【感想・ネタバレ】「小児性愛」という病――それは、愛ではないのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

不謹慎な言い方かもしれないけど、非常に興味深かった。もっとたくさんの人に読んでほしい。うまくまとめられそうにないので、箇条書きで。
・とにかく、孤独や社会からの疎外感、ストレスは人をダメにするんだな、と思った。家庭内が支配-被支配関係をベースに築かれていたり、精神的に安心できない場所になったりしていると、自分も支配-被支配関係を築いてしまう……それは動物殺しだったり、子どもへの性加害だったり。「ケーキを切れない非行少年」でも強制性交をしてしまう少年の話があって、それが頭をよぎった。回復の過程でもとにかく孤独にしないことが重要視されていて、やはり自分を気にかけてくれる人と触れ合うこと、そして彼らの目を心に持つことは大事なんだなと思った。
・関連して、ペドフィリアってもっと特殊なものだと思ってたけど、他の犯罪と地続きなんだなとも思った。社会から阻害されたいわゆる“無敵の人"の怒りの矛先が、無差別殺人に向かうか小児性加害(時には殺人)に向かうかの違いというか。元々その嗜好があるかどうかの違いなんだろうけど。
・更生への道があまりにも長く、遠いなと感じた。自分が当事者ならば、毎日毎日「また性加害するのでは」と不安で、ひとりぼっちの世界で「今日も生き延びた」と石に正の字を刻んでいるような気持ちになると思う。そして今はネットの発達でポルノがどこにでも転がっているので、ツイッターも迂闊に開けないし、生活がかなり制限されるだろうなと思った。というか子どもを見るだけでスイッチが入りかねないんだからネットがなくたって危険だ。しかしケンタロウさんの話を見ると、非常に落ち着いて自分を客観視できているので、やはり時間を掛けて治療するのは大事なんだなとも思う。でもまともに働けないので経済的にもかなり苦境に立たされるだろうし、当人も支える家族もしんどいだろうなと思う。また同じ性犯罪でも対象が大人か子供かで周囲の眼差しも違い、いたたまれなくて他の性犯罪者と一緒に更生教育が受けられなくなるというのが切なかった。
・児童ポルノについては、実写はダメだけど漫画については本当にそれが抑止力になるのだと思っていたので、違ったこと、むしろ真逆であることに愕然とした。本当に依存症なんだなっていうか……児童ポルノは薬物で言うところの大麻、ゲートウェイドラッグなんだなと思った。あと痴漢の場合はあまり関係ないのも不思議だなと思った。
・「可愛い」の話で、まあ意識して使ってないけど「可愛い」には確かにバカにした響きがあるよねとは思っていた。昔男に可愛いと言ったら「馬鹿にされているようで気分が悪い」と言われたことがある。でも男は女に可愛いと言う。馬鹿にしてるのか?
・日本が男尊女卑社会なのはまあそうで……強い男性がいると弱い男性も生まれてしまう、でも強い男性は自分の特権を維持したいから男尊女卑社会を継続させたい、女性も処世術として弱くいることを学んで再生産してしまう……そして弱い男性は切り捨てられる。彼らもまた男尊女卑社会の被害者と感じる。
・しかし1人で1000人以上に性加害していた人とか……愕然とした。自分がこの年まで何もなく健やかに育ったことが驚きだ。将来自分に子供が生まれたら、必ずトイレには付き添おうと思った。

