【感想・ネタバレ】白村江のレビュー

あらすじ

●歴史・時代小説ベスト10(週刊朝日/2017年)第1位 ●歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞 ●本屋が選ぶ時代小説大賞2位 白村江の戦いの“真の勝者”とは――東アジアを舞台にした歴史大河小説の文庫版を電子書籍化! 六六〇年、唐・新羅連合軍によって百済は滅亡、王とその一族は長安に送られた。遺された王族は倭国へ亡命していた豊璋ただ一人――。新羅の金春秋、高句麗の泉蓋蘇文、倭の蘇我入鹿、葛城皇子(のちの天智天皇)……各国の思惑は入り乱れ、東アジアは激動の時代を迎える。大化の改新、朝鮮半島の動乱、そして白村江の戦いへと連なる歴史の裏でうごめいていた陰謀とは。圧倒的スケールで描かれた感動必至の長編小説。

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Posted by ブクログ

予想以上に面白かった古代史伝奇小説。倭国が敗れた「白村江の戦い」をとんでもない想像力で描く。ほとんどはフィクションだが「日本書紀」等に則り史実らしく書かれていて重厚な印象すらある。520ページが短く感じる2017年度歴史小説第1位

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2025年02月02日

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ネタバレ

唐、高句麗、新羅、百済、倭の七世紀における角逐の焦点を白村江の戦いにおいて、それに至る経緯を21年前から書き切る。

白村江の戦いが天智天皇(葛城皇子)と新羅の金春秋(と息子の金法敏)の秘密同盟による合作という新しい見方に仰天。余豊璋、金春秋、泉蓋蘇文、葛城皇子、中臣鎌足、蘇我入鹿、田来津などの各国の登場人物もビビッドに描かれており飽きなかった。

歴史的な通説としては、仏教伝来など伝統的な友好国であった百済の滅亡に際して、同国遺臣の要請に応じて軍勢も出すも軍事大国の唐水軍に会えなくて倭水軍は敗れ、百済再興も潰えたが、九州に水城を築きつつ唐との関係は何とか維持して遣唐使の派遣まで漕ぎつけ、一方亡命百済人を受け入れたことで律令制、仏法、技術の発展に寄与した。この後、日本からの半島進出は倭寇を除き、秀吉まで無かったという理解だった。

本書では、葛城皇子と金春秋が政策調整を進めていく様が面白く、葛城皇子の構想は最後に語られる、主人公である余豊璋を裏切る形でだが。

・文化的には北方からの外来蛮族の扶余族の国である高句麗や百済ではなく、日本とも縁のある(日本から渡った?)韓族の国である新羅と結ぶ
・半島分裂ではなく友好的な新羅による統一によって北方脅威からの防壁にしたい。
・このため、それらしく見せつつ(亡命皇子の余豊璋を盛り立てて)百済を救援しつつ、わざと失敗する策を取る。これにより、誰の助けも無ければ百済人が団結して窮鼠猫を噛むところ、倭の支援を期待して仲間内の結束は脆くなるとともに、倭が敗北した時の絶望感が半端なくなり、国は解体される。これは倭が見捨てるよりも新羅による統一に好都合。白村江での実際の損害は限定するが、負けはある種喧伝して百済人の絶望感を強化する。
・この結果、亡国の百済人は新羅に降るか、倭に亡命することになる。倭としては、行き詰まっていた大化の改新の実施のための官人を亡命百済人が自発的に倭に来てくれることにより成し遂げられる。
・なお、戦う構えのために新羅領の2港を攻め、新羅は慌てふためいて撤退して外見を整えつつ、これらの港を百済人の倭への亡命拠点として活用する。
・唐との関係では、偶発的衝突として謝罪して新羅にも口添えしてもらう。  

あの時代に実際にここまで見越して外交を葛城皇子が練っていたとすれば傑物というほかない。

なお、体良く騙され、妻にも先立たれてしまった余豊璋はいいとこ無しだが、高句麗に逃げ、30年号に妻の名をもじって大祚栄として渤海を建国した(かも)という余韻を残していることも心憎い。実際には、高句麗滅亡時に唐に捕えられ、流刑に処されたことになっている。

