あらすじ
難聴を患いながらも、世界的なピアノコンクール「ショパン・コンクール」に出場するため、ポーランドに向かったピアニスト・岬洋介。しかし、ショパン・コンクールの会場で殺人事件が発生。遺体は手の指10本がすべて切り取られるという奇怪なものだった。岬は鋭い洞察力で殺害現場を検証していく!
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Posted by ブクログ
【全体を通して】
過去作より事件のスケールが上がり、ショパン・コンクールという舞台にふさわしく複数人のピアニストの個性が描き分けられていて、事件と音楽双方の勢いが凄かった。登場曲が多くて聴きながら読むのは大変だった(笑)。
今までは「先生」だった岬洋介が主人公ヤンの「ライバル」となり、海外にいるせいか少し幼く感じられたのも新鮮。ライバル関係やテロを通して成長していくヤンを見守るのは切なかったけど、尊敬できると感じた。
【岬洋介、ついに戦争までも止める】
前作はヤクザ相手で驚いたけど、今回は爆破テロ相手に推理し、ノクターンで戦争を一時的に止め、黒幕の犯行も直前で阻止……。幼く感じたとは言え、25歳にして逞しすぎる。
最後のカミンスキを抑えた時は凄すぎて笑った。
【主人公ヤン・ステファンスの成長物語】
ヴィトルドとカミンスキの下で育ったヤンが、他の演奏を分析して自分の音楽に疑問を抱いていく展開が良かった。
特に榊場隆平の演奏を聴いた直後、文章自体が乱れて動揺を表現していたシーンは斬新で面白かった。威風堂々としていたヤンの取り乱しぶりも意外。
マリーの死を抱え、ドロドロした感情を音楽へと昇華させて「ヤンの音楽が開花した!」と壮大な拍手を浴びるシーンは、残酷だと思いつつ泣きそうになった。
【死ぬリスクを抱えてまで音楽を聴きに来る人々】
近くでテロが起きているのに、「抵抗」と称してコンクールを続行し客も集まる状況はかなり狂気的。「兵士」とも言えるのでは...
街全体がショパンの音楽に狂わされているのは格好良いと思ったけど、死んでしまっては元も子もない。
【何人もの演奏の書き分けが凄い】
各国奏者の個性が活きたピアノ表現の幅広さに驚いた。自分が聴けば全部「上手なピアノ」になっちゃいそうなのに、ヤンたちには豊かな情報として届いているのが羨ましい。作中の演奏を再現した音源を聴いてみたい。
【ヴィトルドに同情する余地が無い】
マリーの惨死直後のヤンに「どうでもいいからピアノを弾け」と声をかけるシーンは最悪だった。これでテロの犯人でないなら逆に救いようがないし、どんな過去があっても押し付けは見ていられなかった。
それでもヤンが才能と努力で優勝したことで、ヴィトルドは思い上がるだろうし、ヤンが離れても一生過ちに気づかないんだろうなと思った。
【残酷なテロ被害の表現】
今回は人間が起こした爆破テロの生々しさが際立っていた。ホールの中心で起きた事件にヤンが負傷しなかったのは奇跡だったし、「かつて人間だったもの」の描写には吐き気がした。
その後、夢中でお風呂に入りピアノの練習に向かうヤン。事件を忘れたい一心なのは分かるけど、テロと日常が隣り合わせな状況にゾッとした。
【番外編での入間登場】
気になっていた入間が番外編で再登場して嬉しかった。過去作の主人公2人の登場も熱かったし、読者を喜ばせるファンの塩梅がちょうど良かった。
Posted by ブクログ
物語はワルシャワの音楽一家の息子でショパンコンクールに参加するヤンの目を通し語られてゆく。
岬洋介はコンクールに最高齢演奏者として参加。日本からは辻井伸行を思わせる盲目のピアニストも参加。その彼がコンクール会場の一室で殺害されている人を見つける。殺されていたのはポーランドで発生するテロ事件の実行者と思われるテロリスト「ピアニスト」を追っていた刑事だった。
そしてコンテストの進行とワルシャワで発生するテロや殺人事件が交錯する中でピアニスト、ヤンの成長と岬洋介による「ピアニスト」の特定と遠く離れたアフガニスタンでの人質事件の解決への関与を描くお話し。
中山七里さんの音楽への造詣にはこのシリーズを読むたび驚かされるとともに、今回はワルシャワのショパンコンクールだったので漫画のピアノの森ファンとしては懐かしく読まさせていただきました。
Posted by ブクログ
岬洋介シリーズ第4弾
(3作品目のドビュッシー前奏曲飛ばしてしまった)
テロとショパンコンクール!?
