感じさせる熱い心意気が、それがいくぶん古くさいものだったとしても有効なんじゃないか。細かい部分すべてを知っていなくても、根っこのところのベクトルがちゃんとしていて、それがちゃんと伝われば、人は動き、まとまっていくような気がするのですが、どんなものでしょうか。

本書は、公民権運動からの歴史に大きく紙幅を割き、現代の黒人差別の事情を新書という形式内でできるだけくわしく知ることができるよう、役立つ構造になっています。レーガン大統領からはじまった新自由主義とそれによる大企業優遇や福祉の縮小などの記述もありますし、そういった流れで骨抜きにされ形骸化されていく法律があることも教えてくれます。これらは今の日本に置き換えてみて気付けるところもあるでしょう。また、会議をしてそれから放置する、という行政にありがちな体質が書いてありましたが、これだって日本の行政にもぴったりあてはあまる部分があります。手に負えないケースは体よく放置しますよ、日本の行政も。

といったところで書き尽くせない、ページ数のわりにボリューム感のある濃密な中身でした。怒りと憤りを感じながら学ぶ読書です。と同時に、あまりのひどさにメンタルを削られながらにもなりました。人類学者・レヴィ=ストロースが、「この世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」みたいなことを言っていますが、本書にある数々のクソッタレな行いの記述から知るにつけ、そういうクソッタレなためだからなのかなぁ、と「はあぁ……」と息が漏れ出もしました。でも、知ってよかった、読んでよかった、と思えます。世界について、また少し、わかるためのとっかかりが増えたような気がしています。

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2020年12月22日

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なぜ今でもアメリカでは黒人が差別的な扱いを受けているのか、大変よく理解できた。差別の根深さを理解しておかないとアメリカを理解できないのではと強く感じた

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2020年11月28日

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なんとなくしか知らなかった白人と黒人の関係を歴史を追って見ることで、やっと今の状況を理解することができた。偏見は深く深く根付いてしまってるし対立は今でも続いているが、黄色人種だからこそできることはないかしっかり熟考したい問題。

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2020年08月09日

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本著はアメリカ黒人の歴史に関してエッセンス、歴史的事実が網羅的に整理されおり大変参考になり、NYに来て、より身近に感じる問題といいながらも、過去の歴史について知らなかったことが多々あった。
オバマ大統領が登場して7年もの歳月が経るが、未だに人種差別の問題がこの国の大きな社会問題になっている。
本著を読んで、この社会問題の根の深さを改めて知ると共に、やはり歴史を知らないで現在の問題を判断することはできないことを再認識した。
ちょうど、今日はキング牧師の功績を祝う祭日であるが、アメリカの歴史を知る上で避けて通れない公民権運動、また、彼自身のことについても、もっと学ぶ必要があると感じている。

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2016年01月19日

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評価すべきはキング牧師以後、
すなわち公民権運動以後に1/3近くのページを割いていることであろう。
他書では割と公民権運動以後の記載が薄い。

それはまだこの時代のことを歴史として俯瞰されていないとも言える。
その様な中で70年以降のアメリカ黒人の歴史についての考察は
非常に興味深く読める。

また、様々な人種差別是正政策の裏に、
政治的意図がどのように働いていたのか、
公民権運動以降の黒人の中での多様化についても知る所が多かった。
彼らのアイデンティティはどのように変わっていくのだろうか。

そしてこれは他人事ではない。
国内での人種の多様化が進もうとしている今、
そこに至るまでのバックグラウンドは米国と違えど、
彼らと同じような課題を我々は持つことになるのではないだろうか。

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2014年06月21日

Posted by ブクログ

アメリカ史を黒人にスポットを当てて説明する一冊。
内容は非常にスッキリとまとめられており、読みやすくわかりやすい。
後書きでも触れられているとおり公民権運動以後の内容が
特におもしろく、産獄複合体に関する話題や、
監獄を農村部に作ることによる農村部のメリットなど
現代のアメリカが抱える問題に歴史の文脈の中で知ることができた。
ひとつひとつの話題に対する掘り下げが薄いのは
新書である以上仕方ないところか。

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2013年05月17日

Posted by ブクログ

 岩波新書の『アメリカ黒人の歴史』の内容を、「その後の時代状況の変化を踏まえ、また、この間のアメリカ史研究の蓄積に基づいて、書き直すことを目指したもの」(p.213)。読み比べると「この間にいかに歴史認識が変化・発展したかを知」(p.215)ることができるらしい。具体的には岩波新書の方は公民権法が成立してキング牧師が殺されて、というところでほとんどが終わり、20ページ程が90年代の黒人の貧困について、ということだったが、本書では4分の1程度が公民権以後の話になっている。
 でも岩波新書の方を読んだのがだいぶん昔なので、読み比べというのができずに残念。結局、人間平等、とかいう思想はどうでも良くて、政治家の票取りゲームなんだなあということがよく分かる。ブラウン判決が現在では「骨抜き」にされている、というのがちょっと驚いた。現在の状況については、黒人で刑務所があふれかえっているということについての歴史というよりは社会学的な分析になっている。(14/05/06)

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2014年05月06日

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