【感想・ネタバレ】ハイパーハードボイルドグルメリポートのレビュー

あらすじ

テレビ東京で不定期放送されるカルト的な人気番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」。“ほかじゃありえない”内容が話題の同番組を企画・取材・演出までほぼ一人で手がけたプロデューサー・上出遼平氏の初著書。番組内に収まりきらない世界の現実を「人が食う」姿を通じて描く。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

テレビ東京が不定期的に放送している「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の書籍化。
テレビでは描かれていない旅の様子、生活が描かれています。
出だしからショッキング。
文化や考え方の差ではありますが、生活を送るということを今一度考えさせられました。


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2025年12月03日

Posted by ブクログ

題名はコミカルだけど、全然コミカルじゃない話。
この本を読み終えた今、いろいろなことを考えさせられます。食べ物が題材のように見えるけれど、それとはもっと違った、本当に奥深いテーマや課題を考えさせられました。社会、文化、道徳、人種、宗教…

技術も文化も発展している日本に生まれて、日本で生きている自分にとっては、この作品中の人々の人生や境遇があまりにもかけ離れていて、まるで物語を読んでいるような気にすらなります。
どのエピソードも大小の衝撃がありましたが、ゴミ山のスカベンジャーのエピソードが1番心に響くものがありました。とても強く逞しく生きている彼ら。おそらく、住んでいる場所も、身なりもお金の稼ぎ方も、世界で最も貧しい人たちだと思います。でも、決して手を汚そうとはしない。そんな彼らはとても誇り高い生き方をしているな、と感じました。

この本は、どのような境遇でどんな立場の人であっても、「食事」というものは平等に心を満たし、温かくしてくれるものなんだな、と感じさせてくれます。が、それはこの本の一つの側面に過ぎないと思います。
この作者の方の旅を通じて、まるでパラダイムシフトを経験するような、そんな異文化な体験ができると思います。

食べ物が好きな人、ノンフィクションでジャーナリストが書いた本が好きな人だけでなく、日々の日常にモヤモヤしている人や世界の見方を変えたい人、世界を知りたい人など、いろんな人におすすめしたいと思います。

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2025年10月23日

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私は番組から入ったんだけど、番組の映像とリンクしながら読んでいくことができた。
自分が経験できないことをしていて、純粋にすごいなと思う。

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2025年08月04日

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ポッドキャストで出会い、映像を見ぬまま、書籍に辿り着いた。過激な企画てありながら、対応の仕方に誠意を感じ、少しも嫌な感じがしないのは著者の人柄なのであろう。

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2025年07月27日

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「ヤバイ世界のヤバイ奴らは何食ってんだ?
 食は多種多様な生活の写し鏡だ」

紛争地、マフィアや薬物、スラム、カルト、ゴミ山‥人が住めるとは思えない“ヤバい場所”に、確かに生活があり、食事がある。
著者の上出さんが身を削って伝えてくれた血の通ったリポートは、事実であるということがどんな物語より心を揺さぶり、とんでもない衝撃を受けた。

取材慣れした住人が金銭を求めて案内を始める。
それでも、素の人間を撮ることをあきらめない。表層的な演出や見せ物ではなく、その奥にある本音と日常を引き出そうとする執念がすごい。

読んでいるうちに、自分の中の「正しさ」が揺らいでいく感覚があった。
戦う少年兵も、信仰に生きるカルト村の人々も、一見異様に見えるけれど、彼らなりの日常と正義が確かに存在する。
上出さんは、それを同情や断罪でジャッジせず、ただ水平に差し出す。

ゴミ山で出会った少年。
踏み場がないほどウジ虫がわく収集車に乗り込み、投げ込まれるゴミを頭から被りながら少しでもお金になる資源を探す姿に、ジャーナリストとしての一線を死守してきた上出さんでさえも涙がにじむ。ページ越しに伝わってくるのは、どうにもならない無力感と、背筋が伸びるほどの生命力。

彼らは、ギリギリの生活を送っていてもだいたい「食べな」と一口わけてくれる。
上出さんが「美味しい」と言うと、嬉しそうに笑う。
その瞬間、武器も思想も貧富も忘れて、ただ「人間」としてつながれる。
食うこと=生きること。それ以上でも以下でもない。

