【感想・ネタバレ】今昔物語集 震旦篇 全現代語訳のレビュー

あらすじ

全31巻からなる巨大説話集のうち、震旦(中国)を舞台にした仏教起源、仏霊験、法霊験、因果応報、そして世俗の説話を集めた巻六~十を収録。玄奘三蔵、孟宗、始皇帝、高祖、玄宗、楊貴妃、孔子……と著名な人物たちが豊かな人間像を描き、教訓を世に遺す。講談社学術文庫刊『今昔物語集』(六)~(九)より現代語訳を抽出し、一冊に再編集。既刊『本朝世俗篇(上・下)』『天竺篇』に続く第4弾。

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Posted by ブクログ

全三十一巻からなる巨大説話集の中から、震旦(中国)が舞台となる霊験談・奇譚を集めた巻六から巻十まで収録されている。巻十では中国歴史上の人物の話もあった。中国文学の授業で扱った王昭君の話が好きなのだが、授業で行った時より掲載されている文章のほうが王昭君の主観が入っていた。自分の容姿への自信によって結果的に宮中から出れたことがハッピーエンドだと思っていたのに対し、本文では匈奴に娶られたのが嘆き悲しむことだと知って認識の間違いに驚いてしまった。霊験談(巻六~)では人が一度死後の世界に行く(仮死状態)→閻魔王に罪が重いと告げられ地獄行き寸前→菩薩・仏が表れて救う→生き返り神仏の存在を周囲に知らせ崇める、といった流れの話が多かった印象。そのほかにも両親が畜生道(多くの罪業によって人間の世よりひどい環境に落とされる)自らの功徳を両親に捧げる、といった流れの話も多かった。自分の功徳を他人に分け与えることが菩薩修行の一番大事なこと。檀波羅蜜(布施行)を指す。(利他の精神>>>>>自利の精神)それを強調する印象が強かった。心が優しい人のことを聖人と言ったりするけれど、いじめてくる継母にも歯向かわず親子の義理を果たしたり、鳥獣殺生による親自身の地獄行きを自分の徳によって救ったりするのを読んでいるともはや聖人というよりお人よしというか、ここまでにならないと救われないのか…と思ってしまう。というよりいい人・しっかりしている人が損をするという社会を見せられたようで悲しくなってきた。やめますねこの話。
とはいえ仏の存在をここまで体系的に、現代まで残っているというのは本当にすごいことだと思う。面白かった話をメモ程度にまとめておく。

<巻七 震旦の并洲の石壁寺の鳩、金剛般若経を聞きて人に生まるる語、第十>P214
石壁寺に巣を作った鳩。老僧が法花経及び金剛般若経を常に読誦していた。やがて二羽の雛が生まれる。いざ飛び立とうとするとき雛の翼は未熟で巣から落ち死んでしまう。老僧の経を聞いていた鳩は、その晩僧の夢に立ち、前世の罪により畜生の身になったが経典を聞いた功徳によって再び人間として生きることになったという…ということで鳥獣がいれば必ず経を読んで聞かせなさい。

<巻九 震旦の周の代、臣伊尹が子、伯奇、死して鳴鳥と成り、継母に怨を報ずる語、第二十>P345
継母の讒言により生家を追い出された伯奇。野山をさまよい父に真実が伝わらない悲しみと母への怨みを抱えたまま、ついに死んで鳴鳥(モズの一種)になった。鳥になった伯奇は帰郷し、継母が自分を陥れた真実を告げ怨恨の歌を歌う。息子を信じなかった父は深く後悔し、後妻の仇討ちを決行する。親へのマイナス感情が不義なことで重い罪業なのに対しこの話はかなり特殊な印象を受けた。

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2026年02月09日

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