あらすじ
全31巻からなる巨大説話集のうち、震旦(中国)を舞台にした仏教起源、仏霊験、法霊験、因果応報、そして世俗の説話を集めた巻六~十を収録。玄奘三蔵、孟宗、始皇帝、高祖、玄宗、楊貴妃、孔子……と著名な人物たちが豊かな人間像を描き、教訓を世に遺す。講談社学術文庫刊『今昔物語集』(六)~(九)より現代語訳を抽出し、一冊に再編集。既刊『本朝世俗篇(上・下)』『天竺篇』に続く第4弾。
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講談社学術文庫
今昔物語集 震旦篇 全現代語訳
訳:国東 文麿
出版社:講談社
震旦とは、中国のこと、本書で始めて知りました。秦をサンスクリット語でチーナスターナと読んだものの音写で当てた言葉のようです。中国国内では、王朝名を、その祖がでた地の名を基にしているが、対外的には、中国は、支那なので、間違いではない。
本書では、中国に仏教が伝来したのは、始皇帝の時期で、焚書坑儒の時に、仏典も失われたこととなっているが、定説では、中国に仏教が伝来するのは、後漢なので違和感があります。
話ニに、後漢の明帝のときに、僧が来たことが書かれている。おそらく、これが伝来のことだろう。
梁の武帝に、達磨大師が来朝、以後、鳩摩羅什、玄奘三蔵、胎蔵界曼荼羅の伝来などが続く。
仏教教団は組織化されていくので、自己救済の小乗(上座部)仏教から、大乗仏教へと拡大していくのは、教団維持のためだったように思えてしまう。
紙の国である、中国では、経典がやはり、もてはやされる。もともとは、経典というのは、五経四書といって、儒教の聖典を言うのである。筆写にあたって、一言一句間違えないように、経典の字数を数えるような民族なのである。そして、古代印度語でかかられた、お経について、漢訳できないところは、そのまま音写にとどめている。般若心経の、羯諦羯諦波羅羯諦がそれである。印度・中国の文明の衝突ともいえる。
天竺編にくらべると、割とサクサクと読めてしまう。
<震旦編>
華厳経
摩訶般若波羅蜜経
四阿含経
一切経
維摩経
阿弥陀経
金光明経
観無量寿経
大般若経
法華経 等
<天竺編:原本まえがき>より
冒頭にある原本まえがきにある、マップは以下のとおりです
講談社学術文庫では、本朝仏教説話に関する出版はありません
第1巻 天竺 仏教史、仏像霊験説話
第2巻 天竺 霊験説話
第3巻 天竺 霊験説話
第4巻 天竺 因果応報話
第5巻 天竺 因果応報話* ~ここまで講談社学術文庫天竺編(印度編)
第6巻 震旦 仏教史、仏像霊験説話
第7巻 震旦 霊験説話
第8巻 欠 推定 菩薩諸天霊験説話
第9巻 震旦 因果応報話
第10巻 震旦 世俗説話* ~ここまで講談社学術文庫震旦編(中国編)
第11巻 本朝仏教説話 仏教史
第12巻 本朝仏教説話 仏教史、三宝霊験説話、仏像霊験説話
第13巻 本朝仏教説話 仏像霊験説話
第14巻 本朝仏教説話 霊験説話
第15巻 本朝仏教説話 霊験説話
第16巻 本朝仏教説話 観音霊験説話
第17巻 本朝仏教説話 地蔵その他霊験説話
第18巻 欠
第19巻 本朝仏教説話 因果応報話
第20巻 本朝仏教説話 因果応報話
第21巻 欠 推定 皇室関係説話 ~第11巻から第21巻は、講談社学術文庫未出版
第22巻 本朝世俗説話 藤原氏逸話
第23巻 本朝世俗説話 僧俗、剛力話、
第24巻 本朝世俗説話 工芸、医術、陰陽、管弦、詩歌
第25巻 本朝世俗説話 源平武人
第26巻 本朝世俗説話 地方民衆の運命談 ~ここまで講談社学術文庫本朝世俗編(上)
第27巻 本朝世俗説話 霊鬼、狐、野猪の怪異談*
第28巻 本朝世俗説話 滑稽諧謔談
第29巻 本朝世俗説話 盗賊談