「自分は恵まれている」と言い聞かせるだけでは余りにも軽い。
じゃあ自分に何ができるのか、は簡単に答えが出せる問いではないけれど、日常を生きる重みが少し変わった気がする。

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2025年07月15日

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食うこと、すなわち生きること、をテーマに様々な国で取材した番組の、取材旅行を活字にした本。
登場する人達の生き様があまりに壮絶で、日本で平和に安全に暮らす私とはかけ離れすぎていて、衝撃だった。内戦後のリベリアで墓の中に住む元少年兵達や、ケニアのゴミ山に住む青年。その日を生きるための最低限のお金しか稼げず、洗面器を鍋にしたり、落ちているペットボトルをお皿がわりにして食べる。私がそこで生き抜ける自信は全く無い。自分がどれだけ恵まれているのか考えさせられた。

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2025年06月24日

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もの凄いドキュメンタリー。
テレビマンとしてよりジャーナリストのほうが
向いているんじゃないかなとおもう。

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2024年09月18日

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同名のテレビ番組をNetflixで観て衝撃を受け、文章化が気になり手に取った本。
こんなに衝撃的な読書体験は久しぶりだ。

番組ディレクターである著者の上出さんは番組だと寡黙な印象だったがかなり筆が巧い。活字だととても雄弁な人だ。
そして番組で取り上げられていたのは実際の体験のほんの一部の切り取りに過ぎなかったのだと気付かされた。あの映像の背景にこんな濃厚なストーリーがあったとは…。映像だけでもかなりハイカロリーだったので、完全に胸焼けレベルの情報量。

卑近で月並みでかつ少しピントのズレた感想かもしれないけれど、今のこの平和な日本で平均的な所得水準の家庭に生まれたことがどれだけ幸運に恵まれたことなのかを思い知らされた。
これこそがドキュメンタリーである。

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2024年09月14日

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頭に浮かぶどの感想もチープに思えてくる。
それくらい、単純化できない問題と、それが確実にリアルであることが伝わってきた
ここでは当たり前のことが、全然当たり前じゃない。分かっているようで何も知らなかったんだ、そう優しく突き付けてくれる一冊だった

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2024年02月16日

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途中までは、この彼友達になれそうだなと思って読んでたけど、後半、違う、ちょっと近づかない方が良さそうだ、と思った。

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2023年11月03日

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本当に素晴らしい本です‼️
映像も観ました。
その中に出てくるアフリカのゴミ山の青年の笑顔が忘れられません。
大きな影響を与えてくれた1冊です。

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2023年07月29日

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世界の人がどんなご飯を食べてるかというグルメリポート。
数年前に先輩からこの映像のことを聞いた。
映像で観た話と観てない話がある状態で読んだ。
映像で観てても100%読んで良かった。
何が正しいとか正しくないとか判断ができひんから思想まで変えてしまわれそうになる。
衝撃。

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2023年01月23日

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テレビという媒体で見ると、どこかPOP(表現的にはドキドキ、ハラハラみたいな)に見えていたが、文字情報だけで見ると、危険さ、思いがさらに伝わった気がする。後、この人のテレビ番組結構見てたんだなぁ。

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2023年01月09日

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とんでもない本だな

ガチすぎた

500ページ越えだけど読めた、読まされた

色んな方向からの見方があることを改めて知らされる

この本を読んだあと、「犯罪は悪いこと」そんな言葉がとても幼稚に感じる

何を大事にすべきか
迷った時はまた読みたい

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2022年12月17日

Posted by ブクログ

ポッドキャストで知って本に戻って来た側の人間。
一気読み、とは行かないけど毎日手に取って読み進めた。

感じることはたくさんあった。明日、来週、来月、来年、読み終わった今の気持ちをどこまで覚えているだろうか。

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2022年12月15日

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迷いなく星5。
内容もさることながら、この文章の面白さ。
カメラだけ持ってほぼ身一つで危険な地域・団体に突撃するなんて、行く先々でよく無事に帰れたなと思わされる。色々と注意しているルールがあるんだろうな。
"ヤバい"と言ってもスラムや貧困、宗教団体などバラエティ豊かで読み応えがあった。本の厚みが気にならない格別の面白さ。ぜひ映像も見たいな。