どこまで事実に即しているかはわからないし、そもそも小説。とても面白かった。特に、葛城皇子に擬して練った外交構想はとても良かった。

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2025年01月05日

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歴史の教科書では「倭国・百済連合軍と唐・新羅連合軍が白村江で戦い、倭国軍が大敗。これをきっかけに百済が滅びる。」
という無機質な文章で片付けられていた出来事をこれでもかと深掘りした歴史長編。
百済の皇子が倭国に亡命するところから物語は始まり、朝鮮半島の動向、倭国内での政治分断から外交、決戦までの流れを人情も交えつつ描いている。
教科書では悪者にされている蘇我入鹿が善良、中臣鎌足と中大兄皇子(天智天皇)が悪者として登場するところが個人的には好みである。

戦いの後明かされる天智天皇の作戦には思わず唸った。
小説なので細部に多少の脚色はあるだろうが、白村江の戦いについても学べる一冊。

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2024年07月28日

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感動した。
分厚いけど、一気に読んでしまった。
小学校の歴史で習った、蘇我入鹿が登場したシーンに感動。入鹿カッコいいー!ってなった。

終末はページが飛ぶように過ぎ去って、感動。
ここ数年で1番面白かった!

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2024年07月07日

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古代の日本、朝鮮半島を舞台にした白村江の戦いを描いた。ただ、描いたものは戦いではなく、人それぞれの強い想い。エンターテイメントとしても非常に面白かった。
私の出身地は愛媛県の周木(しゅうき)。町誌によれば、もともとは古代朝鮮語で村を表す「スキ」が転じたものだという。白村江の村(スキ)だ。

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2022年01月14日

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新聞に載ってた広告を見て気になり購入。
個人的に馴染みが薄かった古代の日本が舞台だったが、壮大なスケールで描いており、かなりアツくなりながらページをめくった。
登場人物は皆キャラ立ってるが、完全に金春秋に感情移入して読んでいた。笑

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2020年05月06日

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歴史の用語として聞いたことは在っても、然程詳しく知るでもない「白村江の戦い」を背景とした作品だ。
「白村江の戦い」というものは、日本での対外政策の変遷、朝鮮半島の国々の相互関係、中国大陸の帝国の動向と様々な要素が絡み合い、関係した人々の様々な思惑が交錯した中で惹起したということになるのであろうか。そういうことに関して、倭国(日本)の要人や、結果的に倭国へ亡命していた百済の王子、百済の人々、新羅の要人というような幾人かの視点人物を設定して大胆な大河ドラマを展開している。
所謂<大化の改新>で誅殺される蘇我入鹿が序盤では大きな存在感を見せるが、途中からは葛城皇子(中大兄皇子)が大きな存在感を見せ、その軍師という感じの中臣鎌子が暗躍している。朝鮮半島の動きとしては、新羅の金春秋が大きな存在感を見せる。
朝鮮半島は百済、新羅、高句麗が鼎立していたが、百済は唐と結んだ新羅に滅ぼされてしまう。その百済の復興を目指したというのが「白村江の戦い」ということになる。作中世界は“古代”ということになるが…何か“現代”であっても在り得るかもしれないような、謀略が渦巻く世界である。
そうした“謀略”の世界に巻き込まれて行くこととなってしまう百済の王子が、王室の内紛で命を落としてしまいそうになった所から倭国へ逃れる形になり、蘇我入鹿が「将来の親衛隊」を育てようとしていた寄宿学校的な場所で育って行く様子というのが作中に在るのだが、そういう辺りも面白い。
こういうような「東アジア世界に在った古代の日本」というようなことを強く意識したような作中世界が展開する小説…個人的には、類例に余り思い当たらないが、一寸興味深かった…

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2020年03月05日

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主人公は百済から亡命してきた王で、物語は倭国への亡命から始まります。
白村江での合戦自体は最後の数十ページのみで、9割は合戦に至るまでの内容でした。
難しい漢字が多かったので電子書籍がおすすめ(すぐ調べれるため)
日本や韓国の歴史が好きな方には読んで欲しいです。
最後まで楽しめました!

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2025年10月25日

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日本が百済を救援するために唐・新羅連合軍と戦った白村江の戦い。
この戦いの結末、目的が語られる最終章に唸らされました。ミステリーの最後を読んでいたかのような驚き。
政治判断という言葉で切って捨てられる国の運命、人間の命。
有益無益しかない思考には、賞賛はないのですが、共感は多少なりともある。

なんというか、自分の悪癖というか成長できていない部分なんですが、冷静冷徹な大を助けるために小を捨てる、といったものに憧れてしまうという厨二の幼さがあります。
その部分に刺さったのが「白村江」で明かされた葛城皇子の陰謀。
もちろん、その陰謀の駒としていいように扱われても、己の生き様を全うした豊璋たちの素晴らしさがあってこそです。

