あらすじ
デビュー小説『風の歌を聴け』新人賞受賞の言葉、伝説のエルサレム賞スピーチ「壁と卵」(日本語全文)、人物論や小説論、心にしみる音楽や人生の話……多岐にわたる文章のすべてに著者書下ろしの序文を付したファン必読の69編! お蔵入りの超短篇小説や結婚式のメッセージはじめ、未収録・未発表の文章が満載。素顔の村上春樹を語る安西水丸・和田誠の愉しい解説対談と挿画付。
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Posted by ブクログ
数ページずつの、なんというか、「雑文集」であった。様々なことを考えておられる人なのだなあということを、改めて感じた本であった。1年くらいして、また読んでみようと思う。
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もー、いちいち良い人が滲み出すぎてるんだよなぁ、村上さん!
皮肉とユーモアと世辞の割合が絶妙にうまくて、読んでいても暖かい気持ちになる。
村上春樹が語る安西水丸にも、安西水丸が語る村上春樹にも、友情を感じるとは和田誠さん談。
良い小説家とはどうあるべきか、という考え方についても、またお洒落な表現で、そして納得できる。
この世界の構造のようなものを、村上春樹というフィルターを通して、現代の最新版を見られるということに感謝。
安西水丸さんも和田誠さんも他界してしまったので。
Posted by ブクログ
世の中に「ラム入りコーヒー」というものが存在する、ということを知れただけで、本書を読む価値があった。「ラム酒とコーヒーを混ぜるとは、なんて斬新!これは美味しいにきまっとる!」と思い、早速、小瓶のラム酒を買って作ってみた。なかなかおいしいのだが、我流なので改善の余地は大いにある。ラム入りコーヒーのあるカフェに行って、お店の味を確かめたい今日この頃である。(本の感想ではなく、コーヒーの感想になってしまった…)
Posted by ブクログ
村上春樹氏が普段の長編小説で表現していること、そうでもないこと、作中にあるように福袋を開けるような気持ちで楽しむことができた。「自己について」をはじめ、過去作と関連する手法が登場する場面は読んでいて思わずニヤリとしてしまう。音楽についての記述は曲や演奏者を知っていればさらに楽しめていたかな。名文が何でもないことのようにさらさらと登場するので、出来ることなら鉛筆でマークを入れながら読み進めたい一冊。
Posted by ブクログ
小説の書き方、ジャズの聴き方、好きな小説家の事、村上春樹という人の胸の内が見える気がする(もちろん全部ではないだろうけど)。おかげで、ジャズももっと聴きたくなったし、読みたい本も増えた。
またその後の雑文集も出して欲しいなぁ。
Posted by ブクログ
村上春樹の小説は一冊、それも数十ページで断念してしまったけれど、彼の書く雑文は面白い。ところどころ、秀逸な表現があって、頑張って小説読んでみようかなという気にさえなった。
彼なりの言葉・単語の説明や解釈が読める部分は特に、勉強になる。やっぱりスゴイ人なんですねー、ハルキは…
Posted by ブクログ
村上春樹のエッセイというかこの本に収められているようなちょっとした文章ってなんでこんなにも読んでいて「しっくり」くるんだろう。
テーマの重さ軽さに関わらず、本文中の表現を借りるならレッドヘリングを書き連ねていく。読んでいる方はどうしてもかわされた気分になるかもしれない。でも、よくよく読んでみるとそういうレッドヘリングにこそ村上春樹の思索の本質的な部分が現れていることが往々にしてある。
自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)とかその典型な気がする。他にもジャックロンドンの入れ歯、自分の物語と自分の文体などなど。
ねじまき鳥、世界の終わり、ノルウェイの森他多数の長編小説で小説の形として読者に提示してきたテーマを再確認できる。答え合わせというと小説の持つ解釈の多面性を否定することになるかもしれないがともかく、一貫した思想が長編にも短編にもエッセイにも現れているのを見るとファンとしてはどうしても嬉しくなってしまう。
