あらすじ
生殖補助医療、ゲノム編集、安楽死……。医療の発展で大きな変化が生じている生老病死のあり方。生命倫理・科学論の第一人者が、考えるヒントから政策立案までを提言。
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Posted by ブクログ
脳死は人の死か否か、昔は考えなくてもいいことだった。
正解はない。いろいろな価値観が絡む。
体外受精の実用化で、命の始まりはいつか、が問題になる。
ES細胞は、体外受精胚を壊して作る=カトリック教会では人の命が受精の瞬間を始まるとしている=ES細胞は殺人になる。そのために14日ルールという指針がある。14日を超えると人間の胚には全身の構造ができはじめることを理由にしている。正しくは原始線状は15日目にできる。一日余裕を持った。
カトリック教会は体外受精そのものにも反対している=受精の瞬間から命が始まるとしている。中絶の禁止も同じ理屈。
日本社会では、出産前後の儀式を通じて人になる。
日本は生殖補助医療クリニックが非常に多い。体外受精で生まれる数は年間5万人を超えている。
有能な男子の精子を売り買いすることは許されるか。日本では卵子提供はほとんどない。代理出産は許されるか。
日本では、判例で、生んだ女性を母とする。実子を代理出産してもらった例では養子縁組で決着した。
卵活=卵子を冷凍保存は筋違いだという議論もある。
精子、卵子、胚の提供を受けることと、代理出産が問題。お金でやりとりしていいか。
臓器移植法で臓器の売買は禁止されているが、精子卵子胚にはない。
子宮移植も。子宮移植して子どもを産んだ後、免疫抑制剤の副作用をなくすため、子宮摘出をする。世界で19人いる。
カップル間の体外受精、第三者からの精子卵子提供、代理出産、子宮移植。
着床前診断=8つの細胞になったとき、1個を取り出して染色体や遺伝子を調べる。体外受精なら可能。
デザイナーベイビー(成人病リスクや運動能力を調べる)=優生思想に繋がりかねない。
白血病の治療のために、次の子を体外受精にして、臍帯血や骨髄移植に適した子どもを選ぶ。次の子を医療資源にしていいか。
着床前診断は筋ジストロフィーと習慣性流産に適用されている。
羊水検査=出生前診断に比べれば数は微々たるモノ。
優生思想に繋がらないか。
中絶は身体的または経済的で母体の健康を著しく害する恐れがある場合、または暴行もしくは脅迫で妊娠した場合に限られる(母体保護法)=羊水検査の異常で堕胎すると堕胎罪になる。事実上は拡大解釈されている。
出生前診断の実情は明らかではない=件数が明らかになると新たな差別になる、という意見もある。
LGBT間の子どもは生殖補助医療を使うことになるが、認められるか。
臓器移植の問題
1980年代に効果が高く副作用が少ない免疫抑制剤が開発されて、臓器移植が普及した。
アメリカでは年に8千人の脳死者がでる。日本では、生体移植に頼っているため、脳死移植が少ない。心臓移植は少ない。
見知らぬ脳死者より活きている家族のほうが好ましいという価値観、脳死移植の法規制が厳しく、無規制の生体移植のほうがやりやすい。
無制限に認めると、臓器売買に繋がる。
心臓死した人から移植できるのは腎臓と角膜だけ。管理された心停止からの移植。
異種移植=ブタが有力候補だが、動物愛護の観点から認められるか。患者の細胞を使って動物に臓器を作らせる=異種キメラ、は宗教的観点からも批判がある。
再生医療=ES細胞など。体外受精胚を使うので倫理的問題がある。IPS細胞にはそのような問題がない。シート上のものが主で、臓器までは作れない。ブタの体内で臓器を育てる試み。そのほか、ゲノム編集なども研究中。
遺伝子検査=保険などで差別を受けないか。顕在化していない遺伝的疾患で保険金が出ない例、結婚に際して遺伝子情報を要求する、など、法律で規制できないこともある。
マイゲノムを調べると病気の因子がわかる。自分のゲノム情報を研究のために利用していいか。
遺伝子組み換えよりゲノム編集のほうが品種改良に強い。体外受精胚にゲノム編集を施して、病気にならないものに遺伝子を変える研究も進んでいる。後の世代にもかかわり、子孫の改変に繋がる。親としては、子どもを病気に強串たいと思うのは当然、それは許されるか。