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2022年11月30日

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世界のあらゆる場所で、人は生きている。
生きているということは、食っているということ。
『飯』を媒介にし、そこにいる人の深淵に迫る。
作者の表現には一貫性があり、個人的にはしっくりきた。
さいごに、に記載のあった内容は、作者の叫びとして忘れることはないだろう。

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2022年10月10日

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テレビ映像は見たことがない。ラジオの声から想像したのとは違う著者の姿が、ここにあった。食べること、そして生きること。

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2022年09月11日

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最初は表現過多で冗長に思えてしまうが、上出さんの言葉なのだろうなと思えてくると自然に入る。
今の自分と本の中の人との差はなんなのだろうかという比較と、相対性とは完成ない美味そうさの絶対性を見ることにより普遍的なものが見えてくる。
絶対と相対に気づけそうになる興味深さを感じた。

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2022年07月28日

Posted by ブクログ

いま、一番読むべき本じゃないかな。
こんなに問題山積みなのに。コロナ前でさえ注目されなかったこの本の登場人物たちは、今どれだけ大変なことになってるのか想像つかない。

読めば読むほど、フィクションであってくれ~って思う実録本ってなかなかない気がする。
上出さんの言葉と思考のセンスがずば抜けてると思う

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2022年05月12日

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『ヤバさを見つめれば、普通が見えてくる。
生について考えるには死が必要であり、
裏がなければ表も存在しない。』

2020年のベスト3入り!
お気に入り確定本。

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2022年02月23日

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人は生きるために食べていく。それはどんな環境であろうと。

著者はカメラを向ける事は暴力性を孕むと書いている。全くその通りだと思う。人は見せるために生きているわけではない。受け取るこちら側は勝手に想いを託し、読み取った気になり、自分の物語として消費していく。傲慢に。自分勝手に。

それでも、語りたい人がいるから撮ることが出来る。見てほしい人がいるから撮ることが出来る。
極限状態での生活を切り取る切口としての食事。非常に個人的な行為。でも個人の行為は社会の影響を受けざるを得ない。
生きる事は食べること。社会から与えられた影響の結果、今日の食事になる。人の生に目を向けた良書だった。

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2025年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

元々番組を観ていて、好きな番組だったけど本も出たというので読んでみた。とても興味深い内容ではあったし、大変な環境を生きる人々の現状が垣間見えるのはジャーナリズムとしても意義深いことだとは思うけど、なんていうかな。生まれる土地は選べない悲しさというか、そういうことを思ったりもした。特にスカベンジャーの回はかなりつらいものがあった。年端も行かない子供がシンナー吸ってるのとかね。先進国の少子高齢化が進む中で発展途上国ではどんどん子供を産んでいるみたいだけど、この先世界の人口動態はどうなっていくんだろうな、とも思った。

一番印象的だったのは、ロシアのカルト宗教の話。ミッドサマーっぽい風景にぎょっとしたけど、中にいる人はそんなに狂っているようにも見えず、そんなもんなんだなと思った。まあ、元いた住民が追い出されたりとか、色々あったみたいだし、不満を抱えている子どももいそうだったけど。それこそ、「生まれる場所は選べない」の一例だね。
身の回りのことも社会のことも、とにかく色んな事に思いを馳せがちなこの世では、誰か(=教祖)に代わりに悩んでもらうっていうのは確かに肩の荷が降りて楽になりそうだなと思った。次々に降ってくる決断と選択の嵐から自分を守ってくれる存在は心地よいだろう。まあ自分はああいう村社会は向いていないと思うし、お肉も食べたいしお酒も飲みたいので入信はしないけど、合う人には合うんだろうな~と思う。
まあでも、わざわざ宗教に入らなくたって自分の判断を他人に寄託してる人なんかいっぱいいるよな。ネットニュースの意見に引っ張られる人とかさ。あと急病の場合は病院に行くって言ってたけど、急病じゃなくても持病が発生したらどうするのかなと思った。健康なうちはお金がなくても暮らせるだろうけど、力仕事もたくさんあるから、いくら助け合いの文化があったとて、元気なうちしか暮らせない生活モデルじゃないのかな~と思った。