本書を手に取ったきっかけは中学校の国語の授業で先生が壁と卵のスピーチを教材として使っていたのを思い出したからだけど今になって読み返してもその意味するところなんて十全にわかるわけがない。これを中学二年生に理解しろと言うのもなかなか酷な話だ。
Posted by ブクログ
短い未発表のエッセイや受賞時のスピーチ原稿、他国で翻訳された自作品の前書き等、ひと味違った村上文章が読める本。
本当に多岐にわたる文章なので飽きがこないです。軽くつまめる酒の肴的な。
小説よりもよりドライに、しかし書く対象に優しく寄り添う文章は村上春樹さんならではですね。
ラストの安西水丸さんと和田誠さんの対談読んでちょっとほろりとしました。こんなに村上春樹さんのことを楽しく褒めてる人がもういないのは寂しいです。
Posted by ブクログ
"僕の小説が語ろうとしていることは、ある程度簡単に要約できると思います。それは「あらゆる人間はこの生涯において何かひとつ、大事なものを探し求めているが、それを見つけることのできる人は多くない。そしてもし運良くそれが見つかったとしても、実際に見つけられたものは、多くの場合致命的に損なわれてしまっている。にもかかわらず、我々はそれを探し求め続けなければのらない。そうしなければ生きている意味そのものがなくなってしまうから」ということです。"
【雑文集/村上春樹】新潮文庫 p477
誰もが意識的に、あるいは無意識のうちに「生涯において何かひとつ、大事なもの」を求めているとしたら、ある種の人にとってのそれは「自分」、あるいは「自分を映しだすかけら」なんじゃないのだろうか。
仏教の説話で、王とその妃が交わす会話が好きだ。
一番愛おしいいものは何かと問われた妃は、ためらうことなく「自分自身が一番愛おしい」と答えるんだよね。王は、自分もそうだと微笑み合った後、二人で仲良く仏陀にその話を報告しにいく……というやつ。
いい話だなあと、にこにこしちゃう。
人間、自分で自分をごまかしちゃ、いけない。
こうあるべきとか、こういうものという無意識の刷り込みのせいでやっちゃったりもするけれど、そんな思い込みをひとつひとつ外していくと、世界は驚くほどに変わっていく。
一部を引用したこのメッセージは、2001年8月、中国の読者にあててが書かれたもの。
1999年の『スプートニクの恋人』、2000年の『神の子どもたちはみな踊る』と2002年の『海辺のカフカ』の間の頃。
わたしは時々、村上春樹をまとめて読み返す。
かつては、際限なく喪い続ける物語のように読んでいたのだけれども、最近は最悪のところを通り抜け、帰ってくる話として読めるようになった。
求めていたものは、致命的に損なわれてしまっているのかもしれない。でも、それを見いだすということは、少なくとも探索の終わりと新たなフェーズの始まりを意味している。
彼の物語は、歳を重ねるごとに、さらに深く進んではより明るいところに戻ってくるようになっている。致命的に損なわれたかのように見えた求めていたものは、新たな命を吹き込まれ蘇る。
少しづつ、そんな変化があるように思えている。
Posted by ブクログ
雑誌への寄稿やライナーノーツ、スピーチなどの村上春樹が書いた「雑文」をまとめたもの。
2015年のノーベル賞の発表の前後に文庫化されて、平積みされて買ったものの、そのまま積読。
年始の日経に春樹がチャンドラーに関する文章を書いているのを見て発掘。
短い文章が並んでいるので、カバンの中にいれて、すき間時間で読んでいました。前後の流れなんて気にする必要ないし。
短い文章でも、しっかりと、ハルキを感じさせるのはさすが。
Posted by ブクログ
読み終わるまでに時間がかかりました。途中で読まなければならないものが出来たせいもあるけど。本の中に出てくる音楽や文学のことを調べたり、前に戻って読み直したり。しっかり全文読んだよ!と言う感じです。これはまた何年か経って読み直しする本になりそうです。
Posted by ブクログ
ファン向けの文庫です。経年変化の備忘メモ的、あるいは色んな春樹ワールドの断片を切り取ったエッセイ集ですから、目新しい話はないんだけれど、気楽にパラパラ読めるライトな安心感がGood。村上春樹をある程度読み込んだ方向けかな?