相反する舞台と思いきや
当時のポーランドで実際に起こった事件や
事故も背景にあるようなので読み応えあり。
もちろん変わらず音楽小説ではあるのですが
世界でいま起きている悲劇(戦争)を思うと
現実に音楽で戦争を争いを止めることが
できたらいいのにと、心の底から願った。
ノクターンを聴きながら読むと
ほんとに泣けてくる。いやぁ、七里さんの表現力が
素晴らしいのです、いやほんとに。
Posted by ブクログ
ショパンコンクールの進行とテロ、殺人事件発生
テロリストの正体は早々にわかりミステリーとしては今ひとつだが、ヤンの成長と覚醒、タリバンの攻撃を止めさせた岬の演奏が良かったな
出てくる楽曲に合わせyoutubeで聴きながら読むと臨場感たっぷりでおすすめです
Posted by ブクログ
前2冊よりもスケールが大きくなり、舞台はポーランド、事件は爆弾テロ、主人公もポーランド人
演奏されている音楽の描写はこれまでどおり 全然分からないけど分かる気持ちにさせてくれる
メタな視点から犯人が誰かを考えて、全然違った
最終章がエピローグかと思ったらコミックのオマケについてるような小話だった
Posted by ブクログ
面白かったけど、
ちょっと音楽の知識がないと理解が難しいかな。
岬シリーズを読んだのは二作目。
ポーランドのショパンコンクール中、
テロ爆破事件に巻き込まれる岬と
ポーランド出身のコンテスタントのヤン。
テロの恐怖に打ち勝ちながらコンクールに進み、
最後は成長した姿でコンクールを優勝する。
ただ、あまり最後にどんでん返しがあるわけでもなく、
テロ首謀者の工夫があるわけでもなく、
そのまま終わってしまった感じがする。
何かを得られるわけではなく、驚きもなかったのが残念。
ストーリー自体は面白かった。
Posted by ブクログ
岬先生の出番が少なくて少しガッカリ。
でもヤンが慕ってたカミンスキーが黒幕だったなんてヤンの気持ちを考えると悲しかった。
・「ミスがあるのは仕方がない。しかしミスを放置するのは望ましくない」
・像を見上げる。二百年前に生まれ、ポーランドを愛し、数多の音楽と心臓だけを故国に残した男。その顔は微笑しているようにも、哀しんでいるようにも見える。
・ベートーヴェンを難なく弾きこなした者がショパンを弾くとたちまちアラを出し、ショパンを見事に弾ききった者は他の作曲家の曲も完璧に弾いてしまうという事実だ。言い換えればショパンを完璧に弾くピアニストは如何なる曲も完璧に弾ける。ショパンを聴くまでその才能に評価を下すのは待て、という言葉さえある。ショパンの曲のみを審査対象とするショパン・コンクールの入賞がピアニストにとって最高の権威であるのはそういう理由だ
・彼の魂は常にポーランドと共にあった。彼の作る曲は故国への望郷と愛情の念で彩られている。
・これが岬のピアニズムの麻薬性だ。どんなに身構えていても、どれだけ拒絶しても、いったん音を耳にすると否応なくその世界に引き摺り込まれ、後は岬の意のままにされてしまう。
・『アースィフ・アリー・ザルダーリ大統領です。ショパン・コンクールのファイナリスト、ヨウスケ・ミサキ。このメッセージを見てくれているか』 突然出てきた岬の名前に口が開いた。『君には礼を言わなくてはいけない。二十日のことだ。アフガニスタン領内でパキスタン市民二十四人がタリバンの人質になっていた。そして救出を依頼したアメリカ軍が敵の攻撃に手をこまねいている時、君の演奏するショパンが戦場に流れたのだ。たった五分間の演奏だった。しかしその五分間、砲撃も銃撃も一切止んだ。あのタリバンがそのピアノの旋律が流れているうちは一発の弾も撃たなかった。そう、ただの一発もだ。お蔭で二十四人の人質はその隙に乗じて脱出することができた』 大統領の語尾が微かに震えていた。
・ミサキよ。コンクールの審査員たちは君に何も与えなかったと聞いた。だが君のピアノは我々に奇蹟をもたらしてくれた。君の奏でたノクターンで二十四人もの命が救われたのだ。審査委員たちが与えないのなら我々が君に感謝と栄誉を与えよう。本当にありがとう、ミサキ。君の音楽がいつまでもショパンの魂と共にあることを願う。最後まで見ずにヤンは今来た道を引き返した。