第30巻 本朝世俗説話 恋愛、和歌伝説
第31巻 本朝世俗説話 雑記、口碑伝* ~ここまで講談社学術文庫本朝世俗編(下)
いわゆる奇譚は、第5、10、27、31巻にあります。
目次
巻六
震旦の秦の始皇の時に、天竺の僧渡れる語 第一
震旦の後漢の明帝の時に、仏法渡れる語 第二
震旦の梁の武帝の時に、達磨渡れる語 第三
康僧会三蔵、胡国に至りて仏舎利を行じ出せる語 第四
鳩摩羅焔、仏を盗み奉りて震旦に伝へたる語 第五
玄奘三蔵、天竺に渡りて法を伝へて帰り来れる語 第六
善無畏三蔵、胎蔵界曼陀羅を震旦に渡せる語 第七
金剛智三蔵、[[[両界曼荼羅#金剛界曼陀羅|金剛界曼陀羅]]を震旦に渡せる語 第八
不空三蔵、仁王呪を誦して験を現せる話 第九 第九
仏陀波利、尊勝真言を震旦に渡せる語 第十
震旦の唐の虞安良、兄の釈迦の像を造るに依りて活へるを得たる語 第十一
震旦の疑観寺の法慶、釈迦の像を造るに依りて活へるを得たる語 第十二
震旦の李大安、仏の助けに依りて、害せられしに活へるを得たる語 第十三
震旦の幽洲の都督張亮、雷に値ひしに、仏の助けに依りて命を存らへたる語 第十四
震旦の悟真寺の恵鏡、弥陀の像を造りて極楽に生れたる語 第十五
震旦の安楽寺の恵海、弥陀の像を画きて極楽に生れたる語 第十六
震旦の開覚寺の道喩、弥陀の像を造りて極楽に生れたる語 第十七
震旦の并洲の張の元寿、弥陀の像を造りて極楽に生れたる語 第十八
震旦の并洲の道如、弥陀の像を造れる語 第十九
江陵の僧亮、弥陀の像を鋳たる語 第二十
震旦の淄洲の司馬、薬師仏を造りて活へるを得たる語 第二十一
震旦の貧しき女、銭を薬師の像に供養して富を得たる語 第二十二
震旦の淄洲の女、薬師仏の助けに依りて平らかに産するを得たる語 第二十三
震旦の夏侯均、薬師の像を造りて活へるを得たる語 第二十四
震旦の雋恵(せんゑ)、阿閦仏(あしゅくぶつ)を造りて歓喜国に生れたる語 第二十五
震旦の国子祭酒粛璟、多宝を得たる語 第二十六
震旦の并洲の常慜(じょうみん)、天竺に渡りて盧舎那を礼せる語 第二十七
震旦の興善寺の含照、千仏を礼せる語 第二十八
震旦の汴洲(べんしゅう)の女、金剛界を礼拝して活へるを得たる語 第二十九
震旦の沙弥、胎蔵界を念じて難を遁れたる語 第三十
天竺の迦弥多羅、華厳経を震旦に伝へたる語 第三十一
震旦の僧霊幹、花厳経を講ぜる語 第三十二
震旦の王氏、華厳経の偈を誦して活へるを得たる語 第三十三
震旦の空観寺の沙弥、花蔵世界を観じて活へるを得たる語 第三十四
孫の宣徳、花厳経を書写せる語 第三十五
新羅の僧兪、阿含を受持せる語 第三十六
震旦の并洲の道如、方等を書写して浄土に生れたる語 第三十七
震旦の会稽山の陰県の書生、維摩経を書写して浄土に生れたる語 第三十八
震旦の法祖、閻魔王宮に於て楞厳経を講ぜる語 第三十九
震旦の道珍、始めて阿弥陀経を読める語 第四十
張の居道、四巻経を書写して活へるを得たる語 第四十一
義浄三蔵、最勝王経を訳せる語 第四十二
震旦の曇鸞、仙経を焼きて浄土に生れたる語 第四十三
震旦の僧感、観無量寿経阿弥陀経を持てる語 第四十四
震旦の梓洲の郪(せい)県の姚待、四部の大乗を写せる語 第四十五
震旦の張の謝敷、薬師経の力に依りて病を除ける語 第四十六
震旦の張の李通、薬師経を書写して命を延べたる語 第四十七
震旦の童児、寿命経を聞きて命を延べたる語 第四十八
巻七
唐の玄宗、初めて大般若経を供養せる語 第一
唐の高宗の代に、書生大般若経を書写せる語 第二
震旦の豫洲の神母、般若を聞きて天に生ぜる語 第三
震旦の僧智、諳に大般若経二百巻を誦せる語 第四
震旦の并洲の道俊、大般若経を写せる語 第五
