あらすじ
「判決重うなったんは、あんたのせいや!」劇場で見るような、怒り、涙、かけひき、ため息、飛びかう法律用語、適切な訳語への迷い――「裁判で通訳する」リアルを描き出す、胸を衝く法廷ノンフィクション。
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Posted by ブクログ
難しい法律実務に携わる通訳の方によるリアルな記録。視点はあくまで通訳としてのもの。裁判に参加する関係者から発せられる全ての言葉を逐次もしくは同時に訳すとのこと。法律用語や裁判用語のようなテクニカルなことばだけでなく、感情的になりがちな被告人のことばも訳す苦労並大抵ではないだろう。速記人との目線と頷きを通じた意思のやりとりの話や、その日の通訳の歯車がカチっとあったり合わなかったりする感覚の話は、外国語を使って仕事をしている身としては大きく共感した。
単行本版は短いエッセイの集まりだったようだが、文庫本版については、控訴審までいたったある裁判案件に関する記録「抜け落ちた歯」が追加収録されている。このエピソードだけで映画が一本十分に撮れそうな話。和歌山向かう特急ラピードの車内に雰囲気や、天満の造幣局のあたりの風景を思い出しながら読んだ。
Posted by ブクログ
本屋でふと手に取り、「韓国語は全然わからないしな〜」と棚に戻そうとしつつ背表紙を見ると……
“「わたし、通訳いりません」「判決重うなったんは、あんたのせいや」「アナタ、モウ、イイ」”
ええええっ。何この怒涛の心折りまくりワード。パラパラと中をめくってみると……
“「ところで失礼ですが、証人は普段、家では何語で話すのですか」
(中略)
「それでは、家では、お父さんとお母さんは韓国語で話して、息子さんとお母さんは日本語で話していた、ということなんですね」”(p80)
たまたま開いたところにこのセリフがあり、購入決定。レジへ直行しました。
「アナタ、モウ、イイ」は、想像していたものとは違う意味での発言でほっとしましたが、もう気分は著者の丁海玉さんになりきってしまい(←おこがましくも)、全般に渡って胃の痛い読書体験でした。
韓国語のわかる・わからないは関係ありません。“ことば”が好きなすべての人にオススメ。
Posted by ブクログ
母語が日本語同士でも上手く伝わらないことがあるのに、裁判で通訳を介して、となったらお互いに理解することだけでも難しいだろうな。裁判の様子も丁寧に描かれていて、興味深かったです。ただ「抜け落ちた歯」の被告人とは本当に一線を引き続けることができてたのか?読んだ感じでは被告人よりになっている気がした。