あらすじ
突然の失明が巻き起こす未曾有の事態。「ミルク色の海」が感染し、善意と悪意の狭間で人間の価値が試される。ノーベル賞作家が「真に恐ろしい暴力的な状況」に挑み、世界を震撼させた傑作。
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Posted by ブクログ
初作家。この作品の成功により、ノーベル文学賞を受賞。人間とは、個人と文明について、善悪とは・・・etc。あらゆる物事を全人類(ほぼ)失明という事象を用いて寓話的に淡々と、時に神の視点を挟みながら記された天から人類に齎された(——作者曰く、突然"全人類が失明したらどうなるのか"という…)書物ではなかろうか。作中一切キャラクタ名が出て来ず『医者の妻』『サングラスの娘』『黒い眼帯の老人』…等、眼が見えない世界では名前など不要ですものね。また台詞には「」が使用されておらず、最初は誰が言葉を発しているかわからず、大変読みづらい。しかし二つの事柄を合わせて考えてみると、読者をよりこの世界に取り込む(→読者すらこの物語の登場人物のひとりのように)のに大変効果的なことに気付かされた。結末はまた新たに生まれ変わった"新"人類の誕生(?)で幕を閉じた——。
(※続編もあるようだが、翻訳されておらず…残念だ。)
人によっていろいろ考察しながら読める、素晴らしき作品!全人類必読の書である。星五つ。
Posted by ブクログ
ある日突然、失明が伝染していく。視界が白の闇に包まれる。
失明も怖いけれど、全ての人が盲目になった世界で一人だけ目が見えているというのも壮絶です。
何も見えない世界で理性を保てるのは、その人自身の理性なのか、やっぱり「彼女には見えている」という“見られている”意識なのか……。
一人だけ失明しない人物である医師の妻は、支援と介護とのプレッシャーも、目の当たりにしている悲惨な世界のストレスも、自分の目もいつか見えなくなるかもしれないという恐怖もかなり強かっただろうと思います。ラストの不穏さも印象に残ります。
地の文と会話文の区別がつけられてない文章で、会話も何人もいるけど誰がどの発言をしているかも書いてないところもありはじめは戸惑いましたが、それでもぐいぐい読まされる力がありました。考えさせられて目が止まる一文もサラッと書いてあって、読む度に深まっていきそうな作品です。
映画「ブラインドネス」も観ました。原作を読み終わる前に観てしまったけれど随分とコンパクト。でも壮絶さはありました。最初に失明した男とその妻を伊勢谷友介さんと木村佳乃さんが演じられててびっくりでしたが不思議としっくりきます。
Posted by ブクログ
わたしたちは目が見えなくなったんじゃない。わたしたちは目が見えないのよ。目が見える、目の見えない人びと。でも、見ていない。
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暗い作品の得意な私でも読むのに少々骨が折れた作品だった。読んで、考えて、手が止まる。とても面白く、そして恐ろしい作品。現在のパンデミック下で、状況は違えど同じようなことが起こっている。得体の知れない脅威と背中合わせの生活。いつまで続くかわからない、まさに「闇」だ。
ある時突然視力を失った男。
男を助けたあと男の車を盗んだ車泥棒。最初に失明した男の妻。眼医者の診療所にいたサングラスの娘、斜視の少年、白内障で眼帯をつけた老人。次々と失明していく。失明した人々の視界にはどこまでも続く、ミルクをこぼしたような一面に広がる白い海。彼らは使われなくなった精神病院の病棟へ隔離され、外に出ることは許されない。満足な食糧も提供されない上に、饐えた匂いのする水しか出ない水道、生きる上で必要なものはほとんど揃っていなかった。
目の見えない人々は増え続けて、三百人ほどの人が病棟へ収容された。
人が人らしく生きていくことを忘れる者。人間的でないならせめて動物的にならないようにしようとする者。
当然のように起こる想定しうる最悪の出来事。
医者の妻だけが、最後まで失明しなかったのは何故なのか。
ある日突然人々が白い闇から脱出することができたのか。
わたしたちはずっと、盲目だったことだけは確かなようだ。
Posted by ブクログ
最初の1ページから、これは面白いぞ!という予感。「」のない台詞も、違和感なく、というか、むしろ引っ掛かりがなく流れるように読めた。時々、あれ?これは誰が言っている?となる時もあったけれど。
眼の見えない人々の(時々滑稽にも見える)動作が、演劇や映画を見ているように思い浮かべられる。目が見える医者の妻を通して伝えられる、嗅覚や触覚の表現も、とてもリアリティを持っている。
レイプや殺人シーンの描写があまり具体的でなかったのはよかった。もし他のシーンと同じように描かれていたらちょっとトラウマになりそう。
絶望感漂うストーリーだけれど、なんだかんだで悪人は粛清され、最後は突然に人々の眼が見えるようになって話は終わる。
眼が見える、という土台の上にこの社会が成り立っていることはよくわかった。では、眼が見えない人の社会というのは、どのような可能性があり、どう構築され得るのか?結局そこまでは描かれなかったのは残念。しかし、それは読者が考えることなのかもしれない。