あらすじ
新型コロナウイルスの流行で、迷走に迷走を重ねた挙句、東京オリンピックの延期が決定した。国際オリンピック委員会(IOC)がぎりぎりまで延期を口にしなかったのは、秋になるとアメリカでアメリカン・フットボールやバスケットといった人気スポーツが始まるので、テレビ局の放送日程がとれないからだという。
オリンピックは世界中の国が集まって行う「スポーツの祭典」「平和の祭典」であり、そのため開催国では巨額の税金を注ぎ込む。それがアメリカのテレビ局の都合で左右されていいのか。
本書は、オリンピックが「スポーツの祭典」から、単なる巨大なスポーツ興行へと変わってしまった軌跡を丹念に追う。とくにテレビの放送権料という金の卵を産む鶏の存在が、IOCをいかに変えたのかを検証する。
では、開催国の日本は一方的な被害者なのか。そんなことはない。
オリンピックを錦の御旗に、あらゆる強引な手法が駆使された結果、東京都心で最後に残った閑静な地域、神宮外苑は再開発されることになった。その巨大な利権に群がったのは誰か。再開発地域にあった都営アパートは取り壊され、長年住んできた住民たちは移転させられた。「国策に協力する」という名目で……。
このような東京五輪の暗黒面が新聞で報じられることはない。なぜなら、新聞もオリンピックのスポンサーなのだから。
世界中がオリンピックが巻き起こす札束の嵐に巻き込まれている。しかし、忘れてはいけない。そのカネはすべて我々の税金なのだ。一年延期で胸をなでおろしている場合ではない。延期の場合、中止よりもさらに巨額の公費が投入されるのだ。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側。後藤 逸郎先生の著書。オリンピックを見るのは楽しい。オリンピックの存在を頭ごなしに否定する人は少ない。でもオリンピックをお金儲けの道具に使ってオリンピックでお金儲けをしている人たちがいる事実。オリンピックでお金儲けしてオリンピック・マネーに群がる人たち。オリンピックでお金儲けしてオリンピック・マネーに群がる人たちは一握りだとしたら、オリンピック・マネーで恩恵を受けている人たちによってオリンピックに踊らされているだけなのではと疑問を覚える人は多いはず。
Posted by ブクログ
最初はオリンピックがいかに失敗であったかに興味があって本書を手に取ったが、内容を見ると著者の文献分析の能力に感服した。
こうやって仕事が出来る人が世の中を動かしていけるんだなと思った。
Posted by ブクログ
「お金」になるから人が群がる。何が「平和の祭典」だ!!デタラメもいいところ。
果たして東京オリンピックもそうだったに違いない。しかし検証しないのが日本人の悪いところ。
その一部をこの本が示してくれた。
Posted by ブクログ
本文中に
何度も出てくる「国策だから」
に ついつい反応してしまう
オリムピックだけではなく
「お国の為」に
抹殺されたり
生きづらくされたり
暮らしを奪われていく
ものたち
75年前にも
そして
今も
その「しくみ」が
現存していることに
ぞっ としてしまう
「国民一丸となって」
おぉ 怖ろしい
Posted by ブクログ
平和の祭典の裏の闇の世界を公開情報を元に暴き出す。延期、マラソン会場移転などドタバタ劇の理由も分かる。
商業主義が時に揶揄されるオリンピック。IOCの錬金術のカラクリそして莫大な放映権料とオリンピックバートナーからのスボンサー料。猛暑予想にも関わらず8月開催にこだわり、マラソンの早朝スタートもできない事情には納得できた。
延期または中止に関わる諸費用。それは開催国、都市が負担するだけなのだろう。新国立競技場の建設、神宮外苑の再開発など当初より大幅に増える費用。利権が渦巻いていることだろう。
誰もが胡散臭さを感じるだろう東京2020大会。モヤモヤの正体について疑問が氷解する一冊でした。
Posted by ブクログ
ザハ氏のデザイン、エンブレムの盗作、ブラックボランティア・・。何かと胡散臭い問題つきまとう「東京2020」だが、この本では扱うのはお金の問題。怪しさいっぱいのIOC。招致した側も十分汚い。犠牲者は競技に選手、観客、そして開催都市の住民。招致の裏の目的は何だったのか。開催の裏で霞ヶ丘アパートの強引な立ち退きがあったことは忘れてはならない。新国立競技場のサブトラックは臨時のもの、オリンピック後に陸上競技は行えない。延期は決まった。だが開催できるのか。残るのは多くのお金と人の犠牲だけになるかもしれない。
Posted by ブクログ
ヒステリックな書き方はマイナスでしかないと思いました。個人的には五輪にはほぼほぼ興味ないのと、「お金ないから増税」なのに、なんで予算は青天井?という疑問というか怒り。
P21 ベルリン大会のテレビ中継。当時は機械式だから、現在につなげるのは無理があると思ったけど、そうでもなかったみたい。解像度は180本。
P96 東京2020大会。中止が財政負担がもっとも少ないという試算。
P165- 神宮外苑再開発の起爆剤 五輪をたてにいろいろ突破。こういうのは戦争と同じかと。共通項はお国のため。
Posted by ブクログ
IOCという組織がどのようなモノなのか、その背景について知りたい方向けには良い本だと思います。
個人的には、オリンピックを止められない開催地に関して、政治との関係性を軸に、もう一歩踏み込んだ内容があると面白いと感じました。
~初めて知った事~
〇IOCという組織
NPOでありNGOだが、数多くの関連会社を傘下に持ち、中でも放送権を独占する子会社の役員にはIOCメンバーの役員が多くを占める。
巨額の資金を集めているが、財務の詳細については広く公開されている訳ではなくブラックボックス。
〇放送時間
高額な放送権料をアメリカのNBCが一括契約したことにより、出資国の視聴者にとって都合の良い時間帯に競技時間が設定されている。開催地決定前に放送権の契約が完了するため、開催地には時間帯の交渉権がない。
〇新国立競技場
サブトラックが撤去される予定のため、五輪終了後は国際記録が残せない。
Posted by ブクログ
さらっと一読。
世界の国々がオリンピック開催に対して、その莫大な経費ゆえに市民が反対をとなえ、議会を通らない、ということがおこっているという話。
日本は喜んで賛成してたよね。冷めてる報道はみなかった。インバウンド需要を期待したのか?
新国立競技場は、ラグビーの誘致のために、オリンピック以前から再開発が決まってたとのこと。オリンピックで絶対に開発したいという人がいたのだな。
東京都ももちろん、観光客誘致をしたかっただろう。
日本が陸海軍のそれぞれが自組織を守らんとして、決定を下せず、戦争に突き進んだように、政治的ないくつかの意図と、東京都の意向の中で、オリンピックが突き進んでいったのだな。
政治がアホ、と思うけど、それをどうしょうもできない国民が、またアホなのだと思う。私も含めて。無力なり。