あらすじ
「おれの子じゃない。知らない」ハルエの妊娠報告に夫のタケシは言い放った――。優しい両親、きょうだいに囲まれて、楽しい幼少期を過ごしたハルエだったが、金にうるさく自分勝手、超細かい性格の夫との結婚生活は、びっくりすることだらけだった。子供たちが成長し、念願の離婚をしたところでハルエの中で何かがはじけた。娘、妻、母、そして老人となっていく女の一生をおおらかに描く。
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Posted by ブクログ
大好きな群ようこの本。
着物のエッセイで群さんのお母様がトンデモ母さんというのは知っており、小説というよりほぼ事実なのだろうと知っているので、なかなか手出しできなかったのだが遂に読んだ。
お母様が幼少の頃から娘時代を経て、結婚してしばらくは、おっとりした、あまり物事を深く考えないがどこにでも良そうな善良な女性。
それが、突如変わるのだからビックリだ。
その場面は娘(=著者)の交友関係に口出しした際の「雑魚」という言葉。
仮にそう思っていたとしても、絶対に口に出してはいけないし、口を出すならオブラートに包むべきだろう。
あまりにも著者が衝撃を受け、今でも許していないから書かれたエピソードなのだと推測するが、この瞬間、突如として人格が変わったのでは?と思うほどお母様の善良さはなくなり、非常識なオバサンが登場する。
読み進めると、自分の祖母を思い出す。
つい先日亡くなったばかりの私の祖母は昭和3年生まれなので、著者のお母様とほぼ同世代。
東京生まれ東京育ち、幼少期は裕福だったらしい。
やはり娘時代はおっとりしており、結婚相手(つまり私の祖父)に失敗。
祖父の外見にポーッとなったなったという点も、結婚後「2度目の結婚」とバラされて泣いた点も一緒なので、あまり珍しい話ではないのかもしれない。
かなり結婚生活に苦労したらしいけれど、私が物心ついた時には頭にスカーフを巻き車を乗り回し、着物・毛皮のコート・宝石と着道楽を極め、それ専用の部屋もわざわざ買っていたパワフルおばあちゃんだった。
そして、群さんのお母様同様、どんどん買い集めるのだが管理は杜撰で、すてきな着物もカビやら変色やらが多かった…残念…
性格も「自分は正しい、周りがおかしい」という感じで、周囲をただ唖然とさせる感じ…
でも、私の知らない苦労をたくさんして、自分の稼いだお金で買い集めていたのだから娘にたかるのとは全然違うけれども。
それでもあまりにも似ているところが多くて、読んでいるとドキドキしてしまう点が多かった。
おっとり善良な人間も、環境で変わってしまうのだなと悲しくなってしまった。
お母様に振り回され、迷惑をかけられ、決して仲の良い親子関係ではなかったのだと思うけれど、群さんもそれが分かっているだけに完全に突き放すこともなかったのだなと思った。
群さんは、淡々としている大人の女性という印象が強いのだけど、実際もそうなのだろうけど、情が深い。
何かまだまだ書きたいけども、ゴチャゴチャの気持ちになってきたのでここまで。
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著者の他のエッセイでは豪放磊落な母というイメージがあった。本書は、その母を主役にしたエッセイかと思って読み始めたが、なんだか雰囲気が違う。限りなくドキュメンタリーに近い私小説だと感じた。厳しい戦前戦後を生き抜いた母・ハルエだが、結婚相手は無茶苦茶な芸術家。我慢に我慢を重ねた結婚生活の末の離婚を経て、わがままな母に育ってしまった。こんな母に同情半分嫌悪半分。そう言えば、エッセイによく出てくる猫やら鳥やらの動物が出てこなかったな〜
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ハルエの若い頃は、苦労もあり、波乱もあり、応援する気持ちで読んだ。老年になってからは、群さんのエッセイを読んでいるようだった。駄目な男を書いたら定評があると解説にあったが、その通りで、笑えた。面白かった。
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読んでいて、ハルエの夫に対して怒りがこみ上げ、自由奔放すぎる娘に苛立ち、母親であるハルエに感情移入していた。だが、老いていくにつれ、傍若無人な振る舞いになるハルエが許せなくなる。最初から最後まて不快感抜きには読めない。でも読むのが止まらない。本人が楽しく人生を終えるなら、実の娘としてはそれでもいいかと、開き直れる。しかし、これが姑だとそうもいってられないけど。
Posted by ブクログ
人の一生を描いた物語は、放物線グラフを描いている気がする。
上向きの時期があり、短い頂点を迎え、下降線をたどる。
自分が下降線をたどっている事に気づかない、あるいは認められない人間の感情が、「切ない」「気の毒」「往生際が悪い」「みっともない」と感じさせるドラマになる。
ハルエの生涯もそうだ。
昭和ひとケタ生まれの女の一生。
たくさんの兄弟の中で、与えられた役割を果たす。
弟や妹の面倒を見て、一生懸命働いて家計も助ける。
やがて縁あって嫁いで行けば、自己主張する事も許されず、理不尽だと思う事があっても、夫に尽くさなければならない。
読みながら、同情する。
頑張れ、頑張れ、と応援する。
そうだ、そんな男とは離婚してやれ、あんたの頑張りがあれば一人で生きていける。
この辺りまでが、上向きグラフである。
グラフはやがて急降下を始める。
頑張って稼ぎ、少ない生活費でやりくりしてきた反動なのか、ハルエは驚くべき浪費家に転じるのである。
しかも、その支払いは自分の稼ぎではない。
