【感想・ネタバレ】花のお江戸で粗茶一服のレビュー

あらすじ

弓、剣、茶の「三道」を伝える〈坂東巴流〉の嫡男・友衛遊馬、二十歳。 家出先の京都から帰還するも、家元でさえ副業しなければ家族を養えない貧乏流派ゆえ、働き口を探してこいと言われてしまう。冴えない日々の中、曲者ぞろいの茶人武人にやりこめられながら、遊馬は自分の進むべき道をぐるぐると探しつづける。明日が見えないあなたに贈る、笑えて泣けて元気になれる物語!

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Posted by ブクログ

気づひたら新刊が出ていた。
これまでの作品とは異なり、どちらかといふと、読み切り短編の詰め合はせといふ感じであつた。連載形態の都合といふものもあつたのだらう。
かうしてまた、遊馬の歩みを感じられるとは思はなかつた。先の事なんて誰にもわからない。けれどもあたかも確かなものとしてそれを決定しなければならない。どこかで「待つて」と言つてしまふ。
いつも彼女の作品を読んでゐると、過去も未来もどうにもならないけれど、今かうして在るこの自分を抱えて生きるより他ないことを感じる。だからこそ、まだ見ぬ未来に自分を委ねることができる。つらいこと苦しいこと、楽しいこともうれしいこともきつと起こるだらうが、それでもこの自分が自分であるといふことは生きてゐる以上変らない。
今までは時間や場所、立場の違ふひとがそれぞれにそれぞれの道を歩いてゐた。この一連の粗茶シリーズのやうに、同じ物語世界の中で描きつづけたといふことは、それだけ彼女にとつて茶道や武道、それらを通して出会つたひとびとが今もなお息づいてゐるからだらう。それに加えて、やはりどの人物をとつても変らぬ彼女の姿が今もちりばめられてゐる。
今後またこのシリーズで書くことがあるかは知らない。もしかしたら、遊馬の子ども世代の話とか出てくるかもわからない。もしかしたら、別の何かに影響を受けて別の違つた物語が生まれるかもしれない。だが、どのやうな形にしろ、きつと彼女の書くものに変りはないと思ふ。変りはないが、茶道や武道の形を見せてくれた様に、また別の新しい世界の形を見せてくれると信じてゐる。

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2025年09月18日

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