Posted by ブクログ
94冊目『村上春樹 雑文集』(村上春樹 著、2015年11月、新潮社)
小説家デビュー時から近年まで、村上春樹が書いたエッセイや超短編小説、文学賞受賞時の挨拶など、単行本未収録の雑多な文章を一つ所に纏めて収録したもの。
ものすごくマニアックな内容で、村上春樹のコアなファンに向けられたものではあるのだが、一つ一つの雑文は短いながらも読み応えがあり退屈しない。
巻末には安西水丸×和田誠の対談が収録。
〈もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます〉
Posted by ブクログ
村上作品をそうたくさん読んでいるわけではないけれど、この本の文章も含め、村上さんの書かれる文章を読むと、なぜかすっと背筋を伸ばしたくなる、
ソファにだらしなく座っていては、村上作品を読めない気がする。
その文章から感じられるリズムは、決して派手ではないけれど、タメの効いたハイハットとうねりを感じるスネア。
最近の作品はまったく読めていないけど、このリズムは健在なのかな。
Posted by ブクログ
「村上春樹」の雑多な作品を収録した『村上春樹 雑文集』を読みました。
「村上春樹」作品は1年ちょっと前に読んだエッセイ集『やがて哀しき外国語』以来ですね。
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1979-2010 未収録の作品、未発表の文章から著者自身がセレクトした69篇。
デビュー作「風の歌を聴け」受賞の言葉。
エルサレム賞スピーチ「壁と卵」。
『海辺のカフカ』中国語版に書いた序文。
ジャズ、友人、小説について。
そして二つの未発表超短編小説。
「1995年」の考察、結婚式のお祝いメッセージ。
イラスト・解説対談=「和田誠」・「安西水丸」
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肩の力を抜いて気軽に読める作品はないかな… と思いながら書棚を探して選んだ一冊、、、
ちょっとひねくれた視点でリズム良く綴られる「村上春樹」の文章(本作品に収録されているのはエッセイだけではないので"文章"って表現にしました)が、好きなんですよねえ。
■前書き――どこまでも雑多な心持ち
■序文・解説など
・自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)
・同じ空気を吸っているんだな、ということ
・僕らが生きている困った世界
・安西水丸はあなたを見ている
■あいさつ・メッセージなど
・「四十歳になれば」
――群像新人文学賞・受賞の言葉
・「先はまだ長いので」
――野間文芸新人賞・受賞の言葉
・「ぜんぜん忘れてていい」
――谷崎賞をとったころ
・「不思議であって、不思議でもない」
――朝日賞・受賞のあいさつ
・「今になって突然というか」
――早稲田大学坪内逍遥大賞・受賞のあいさつ
・「まだまわりにたくさんあるはず」
――毎日出版文化賞・受賞のあいさつ
・「枝葉が激しく揺れようと」
――新風賞・受賞のあいさつ
・自分の内側の未知の場所を探索できた
・ドーナッツをかじりながら
・いいときにはとてもいい
・「壁と卵」
――エルサレム賞・受賞のあいさつ
■音楽について
・余白のある音楽は聴き飽きない
・ジム・モリソンのソウル・キッチン
・ノルウェイの木を見て森を見ず
・日本人にジャズは理解できているんだろうか
・ビル・クロウとの会話
・ニューヨークの秋
・みんなが海をもてたなら
・煙が目にしみたりして
・ひたむきなピアニスト
・言い出しかねて
・ノーホェア・マン(どこにもいけない人)
・ビリー・ホリデイの話
■『アンダーグラウンド』をめぐって
・東京の地下のブラック・マジック
・共生を求める人々、求めない人々
・血肉のある言葉を求めて
■翻訳すること、翻訳されること
・翻訳することと、翻訳されること
・僕の中の『キャッチャー』
・準古典小説としての『ロング・グッドバイ』
・へら鹿(ムース)を追って
・スティーヴン・キングの絶望と愛――良質の恐怖表現
・ティム・オブライエンがプリンストン大学に来た日のこと
・バッハとオースターの効用
・グレイス・ペイリーの中毒的「歯ごたえ」
・レイモンド・カーヴァーの世界
・スコット・フィッツジェラルド――ジャズ・エイジの旗手
・小説より面白い?