体外受精胚のゲノム編集をしていいか。
中国で、エイズウイルスに感染しないように遺伝子編集した子どもが生まれた。医師は実刑判決。優生思想の実現につながる。
心の病は脳の病気か。ロボトミー=脳の一部を切り取るまたは神経繊維を断つ、など。精神外科。向精神薬が開発されて薬物療法が普及したため、下火になった。
海外では脳深部刺激、という方法が行われている。日本では禁止されているが、求める声もある。脳の病気を神経回路の異常とみるのか環境的要因とみるのか、の違い。
医学研究のための実験を管理する法律がない。学問の自由があるので規制すべきでない、という意見がある。医学は知りたい、という欲求だけではなく、病気を治すため、という欲求があらかじめ課せられている。そのためのデータなど個人情報を使っていいか。
人口知能の懸念点=アルゴリズムのバイアス、偏見が加わる可能性がある。
動物に苦痛を与えていいか。動物愛護法では努力義務のようなものしかない。
自然界にない細菌をゲノムから生み出した例がある=新たな生命を作り出した。遺伝子組み換えやゲノム編集で、何が人工か、線引きは難しい。
今では高校生くらいでも簡単な設備とキットで遺伝子改変ができる。DIYバイオやバイオハッカーと呼ばれ、自己流治療も可能になっている。市民生命科学者には倫理規定は及ばせにくい。
ゲノム編集によって、猛毒のウイルスや細菌も生み出せる。非人道的利用をどう防ぐか。
薬物や埋め込み機器で兵士の身体能力を増強する研究も進んでいる。
ダイナマイトも軍民両用の産物。どうやって非人道的利用を防ぐか。
老いは病か、老化防止は可能か。
ノディースーツ、義手義足、人工関節。内臓は今のところ見通しはない。心臓は人工心臓が実用化される段階にある。サイボーグ技術は医療といえるか。
治療か強化・向上か、の基準。成長ホルモンは小人症の治療にはいいが、身長を高めるためではだめ、という線引き。
保険の対象とならないとすると、裕福な人だけが恩恵に預かれることになる。
しわ伸ばし、しみ抜き、皮膚の老化防止は既に自由診療で行っている。
身体を冷凍保存して、脳の中身をチップ上に移す研究もある。
どこまで医療措置を続けるか。
人工透析をやめて死んだという報道。治療をやめていいのか。
かつては、尊厳死、と言われたが死に繋がる選択に尊厳をつけるのはおかしいとされて今は言わない。
生命維持装置の中止または不開始は、通常のことになった。
フランスで、意識不明で寝たきりになり回復が見込めない場合、事前の意思表示がない場合、近親者で意見が食い違う場合、どうするか。フランスでは法律で認められている。
具体的な指針がないほうがより当事者の気持ちをくみ取れる、という意見もある。
透析をやめて死ぬにしても、その間は苦しむ。とすると安楽死を認めていいだろうか。実際には医師による自死介助にあたる。オランダが立法を行った。余命何ヶ月は条件にはなっていない。全死亡数の4%にあたる。認知症や精神疾患の患者など行き過ぎも起きる。
日本では、延命措置の中止不開始までが認められる範囲。
事実上、死に至る深い鎮静処置、を施している在宅看取り医師もいる。家族、医療従事者には断る自由がある。
亡くなる人の4人に3人は病院で死んでいる。
孤独死が増える時代には、死後事務を地域包括ケアの一体化するといいのではないか。死後の処置までが社会保障の対象になるべき。
インフォームドコンセント=説明の上での同意、中国では知情同意=事情を知って同意する、という意味。
脳死は死か、カトリック教会は認めているので議論にならない。むしろ、人工妊娠中絶、体外受精に反対してきた。カトリック教会は、受精の瞬間が生命の始まりとするようになったのは、体外受精を認めるかに向き合った結果。
生命倫理は法律に馴染まないという価値観がある。フランスの生命倫理法は、法学者には受け入れられないもの。日本では立法意識が薄い。法に対する信頼がない。
人体は譲渡不能=臓器、精子や卵子はどうか。日本では臓器、眼球、血液は禁止されている。
譲渡不能は貸し借りも認めないか。フランスでは代理出産は一切禁止。海外で生まれた代理出産の子どもをどうするかが問題になった。