震旦の霊運、天竺に渡りて般若の在ます所を踏める語 第六
震旦の比丘、大品般若を読誦して天の供養を得たる語 第七
震旦の天水郡の志達、般若に依りて命を延べたる語 第八
震旦の宝室寺の法蔵、金剛般若を誦持して活へるを得たる語 第九
震旦の并洲の石壁寺の鴿、金剛般若経を聞きて人に生れたる語 第十
震旦の唐の代に、仁王般若の力に依りて雨を降らせたる語 第十一
震旦の唐の代に、大山の廟に宿りして仁王経を誦せる僧の語 第十二
恵表比丘、無量義経を震旦に渡せる語 第十三
震旦の法花を持せる者、脣舌を現ぜる語 第十四
僧、羅刹女の為に嬈乱(ねうらん)せられしに法花の力に依りて命を存らへたる語 第十五
震旦の定林寺の普明、法花経を転読して霊を伏せる語 第十六
震旦の会稽山の弘明、法花経を転読して鬼を縛せる語 第十七
震旦の河東の尼、法花経を読誦して持経の文を改めたる語 第十八
震旦の僧、行きて太山の廟に宿りして法花経を誦し神を見たる語 第十九
沙弥、法花経を読むに二字を忘れしが遂に悟るを得たる語 第二十
豫洲の恵果、法花経を読誦して厠の鬼を救へる語 第二十一
瓦官寺の僧恵道、活へりて後法花経を写せる語 第二十二
震旦の絳洲の孤山の僧、法花経を写して同法の苦を救へる語 第二十三
恵明、七巻を八座に分ちて法花経を講ぜる語 第二十四
震旦の絳洲の僧徹、法花経を誦して臨終に瑞相を現ぜる語 第二十五
震旦の魏洲の史、雀産武、前生を知りて法花を持せる語 第二十六
震旦の韋仲珪、法花経を読誦して瑞相を現ぜる語 第二十七
震旦の中書令峰文本、法花を誦して難を免れたる語 第二十八
震旦の都水の使者蘇長の妻、法花を持して難を免れたる語 第二十九
震旦の右監門の校尉、李山竜、法花を誦して活へるを得たる語 第三十
馬を救はむが為に法花経を写して難を免れたる人の語 第三十一
清斉寺の玄渚、道明を救はむが為に法花経を写せる語 第三十二
三十三~四十話は欠話
震旦の仁寿寺の僧道愻(だうそん)、涅槃経を講ぜる語 第四十一
震旦の李思一、涅槃経の力に依りて活へれる語 第四十二
震旦の陳公の夫人豆盧氏、金剛般若を誦せる語 第四十三
河東の僧道英、法を知れる語 第四十四
震旦の幽洲の僧知菀(ちをん)、石の経蔵を造りて法門を納めたる語 第四十五
真寂寺の恵如、閻魔王の請を得たる語 第四十六
震旦の邵師弁、活へりて戒を持せる語 第四十七
震旦の華洲の張法義、懺悔に依りて活へれる語 第四十八
巻八 欠
巻九
震旦の郭巨、老いたる母に孝りて黄金の釜を得たる語 第一
震旦の孟宗、老いたる母に孝りて冬に笋を得たる語 第二
震旦の丁蘭、木の母を造りて孝養を致せる語 第三
魯洲の人、隣の人を殺して過を負はざる語 第四
会稽洲の楊威、山に入りて虎の難を遁れたる語 第五
震旦の張敷、死にたる母の扇を見て母を恋ひ悲しめる語 第六
会稽洲の曹娥、父の江に入りて死にけるを恋ひて自らもまた身を江に投げたる語 第七
欧尚、死にける父を恋ひて墓に奄を造りて居住せる語 第八
震旦の禽堅、夷の域より父を迎へて孝養せる語 第九
震旦の顔鳥、自ら父の墓を築ける語 第十
震旦の韓伯瑜、母の杖を負ひて泣き悲しめる語 第十一
朱百年、悲しき母が為に寒き夜に衾を脱げる語 第十二
□人、父の銭を以て買ひ取りし亀を河に放てる語 第十三
震旦の江都の孫宝、冥途に於て母を済ひて活へれる語 第十四
河南の元大宝、死にて報を張叡冊の夢に告げたる語 第十五
索冑、死にて沈裕の夢に官を得べき期を告げたる語 第十六
震旦の隋の代の人、母の馬と成れるを得て泣き悲しめる語 第十七
震旦の韋慶植、女子の羊と成れるを殺して泣き悲しめる語 第十八
震旦の長安の人の女子、死にて羊と成りて客に告げたる語 第十九