・たった一度の出会いが残してくれたもの
・器量のある小説
・カズオ・イシグロのような同時代作家を持つこと
・翻訳の神様
■人物について
・安西水丸は褒めるしかない
・動物園のツウ
・都築響一的世界のなりたち
・蒐集する目と、説得する言葉
・チップ・キッドの仕事
・「河合先生」と「河合隼雄」
■目にしたこと、心に思ったこと
・デイヴ・ヒルトンのシーズン
・正しいアイロンのかけ方
・にしんの話
・ジャック・ロンドンの入れ歯
・風のことを考えよう
・TONY TAKITANIのためのコメント
・違う響きを求めて
■質問とその回答
・うまく歳をとるのはむずかしい
・ポスト・コミュニズムの世界からの質問
■短いフィクション――『夜のくもざる』アウトテイク
・愛なき世界
・柄谷行人
・茂みの中の野ネズミ
■小説を書くということ
・柔らかな魂
・遠くまで旅する部屋
・自分の物語と、自分の文体
・温かみを醸し出す小説を
・凍った海と斧
・物語の善きサイクル
■解説対談 安西水丸×和田 誠
■文庫版のためのあとがき 村上春樹
全体的に愉しめましたが… その中でも、音楽に関する文章は特に面白く読めましたね、、、
「ホレス・シルヴァー」、「セロニアス・モンク」、「マイルス・デイヴィス」、「アート・ブレイキー」等々、久しぶりにジャズが聴きたくなりましたね… しかも、できればCDやスマホじゃなくてLPレコードで、LPレコードの持つ、あの独特の雰囲気を久しぶりに味わいたくなりました。
もちろん、ロック/ポップスも大好きなので、「ザ・ビーチ・ボーイズ」、「ザ・ビートルズ」、「ジム・モリソン(ドアーズ)」、「ボブ・ディラン」等々も聴きたくなりました… そもそも、最近、ゆっくり音楽を愉しむことができていないよなぁ、、、
あと、久しぶりに「スティーヴン・キング」の作品も読みたくなりました… 共感できることや、音楽や書籍について再発見することもあり、愉しめる一冊でした。
Posted by ブクログ
村上春樹さんのエッセイって、引っかかりなくサラサラ読める…が良い方向に作用してて好んで読んでしまいます。
こちらはエッセイだけでなく、祝電や受賞の挨拶、インタビューなども収められていて楽しかった。
「ビリー・ホリデイの話」は物悲しい煌めきが素敵でした。エルサレム賞のスピーチはこれは伝説になるでしょうねと思ったし、スティーヴン・キング評が嬉しいです。「彼の考える恐怖の質は『絶望』」。
あとやっぱり「アンダーグラウンド」関連もの凄い。オウム真理教を始め、カルトにはまる人たちの心理を的確に掴んでると思うのは村上春樹さんだけな気がしています。最近の旧統一教会関連のニュースでもカルトにはまる心理とは…みたいなの目にするけれど、村上さんのこれらほどはどれもしっくりこない。「彼らの信奉する「教義(=物語)」にわれわれの「物語」が勝てない」みたいなのは、作家さんみたいなクリエイターはもちろん、宗教にはまる人たちを連れ戻せないこちら側の事でもありました。カルトは失くならないからなぁ、宗教以外でも。「アンダーグラウンド」を読んだときも似たようなこと思ってる気がします。
小説は未だに「世界の終わり」が唯一好きなのだけれど、エッセイと翻訳は良いと思っています。声はプラチナ、字はカリントウ…確かに美声ですよね。
ラストの対談、もう安西水丸さんも和田誠さんも居ないんだ…と思ってかなり悲しくなりました。和気あいあいと話されてるのが余計に。
Posted by ブクログ