にしても、本にはプロデューサーたる筆者の気持ちやより詳細な話がありありと描かれているだけに、ロケの壮絶さが手に取るようにわかる。コーディネーターもよくついてきてくれるな!って感じ。いつ殺されてもおかしくないし、奥さんはどんな気持ちで家で待ってるんだろう?と思った。
番組を観たのは結構前で、そんなに激しく「このロケ大変だな~」と思った覚えはないんだけど、本では臭気や恐怖や興奮や、筆者の感じた感情がモロに描かれているから、映像で描かれている本編よりもむしろ本の方が見ごたえがある感じがした。でも「この人本編で見たな~」っていう記憶の補完が功を奏した部分も大いにあるから、映像版も併せて観た方が良いとは思う。
あと『食』をテーマに番組を作るくらいだから、上出さんは元々食べるのが好きな人なのかもしれないけど、食レポがとても上手。身体に良さそうなものは全然出てこないけど、野生的なおいしさが想像できる。本編はあんまり味の感想とかはなかったような……(覚えてない)と思うから、そこも読みごたえがあった。500pくらいあるけど読みやすいし、かなりおすすめ。

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2025年04月08日

Posted by ブクログ

テレビ東京のドキュメンタリー番組のプロデューサー上出さんが、単身単独の取材旅を綴る一冊。内線に明け暮れる西アフリカのリベリア共和国の元少年兵たちの極限飯。台湾マフィアの豪華中華。ロシアの“カルト宗教”の街のベジタリアンボルシチ。ケニアのゴミ山で暮らす青年の赤飯。“グルメリポート”というフォーマットで世界の片隅にある暮らしをレポートする。映像は強いけれど、映像では掬い取れない取材のリアル、焦り、なぜか美味そうな料理シズル。そして上出さんの取材対象者への思いを知ることができて興味深い。

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2025年03月18日

Posted by ブクログ

取材は暴力である。カメラは銃であり、ペンはナイフである。という前提のもと、取材対象をありのままに撮り彼らの中に入って行くこの人はすごい!
世の中社会正義だからと、誰かの人生をねじ曲げるような取材をする人々が多いと、常々感じていたので、あとがきにも感動しました。

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2024年12月30日

Posted by ブクログ

TVが面白かったからと友人に勧められた「ハイパーハードボイルドグルメリポート」。テレビ東京で以前やっていた深夜のルポルタージュ番組の活字版だ。私はその番組を知らないのだが、相当ヤバくて面白かったらしい。

リベリアの墓地、ロシアのカルトキリスト教の村、台湾マフィア、ケニアのゴミ山。ヤバい世界で暮らす人たちの食事を見せてもらう、という、いわゆる強烈な「サラメシ」みたいな番組だ。

著者の上出遼平はこの番組のディレクターでプロデューサーでカメラマンで編集で出演者で、1人で全部こなしている。カメラを持ってひとりで現地に飛び、通訳と一緒にヤバい人と会って話し、メシを見せてもらう。しかしいつの間にかメシよりもヤバい人たちの暮らしや考えに優先順位は移る。ヤバい人たちの食事が特段ヤバいものであるわけではないからだ。

旅は好奇心を満足させてくれる。知らない土地、ましてや危険な場所。台本のないひとり旅。現代の旅行記といえば沢木耕太郎の「深夜特急」がある。沢木耕太郎作品の中でも群を抜いた傑作で特に前半のアジア編が魅力的だ。藤原新也の「全東洋街道」も好きだ。写真家でもあるので写真がたくさん載っていて楽しいが、文章の方が惹かれる。想像力をかき立てられるからか。いずれも学生時代に読んで感化されて旅に出たものだ。

さて、上出遼平のルポはそうした若者の個人旅行のように勢いで乗り込んで突き進む。ジャーナリズム
の正義を振りかざしたりはしない。何が正解とか、正しいのはどっちとか、解決するためにとか、そんな話ではなく、その世界に住む人たちと友だちになろうとする。その人たちの人間らしさに光を当て理解しようとする。環境が違うだけで私たちと同じことがわかる。話にヤマ場を作ったりオチをもうけたりしないから、盛り上がりのようなものはない。

そして最後に「また来てね」「あなたに会えてよかった」と言ってもらえると魂が浄化される。取材が暴力であることは避けられない。だから、彼らが言いたいことを言って、僕らが聞きたいことを聞いて、人と人として心を開いて同じ時間を過ごすことがドキュメントを撮ることなのだと書いている。ジャーナリズムと一緒にしてはいけない。