震旦の周の代の臣伊尹が子伯奇、死にて鳴と成りて継母に怨を報ぜる語 第二十
震旦の代洲の人、畋猟を好みて女子を失へる語 第二十一
震旦の兗洲(えんしう)の都督遂安公、死にし犬の責を免れたる語 第二十二
京兆の潘果、羊の舌を抜きて現報を得たる語 第二十三
震旦の冀洲の人の子、鶏の卵を食して現報を得たる語 第二十四
震旦の隋の代に、天女の姜略、鷹を好みて現報を感ぜる語 第二十五
震旦の隋の代に、李寛、殺生に依りて現報を得たる語 第二十六
震旦の周の武帝、鶏の卵を食せるに依りて冥途に至りて苦を受けたる語 第二十七
震旦の遂洲の摠管孔恪(そうくわんくかく)、活へりて懺悔を修せる語 第二十八
震旦の京兆の殷安仁、冥途の使に免されたる語 第二十九
震旦の魏郡の馬生嘉運、冥途に至りて活へるを得たる語 第三十
震旦の柳智感、冥途に至りて帰り来れる語 第三十一
侍御史孫迴璞(そんのかいはく)、冥途の使の錯に依りて途より帰れる語 第三十二
震旦の大史令傅奕、冥途に行ける語 第三十三
震旦の刑部の侍郎宗行質、冥途に行ける語 第三十四
震旦の庾抱(ゆはう)、曾氏に殺されて怨を報ぜる語 第三十五
震旦の眭[3]仁蒨[4](すいのにんせん)、冥道の事を知らむと願へる語 第三十六
震旦の周善通、戒を破りたるに依りて現に財を失ひて遂に貧賤を得たる語 第三十七
後魏の司徒、三宝を信ぜずして現報を得て遂に死にたる語 第三十八
震旦の卞士瑜の父、功を価はずして牛と成れる語 第三十九
震旦の梁の元帝、誤ちて珠を呑みしに一の目眇める語 第四十
隋の大業の代に、獄吏悪行に依りて、子の身に疵有りて死にたる語 第四十一
河南の人の婦、姑に蚯蚓の羹を食せしめたるに依りて現報を得たる語 第四十二
晋の献公の王子申生、継母麗姫の讒に依りて自ら死にたる語 第四十三
震旦の莫耶、剣を造りて王に献じたるに子の眉間尺を殺されたる語 第四十四
震旦の厚谷、父を謀りて不孝を止めたる語 第四十五
三人、樹下に来り会ひて其の中の老いたるに孝れる語 第四十六
巻十
秦の始皇、感楊宮に在りて世を政てる語 第一
漢の高祖、未だ帝王に在まさざりし時の語 第二
高祖、項羽を罰ちて始めて漢の代に帝王と為りし語 第三
漢の武帝、張騫を以て天河の水上を見しめたる語 第四
漢の前帝の后王照君、胡国に行ける語 第五
唐の玄宗の后上陽人、空しく老いたる語 第六
唐の玄宗の后楊貴妃、皇の寵に依りて殺されたる語 第七
震旦の呉招孝、流れたる詩を見て其の主を恋ひたる語 第八
臣下孔子に、道に行き値へる童子の問ひ申せる語 第九
孔子逍遥せしに、栄啓期に値ひて聞ける語 第十
荘子、□粟を請ふ語 第十一
荘子人の家に行きたるに、主雁を殺して肴に備へたる語 第十二
荘子、畜類の所行を見て走り逃げたる語 第十三
費長房、夢に仙の法を習ひて蓬莱に至りて返れる語 第十四
孔子、盗跖に教へむが為に其の家に行きしに怖ぢて返れる語 第十五
養由、天に十の日現じたる時、九つの日を射落せる語 第十六
李広が箭、母に似たる巌に射立てる語 第十七
霍大将軍、死せる妻に値ひて打たれて死にたる語 第十八
不信蘇規、鏡を破り妻に与へて遠くに行きける語 第十九
直心紀札、剣を猪君が墓に懸けたる語 第二十
長安の女、夫に代りて枕を違へて敵の為に殺されたる語 第二十一
宿駅の人、遺言に随ひて金を死にし人に副へて置きたるに徳を得たる語 第二十二
病、人の形と成りしが、医師其の言を聞きて病を治せる語 第二十三
震旦の賈誼、死にて後墓に於て文を子に教へたる語 第二十四
高鳳、并洲の刺史に任じて旧き妻を迎へたる語 第二十五
文君、箏に興じて値ひし相如と夫妻と成れる語 第二十六
震旦の三人の兄弟、家を売りしに荊の枯るるを見て、直を返して返り住める語 第二十七