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2023年03月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・小児性犯罪は初めての加害から捕まるまで平均14年、他の性犯罪より長い。子どもがされたことを理解できない/伝えられないので発覚しづらい。再犯率も高い(痴漢は特にものすごい再犯率でそれも衝撃だったが)。1人の加害者が捕まるまでに平均300人ほどの被害者を出すといわれる(1000人くらいいってることも全然ある)
・小児性犯罪は職業を通じて加害行為が行われることが多い。加害者の有職者のうち3割が教師や保育士インストラクターなど子どもを指導する立場の職。執念が強く何年もかけ資格を取り子どもに接する仕事に就いて性加害しやすい環境を作っている。実際本の末尾にあった事例は本当に教師とかばかり。
・他の依存症と同じようにストレス環境下で加害に繋がりやすい。
・児童ポルノを容認する価値観の社会の中で、加害する人間としない人間が地続きに存在する、児童ポルノやそれを容認する価値観によってその溝が埋まっていく。エビデンスはないが現場レベルでワークに参加した加害経験者へのヒアリングした結果では全員が児童ポルノは加害に繋がると回答
・男尊女卑から生まれた男性優位の考え方は、男性の性は社会によってケアされるべきものという考え。より上位に立ちたい、自分より弱いものに受け入れられたいという欲求。女性はかわいい、未熟であることを求められる。(かわいい=自らに危害を及ぼすことのない存在に使われる言葉)これが拒絶されたとき、受け入れてほしいという欲求が力の小さなもの(子ども)に向かうことも
・性犯罪は犯罪者の中でも下に見られる。小児性犯罪は性犯罪の中でもさらに下に見られることから小児性犯罪の加害者は孤立しがち
・GPSなど厳罰化は再犯率低下の効果が低い。加害をやめつづけるための治療が有効なアプローチ。つい厳罰化を望んでしまうが本質は被害を減らすことでそのためのアプローチを忘れないようにしたい

★かなり読むのがしんどかった。けど勉強になった。加害する人間がいる前提で子どもを守るために、1人にしないとか、最低限の知識を伝えるとか、何か違和感感じたときにいつでも共有してもらえるような関係作りが必要だと思った。自分はオタク文化に寛容でフィクションと現実は別だしエンタメとしてオタク文化大事と思っているが、イラストなどであっても児童ポルノが蔓延する社会とそれを許容する価値観、ムードが性加害する人間と地続きの社会を作り出しているというのは本当にその通りだと思った。オタクの大人として文化を守るためにこそしなければいけない規制もあるのではと感じた。   

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2023年01月28日

Posted by ブクログ

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小児性愛に特化した防止プログラムがあることを初めて知った。加害者の多くは「僕たちは愛し合っていた」などの認知の歪みがあり、現実が全く見れてないことに絶望した。子どもは無垢な存在であり、そんな子どもと恋愛関係にある。それは成人女性との恋愛と比べようもないほど純度が高く特別。相手よりも性的に優位に立ちたいといった身勝手さが気持ち悪く感じた。吸い込まれるように着いて行った、というところからも依存症なのだろうと感じる。

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2022年07月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

過去にこの方の「万引き」と「痴漢」を病として扱った本を読みました。今回は「小児性愛(ペドフィリア)」子供に向けた性暴力の本です。

私には6歳になる姪っ子がいるのですが、この本の加害者の言葉が出てくるたびに頭の中を姪っ子の姿がちらつきました。今すぐ姪っ子に「水着で隠れる部分は、人に見せたり見せられたりしないものだからね。」と教え込みたい気分になりました。
この本はただ加害者をあげつらうだけではなくて、どういう共通点があるか、治療につなげていくかというのが書かれているのが救いです。また、トリガーがあって、再加害してしまう彼らの心理はアルコールや薬物をスリップしてしまうのと近いものだという事も分かりました。でも、スリップと違うのは、小児性愛を持つ彼らがスリップしたら確実に被害者を産むという事。これは、性犯罪やDV等の暴力でも起こりえます。

性犯罪を犯した人は一生刑務所から出てくるな。とか去勢してしまえという意見も聞きますが、それが非現実的でそれだけでは再犯を防止できないというのが現実であるという事も分かり、今後似た様な意見を聞いた時に私はどう考えるのだろうと思いました。病とみなして治療につながってほしいと純粋に考えられるのか分かりません。

ラストに実際の小児性愛者(治療中)との対談がのっているのですが、自分の考えをちゃんと持っていて、10年以上加害をしていない彼はこの問題とちゃんと向き合い続けているのを感じました。だからと言って加害は許されるものではありませんが。

本当に、本当に身近にいる子供たちが被害者にならない社会になることを祈りたくなる本でした。加害者の言葉を読んでいて背筋がぞくぞくしました。

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2019年12月23日

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