シベリアのカルト信者が言った「僕らは他人の正しさを判断するべきではない」。自分たちの価値観で判断し、どちらが正しいとか、比べることに意味はないし、必要もない。

貧困や内戦が悪いという話ではない。そこにあっても笑顔があり幸せがある。豊かで平和な世界でも不幸はある。



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2023年11月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なかなか面白かった。リベリアとケニアの話が特に好きだ。フィクションみたいな世界がアフリカには転がっていることを再認識した。
カミデさんみたいなは人がいるから僕はこういった知見を得られるわけだけれど、本人はよく行く気になるよな、と感心する。

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2023年05月25日

Posted by ブクログ

まさに本を読むことの意味。
全てがすごかった。
ゴミ山とロシアの宗教の街が
心に残った。
食は文化も歴史も
経済も信条も全て写し込んで
生きるために必須で。

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2022年04月20日

Posted by ブクログ

内容としてはめちゃくちゃに面白いが、文体が初めて小説を書いた時みたいでむず痒い……。中身は本当に面白い。

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2024年04月17日

Posted by ブクログ

ごはんが無ければ人間は生きていけない。逆に言えば、生きるという営みの中には「ごはん」が必ず鎮座しているわけであり、その人が食べる食材や食べるための調理法は、その人の日々の生活を映し出す鏡とも言える。
では、世界のヤバい場所で暮らしている人たちは、どんなヤバい飯を食っているのだろうか?

そうしたコンセプトのもと製作されたテレビ番組、「ハイパーハードボイルドグルメリポート」を書籍化したのが本書。もともとはテレビ東京の深夜番組として映像化されていたが、書籍化にあたり番組では(尺的にも内容的にも)放送できなかった未公開エピソードを大幅加筆しており、番組を作成していた上出氏の心情や考えがありありと表現されたまさに「完全版」の一冊である。

「ヤバさ」と一言で言っても、ベクトルはさまざまだ。食人者と言われている元少年兵が食べる廃墟飯、路上生活を重ねるドラッグ中毒の娼婦が食べる屋台飯、台湾マフィアたちの酒池肉林、カルト宗教の信者が作るベジタリアン料理、有害物質で汚染された豚を食べるスカベンジャーなど、極上から最底辺まで幅広く、「ヤバさ」の中でもこんなに格差があるのかと思い知らされる。清潔で安全な日本では考えられないような「食べられればいい飯」が出てきたと思ったら、逆にまともな料理なのに食べている人が全然マトモじゃなかったり、読んでいてワクワクするほどのバラエティーに富んでいた。

本書を貫くコンセプトは、「人には人の正しさがある」だ。物乞いや強盗をして食事にありつく者もいれば、朝から晩まで低賃金の仕事をこなし、なけなしの銭で米を買う者もいる。
「清貧に甘んずる」のを美徳とするのは満ち足りた人々だけだ。日々の食事に事欠く人々は倫理では測れない。人は食わなければ死ぬし、食うためなら何だってしてもいい。リベリアやケニアの貧困者たちを先進国の基準で捉え、彼らに道徳を説いてしまえば、彼らの背後に潜む悲惨さから眼を背けることになる。

取材に応じてくれた人たちは、社会から切り離された存在である。内戦の影響で住む家を無くした元政府軍と元反乱軍、動物を殺すことへの罪悪感から植物と乳製品だけを食べる街、ゴミ山で生きるしかなく、鉛で汚染された食物を食べて身体を壊す子どもたち。彼らの食事を通じて描かれる世界のリアルとは、「ヤバい」と「普通」の間、そして「正義」と「悪」の間は切り分けられないほどぼやけているということだ。そして、食事の間だけは善悪を忘れられることができ、美味しい食事に舌鼓を打つのは誰もが同じということだ。食事は現代社会が抱える闇を浮きぼりにするが、同時に闇を忘れさせてくれる存在であるのかもしれない。

本書は、私たちとはかけはなれた「ヤバい」状況のもとごはんを食べる人々のルポだが、不思議と食事の様子は想像ができるし、「食べてみたい」と思えるようなものも少なくない。過酷な環境で生きながらも、みな食べると言う行為を楽しみにしており、日々の生活と毎日の食事に真摯に向き合っている。世界のアングラな部分を見ながら食について再考できる一冊。ぜひ味わってみてほしい。

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2022年07月10日

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