震旦の国王、江に行きて魚を鉤りしに大きなる魚を見て怖れて返れる語 第二十八
震旦の国王、愚かにして玉造の手を斬れる語 第二十九
漢の武帝、蘇武を胡塞に遣はせる語 第三十
二つの国互に合戦を挑める語 第三十一
震旦の盗人、国王の倉に入りて財を盗みしに父を殺せる語 第三十二
生贄を立つる国の王、此を止めて国を平げたる語 第三十三
聖人、后を犯して国王の咎を蒙りて天狗と成れる語 第三十四
国王、百丈の石の率堵婆を造りて工を殺さむとせる語 第三十五
嫗の日毎に見し卒堵婆に血を付けたる語 第三十六
長安の市に粥を汲みて人に施せし嫗の語 第三十七
海の中にして二つの竜戦ふに、猟師一つの竜を射殺して玉を得たる語 第三十八
燕丹、馬に角を生ひしめたる語 第三十九
利徳明徳、酒に興じて常に行き会へる語 第四十
ISBN:9784065186930
判型:文庫
ページ数:576ページ
定価:1850円(本体)
2020年02月10日第1刷発行
Posted by ブクログ
全三十一巻からなる巨大説話集の中から、震旦(中国)が舞台となる霊験談・奇譚を集めた巻六から巻十まで収録されている。巻十では中国歴史上の人物の話もあった。中国文学の授業で扱った王昭君の話が好きなのだが、授業で行った時より掲載されている文章のほうが王昭君の主観が入っていた。自分の容姿への自信によって結果的に宮中から出れたことがハッピーエンドだと思っていたのに対し、本文では匈奴に娶られたのが嘆き悲しむことだと知って認識の間違いに驚いてしまった。霊験談(巻六~)では人が一度死後の世界に行く(仮死状態)→閻魔王に罪が重いと告げられ地獄行き寸前→菩薩・仏が表れて救う→生き返り神仏の存在を周囲に知らせ崇める、といった流れの話が多かった印象。そのほかにも両親が畜生道(多くの罪業によって人間の世よりひどい環境に落とされる)自らの功徳を両親に捧げる、といった流れの話も多かった。自分の功徳を他人に分け与えることが菩薩修行の一番大事なこと。檀波羅蜜(布施行)を指す。(利他の精神>>>>>自利の精神)それを強調する印象が強かった。心が優しい人のことを聖人と言ったりするけれど、いじめてくる継母にも歯向かわず親子の義理を果たしたり、鳥獣殺生による親自身の地獄行きを自分の徳によって救ったりするのを読んでいるともはや聖人というよりお人よしというか、ここまでにならないと救われないのか…と思ってしまう。というよりいい人・しっかりしている人が損をするという社会を見せられたようで悲しくなってきた。やめますねこの話。
とはいえ仏の存在をここまで体系的に、現代まで残っているというのは本当にすごいことだと思う。面白かった話をメモ程度にまとめておく。
<巻七 震旦の并洲の石壁寺の鳩、金剛般若経を聞きて人に生まるる語、第十>P214
石壁寺に巣を作った鳩。老僧が法花経及び金剛般若経を常に読誦していた。やがて二羽の雛が生まれる。いざ飛び立とうとするとき雛の翼は未熟で巣から落ち死んでしまう。老僧の経を聞いていた鳩は、その晩僧の夢に立ち、前世の罪により畜生の身になったが経典を聞いた功徳によって再び人間として生きることになったという…ということで鳥獣がいれば必ず経を読んで聞かせなさい。
<巻九 震旦の周の代、臣伊尹が子、伯奇、死して鳴鳥と成り、継母に怨を報ずる語、第二十>P345
継母の讒言により生家を追い出された伯奇。野山をさまよい父に真実が伝わらない悲しみと母への怨みを抱えたまま、ついに死んで鳴鳥(モズの一種)になった。鳥になった伯奇は帰郷し、継母が自分を陥れた真実を告げ怨恨の歌を歌う。息子を信じなかった父は深く後悔し、後妻の仇討ちを決行する。親へのマイナス感情が不義なことで重い罪業なのに対しこの話はかなり特殊な印象を受けた。