エッセイ2作目。前回よりも長めの文章が多かったので、中身も面白いものが多かった。ジャンルも様々で興味のない分野もあったが、自分の視野を広げることができるので読む意味はあると思う。「壁と卵」など時間を置いて再読したい文章もあった。またエッセイを読んでみたい。違う作者も違う視点から物事を見られるという意味でアリかもしれない。
Posted by ブクログ
村上春樹の音楽の話を聞くと、話題に上がっている音楽が聴きたくなるし、読んでいると1対1で話している感覚になってすごく気持ちが安らぐ。
こういった雑文みたいなのも僕には性に合ってるんだなと思った。
たぶんだけど。
Posted by ブクログ
村上春樹氏の、これまでの国内外でのインタビューや雑誌に寄稿した前書き的な文章、結婚式に送った電報や賞受賞時のスピーチ原稿など、さまざまなシチュエーションにおける彼の文章を楽しめる一冊。エッセイとは違い、小説とも違う、新しいタイプの本。これらの文章を読み進めるうちに、彼の小説のスタイルの大枠が見えてくる。現実と、非現実との狭間。世界の果てと、生と死。
個人的にやはり刺さるのは、「アンダーグラウンド」「約束された場所で」を軸にした地下鉄サリン事件やオウム真理教に関する記述。そして、彼の見解がとても興味深い。
Posted by ブクログ
どんな作家さんでもこの手の細々とした文書があるでだろうが、村上春樹ともなればこんな雑文集でも本になるし売れるだろう。けど、読んでみて村上春樹のことがより身近になったし、いろいろな文体で飽きることなく読める。
昔から本を大量に読み、ジャズ喫茶を経営するほどジャズが大好きで、安西水丸と和田誠を友人に持ち、翻訳家の仕事は半ば趣味のようにこなし、海外での生活歴が多いといったことがわかる、ファンには充実の内容です。
エルサレム賞でのスピーチ原稿はとても練られた素直とも言える過激な内容で印象に残ります。
レイモンドカヴァー、チャンドラー、フィッツジェラルドなどの作品群への熱い語りも好きです。それら翻訳した本を読みたくなりました。
お二人の友人も今や亡き人となり、村上春樹も70歳超え。同じ時間を生きる幸運を活かし、作者の本に触れていきたいと思います。
Posted by ブクログ
オイラにとっての村上春樹は誠実な仕事をする、ストイックなスポーツマンだ。小説を書くということは、体力がいるのだ。たぶん、サラリーマンも一緒だと思う。現場だろうがデスクワークだろうが。物理的に体力が必要というだけではなく、仕事にはいろいろなトラブル、苦難があるしそれを乗り越えていくには強いメンタルが必要だし、それを維持するためにカラダの臨戦態勢を保つという意味だと思う。「アンダーグラウンド」や「約束された場所で」を読んだときに感じたことだ。インタビューの内容はきっとヘビィなものだったろうし、誰に対しても背筋を伸ばしたしっかりした姿勢ができなければ、加害者と被害者の本当の声は拾えなかったんじゃないかな。だからあの二冊には村上春樹の個人的な意見や偏見はなくて事実を事実としてオイラたちに届けてくれたんだと思う。
それからオイラがちょっと不満に思っていた結論のない小説の終わり方についてはこれを読んで少しスッキリした。確かに読み手は何らかの結論を出してくれたほうが楽だし、文句も言いやすい。でもそうするとオイラは考えることをしなくなるし、そもそも読者と分かち合うことを望む村上春樹の求めるところじゃないんだよね。村上春樹は読者に愛をもってくれてるんだなぁ。
安西水丸氏も和田誠氏もいなくなちゃったこれから、装幀はどんなふうになるのかな?
