【感想・ネタバレ】北斎になりすました女 葛飾応為伝のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 こんなに魅力的な絵を描く応為が、あえて自分の名で絵を描かなかったのか、それとも描けなかったのか。
 本書では、北斎の名のほうが売れるからとされている。
 また、江戸時代の女流絵師が「わかっていないだけで、実際には相当な数」活躍していたはず、と。封建的な男社会で、女性に期待されていたのは子供を産み育てること。とはいえ、町民の生活はカツカツだから、実際には女性たちも内職や亭主の仕事を手伝って家計を支えていたとある。忙しいにもほどがある。
 応為の絵は本当に闇が美しくて、表紙絵の「夜桜美人図」と「吉原格子先之図」が特に好き。

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2020年10月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「なりすました」って、随分強い言葉だと思うのですが、この本を読み終わった時には納得でした。

天才葛飾北斎の娘として、ずっと父の背中を見て絵と向き合ってきた応為こと栄。
炊事洗濯掃除が嫌いで、一度結婚したもののすぐに離縁され、その後ずっと父の仕事を手伝って暮らす。

一般的なイメージとして北斎は天才と思うのですが、実は北斎、めっちゃ勉強家。
若かりし頃、勝川春章に弟子入りしているにもかかわらず、こっそりとほかの流派にも弟子入りして絵を学び、結局師匠にばれて破門され、一匹狼の絵師としてやっていくことになる。
でもって、生涯絵の勉強を続けていたというのだから頭が下がる。
もちろん西洋画だって独学で勉強した。

でも、ダイナミックな構図と迷いのない描線は、やっぱり天性のものなのだろう。
父が反故にした紙を見ながら応為もまた独学で絵をものにした。

そしていつしか父親の片腕として、作画を手伝うことになる。
北斎自身が、女性画は応為にかなわないと認めるほどの腕前。
ではなぜ、彼女は父親の黒子に甘んじていたのか。
それは、北斎の名前で絵を描いたほうが高く売れるからだと、著者は語る。
また、時代的にも女性絵師が社会的に評価されていたとはいえなかったから余計だろう。

北斎として絵を描くことを自ら選び、父にも認められた応為。
彼女の書いた絵が何枚も紹介されているが、ぱっと見日本画とは思えないのです。
光と影のコントラストで、奥行きがあり、空間の力が強い。

朝井まかての『眩(くらら)』の表紙に葛飾応為の絵が使われていますので、見てみてください。
西洋人が描いた日本の風俗のように見えます。

指先の細やかさ、着物の柄の歪み、ほつれ毛等、女性なら出の細やかさでは北斎を圧倒する応為。
だからこそ、北斎の名で書かれた作品の中にある応為の作品が、後世次々に明らかになったのだ。

けれど、浮世絵としてのオリジナルを書く才能はやはり足りなかったとみえる。
北斎漫画を手本にして、父の作品をより良いものにしあげる腕は充分にあったのに。

大き過ぎる父親を持つ苦労はあったろうが、画家として満足のいく生涯だったのではないだろうか。
絵を描くことだけが幸せだった父子。
そういう生き方に圧倒された。

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2022年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 葛飾応為、近年の小説やドラマ等メディアに登場することが多い(ここダジャレです)。生没年は不詳で、現存する絵も十数点しかない。この葛飾北斎の娘お栄の謎を追った作品。父北斎の創作に深く関り、文中の言葉を借りると「最高のアシスタント」だったと。北斎の代作もしていたらしい。

 ミステリーぽっくて、読んでいて面白い。ただ、もう少し文中に登場する「絵」を掲載してもらいたい。そうすると、「絵」に対する説明がわかりやすくなる。この辺は、いろいろ大人の事情がありそうですが。

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2020年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

絵画ミステリー?ノンフィクション?
ジャンル分けが難しいけど、とにかく面白い。
学術書という訳ではないので、憶測で書いてる部分も少なからずあるのかな?とは思う。
でもあの当時の90歳って相当の高齢な訳だから、誰かが晩年の北斎の絵を手伝ってた可能性は高い訳で、それが応為だとして全くおかしくない。いつの間にか手伝いの量が多くなって、影武者の様に描いていた可能性だって大いにあるよね。
応為はどういう気持ちだったのか。ただ絵を描ければそれで嬉しかったのかな。
話も面白いけど、応為の作品がどれも素敵な事に感動した。女の人特有の繊細さ、光と影のコントラストが素晴らしい。一度生で見てみたいな。

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2020年07月26日

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