娘が打ち出の小づちであると勘違いしている彼女は、どんなに叱られても、理を持って諭されても、「欲しい」という欲求を抑えられない。
抑えようという気持ちもさらさら起きない。
応援しながら読んできた気持ちは憎しみにさえ変わる。
読み手の同情は、ハルエではなく、娘のアカネに向かうようになる。
やがて、彼女は老いて、病も得、周りは彼女に『常識』を要求する事も諦める。
壊れて大きな音を出し続けるスピーカーのようだ。
これも、多くの部分実話だと思うと、本当に驚くべきことだ。
家族の関係、母というもの、母と娘、老いというもの…考えさせられる。
やるせない。
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ここで終わり!?と、こんなストーリーがあるのか…という気持ち。そして解説を読んだら、ハルエは著者の母を描いたものと知りびっくり。
娘時代のハルエと、結婚してしばらくしてからのハルエの印象が大きく違った。タケシの理不尽さに一生懸命耐えている間に、信じるものが自分しか無くなって人に対する思いやりがなくなってしまったのだろうか。アカネに対する酷い言葉には、娘時代の真面目で家族思いのハルエとは全然違う人間になってしまった気がした。
そしてこんなにも酷いことをされて何度も縁を切ると言っていたアカネが、実際には全然そうせず金銭的な面倒も見続けていることにもびっくり。
女としての一生をなんとなく考えてしまうようなストーリーだった。
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著者の作品には小説とエッセイがあるようでこちらは小説であるものの自叙伝的のようで著者の『母のはなし』のようだ。娘から老女になるまでの一生が描かれている。ハルエさんの一生を一緒に過ごしてきたような時代が流れていくさまを感じることができた。波瀾万丈な彼女が老女となり幸福な日々を過ごしていることが想像できる最後で読後感はよかった。
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母親になったあたりからイライラするシーンが多かったけど、子ども時代から描かれていることによって、そういう大人にも色々あって今があるんだなと思えたから面白かった。
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母の一生を描いた物語。
戦前、7人兄弟の4番目に生まれ、父を亡くしたりしたが、兄弟に助けられながらも大きくなった。また、洋裁の腕を発揮しながら家計を助けりもした。
そんな母が結婚したのが画家である父だったが、急な見合い結婚でもあり、性格を知らないまま一緒になったが、とても苦労させられる人であった。
そんな夫に苦労させられたが、子供が成人すると離婚した。
そして、今度は自分が子供に面倒を掛けることになるが、そうなると全く自覚がない。
母と子供の関係の難しさが、淡々と描かれている。自分にも当てはめながら、読んだ。
2016.12.30
Posted by ブクログ
昭和初期に産まれた女性の一生が淡々と綴られたお話。ちょうど祖母と同じくらいの時代を生きているので、色々祖母の人生とも重ねながら読めて面白かった。娘時代から結婚生活にかけては時代の流れが目まぐるしく変わる中どんな理不尽な環境にもめげず、生活を乗り切る姿がすごいと思った。きっとこれからを生きる私たち世代には耐えられないような環境をあの頃の女性たちはみんな受け入れ乗り越えてきてるんだから、本当にすごいと思う。後半、子の独立、定年を機に暴走していく姿は見ていて辛かったが、これまでの人生を鑑みるとどこかで弾けないと人はやってけないのかなと考えさせられた。群さんのお母様のお話らしいけど、また近況や群さんの心情を知りたいなと思った。
Posted by ブクログ
著者のお母様の半生かと思われます。
「ひたすら不快だった」という書評も見られて、私も最後のほうはだいぶイライラしたものの、全般を通しては形は違えど母娘のよくある確執話で、多少のフィクションは加えてあるかもしれないけれど、ここまで母親のことを知っているという関係性もまた見逃せないのではないかなぁと感心した。
まわりを見てみても、人って歳を経るごとに他人に物事に自分のモノサシを押し付ける傾向があるというか、話を聞かない、頑固、になっていくような気がする。それは一筋縄ではいかない人生をそこまで生き抜いてきた自信から芽生えるものなのかもしれないし、生暖かく見守ろう…と思う反面イラッとしてしまうこともあるんだけど^^;
Posted by ブクログ
母ハルエの生涯
父のコネで入った市役所ではお茶汲みや、小間使いのような仕事で、同僚はダラダラした仕事ぶり。その後、お見合い結婚をするが、よくもこんな旦那で耐えられたな!ってくらい酷い夫。。
いつか離婚してやると思いながら、子どもたちを育てあげる。
長年の鬱憤が爆発したのか、娘のお金で高額な着物を買いまくり、贅沢三昧。
ほっこりしたよい話でもないけど、読み進めてしまいました。
仕事も結婚も自分で選べない時代。
苦労をさせられた、我慢してきたと、させられた、誰かのせいでこうなったと、原因を他者に向けていると、その負の気持ちは意地汚い欲望になるもんなのだなぁと、思った。
昔の結婚ってこんな不条理な形で、全く健全ではない家庭もたくさんあっただろうなー。
Posted by ブクログ
母と娘の関係の難しくも楽しいところ、家族のもめ事、それもまとめて進んでいくリアリティがあって、わかるわかると思うところあり。時代設定を超えて。
#bookoff