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「小説家とは何か、と質問されたとき、僕はだいたいいつもこう答えることにしている。『小説家とは、多くを観察し、わずかしか判断を下さないことを生業とする人間です』と。
なぜ小説家は多くを観察しなくてはならないのか?多くの正しい観察のないところに多くの正しい描写はありえないからだ——たとえ奄美の黒兎の観察を通してボウリング・ボールの描写をすることになるとしても。なぜ小説家はわずかしか判断を下さないのか?最終的な判断を下すのは常に読者であって、作者ではないからだ。小説家の役割は、下すべき判断をもっとも魅力的なかたちにして読者にそっと(べつに暴力的にでもいいのだけど)手渡すことにある。」
Posted by ブクログ
感銘を受ける文章がいくつもありますが、もし今、ひとつ選ぶとしたら『自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)』です。
「自分自身について原稿用紙四枚以内で説明しなさい」
面接などで問われがちだけれど、満足に答えられたことがない。
村上春樹ならどんな素敵な回答をするのだろうと期待するのだけれど、いきなり「牡蠣フライについて語ろう」と話をすり替えられてしまう。
好きなものを語ると、それとの距離感や捉え方などから、自然と自分が表現されるということらしい。
言われてみると「なるほど」と納得してしまう。
問いに対してまっすぐに太刀打ちできない場合に、これほど大きくアプローチを変え、まっすぐよりもより上手く答えを出せるのが、小説家なのだなと感心しました。
Posted by ブクログ
堅苦しい村上春樹
受賞時のメッセージを読む。すると、村上自身はユーモアと思ってさうでも、言はれた側はたまったもんぢゃないよな。といふのがありさうだと気づく。早稲田にまじめに通ってないとか。坪内逍遥って読んでないとか。って。まあいいけど。
Posted by ブクログ
再読
小説の方は残念ながら卒業したのだが、エッセイは相変わらず好きである
なぜだろうか
ちょいと分析してみることに
・独創的
・思考力が深い とことん考え抜く
・マイノリティを誇りに突き進む 周りなんて気にしない
・自分自身の世界が豊か 幸せオーラがある
・もちろんユーモアがある
・闇が見え隠れする精神が健全な肉体でしっかり相殺されている
私自身もマニアックなことが好き、人と違うことに夢中になる、一人で深堀する…
そして一人っ子である
若い頃は共感できる人間がちっとも周りにおらず、なかなか辛いことも多かった
そんな時結構救われたのである
もはや今となっては辛いどころか誇らしくもあるのですが(笑)
というわけで共感することが多いのです
そして気取ってなくて居心地が良い
気合いを入れず読める
(春樹流にいうとパスタを箸で食べちゃう感じ?)
そしてこの雑文集であるが今までのエッセイに比べると一つ一つがちょっと長い
そのためいつもよりちょっと気合がいる(笑)
名前の如くテーマは様々で、あいさつ、スピーチから大好きな音楽について、「アンダーグランド」にまつわる話、翻訳について、人物について、質問コーナーなどなど
雑多ながら方向性が多様で面白い
ちょこちょこと隙間時間に楽しめた
Posted by ブクログ
卵には殻がある
殻は壊れやすい壁であるが
じつは卵の中身を守っているシステムなんだ
このように、壁はどこにでもあるものだが
問題は概念の壁である
概念は存在しない形で存在する空気のようなものでありながら
しかし確実に存在し、そこにぶつかった卵を壊す
概念の壁を壊すことはできない
なぜならそれは卵たちの欲望が作り上げるものだから
すべての卵が壊れるまで、概念の壁も壊れることはないだろう
卵がひよこになったとて同じこと
概念は形を変えながら、ますます強化される一方だ
まさに「愛なき世界」
こうなっちゃ我々はもう
ハード・ボイルド・エッグにでもなるしかないね
Posted by ブクログ
いろんなところでの挨拶やら寄稿文やら祝電やら序文やら。
あまりにすべてが村上春樹で、久々だったので最初はペースが掴めなかった。
ジャズはさっぱり分からないのだけど、ものすごく愛情をこめて書いているのは伝わってくる(あの調子なので押し付けがましくはない)ので、挙げられた曲や作家の作品は手に取ってみたくなる。