予想以上に楽しかった「白村江」。いい小説に出会えました。歴史小説って面白いよね。

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2025年05月18日

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最初は難しくて、すこーしずつ読んでいましたが。
戦が近づくにつれ、面白くなりました!
百済王子、最後はどうなったんでしょうね、史実では。

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2023年12月02日

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新たな豊璋像の可能性を提案してくれた白村江。
白村江の戦いの驚きの説に興奮してしまった。
古代の歴史は創造力の翼を広げられる分野で、今後発見される遺跡や古文書が固い鎧を剥がしてくれるのだろう。
朝鮮半島と日本は深いつながりがあるのは間違いないが。

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2022年11月21日

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ネタバレ

古代の大陸との関わりを知りたくて読みました。
冒頭の導入は、凄惨で読むのを躊躇する場面もあったけれど、古代の戦、内乱の現実だったかもしれません。
その後は、歴史の流れが壮大なもので、敗北を恐れず、自分の誇りをとる者に、敗者の美学を感じました。

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2021年05月31日

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葛城皇子(中大兄皇子)と中臣鎌子が行った白村江の役。一般的には秀吉の朝鮮攻めと同様に失敗例とされているが、そこには思慮遠望が隠されていた。
物語は白村江の役から二十一年前の百済の皇太子が亡命するシーンから始まる。通り一遍の知識しか無かったので、どこまでが史実かが分からないが非常に興味深く読んだ。日本国内では蘇我入鹿の暗殺なども描かれ、今は乙巳の変と呼ばれる出来事などを歴史を思い出した。
少々長いが楽しめた。

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2021年03月13日

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ネタバレ

日本史の教科書に大和・百済連合軍が唐・新羅連合軍に敗れた戦として淡白に記載せれる白村江の戦い。本書では葛城皇子(中大兄皇子)の謀略の結果と描かれている。全く想像してなかった視点で面白く読めた

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2020年06月13日

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史実はそう多く残されていないので、数少ない史実の間を著者の想像で書き足しているのだろうが、面白い物語になっている。600年代って相当な未開の時代のように思われるが、飛行機や自動車は無いにせよ、人間社会のあり様についてはさして今と変わらないのだろう。国際色豊かな時代でもあったようだ。半島や中国との交流も盛んで、今ほど社会も固まっていなかったこの時代の空気感はどんな感じだったのだろうか。逆にもっと社会は固定化していたのかな。最初は蘇我入鹿が主人公かと思ったら途中から居なくなるし。最後は残念な結末ではあるが、主人公とみなされる彼が生き残って大事を成し遂げたので有ればそれは素晴らしい事だ。

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2020年05月31日

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圧倒的に面白い。あまり読むことの少ない古代の物語がいきいきと描かれている。葛城皇子のサイコパスぶりが恐ろしい。

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2020年04月24日

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 朝鮮半島の動乱、白村江の戦いの裏でうごめく陰謀を描いた歴史物語。

 自分が読んできた歴史小説の中で全く縁のなかった時代と舞台だったので、改めて自分の知らない歴史がまだまだあることを思い知らされました。

 また、作者がお得意の伝奇物かと思いきや本格的な歴史小説だったので、作者の新たな魅力を感じました。

 唐と朝鮮半島の三国と倭(日本)が当時から難しい関係であることがよくわかりました。

 その中でそれぞれの国の王たちがあらゆる権謀術数を駆使していく展開がとても興味深かったです。

 日本と朝鮮と中国がこれからもどのような関係になっていくのか、改めて考えさせられました。

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2020年03月08日

Posted by ブクログ

「白村江の戦い」については太平洋戦争以外で、日本が外国に負けた唯一の戦いという事しか知らなかった。またこの時代の朝鮮半島情勢についても知識が無かったので興味深く読めた。
多少のフィクションの部分も話しの流れとして違和感はなかった。それぞれの人物の思惑が入り乱れて物語の面白さが増し、何人かの人物に肩入れをしながら読んだ。

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2020年03月06日

Posted by ブクログ

ずっと読みたかった一冊を探していたら、なんと文庫になって登場していたー!
なれない地名、人名に時間はかかってしまったけど、じっくり楽しめた。
百済の滅亡の歴史と豊璋王子の成長、策略家新羅の金春秋、そして倭国の中臣鎌子、葛城皇子と蘇我入鹿。
葛城皇子が中大兄皇子だってちっともわかってなかった歴史オンチですが、大丈夫でした。江戸時代の歴史ものは人情があるものが多いのに、古代になると急に陰謀、策謀、こんなにもドロドロしてたのかしらね。

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2020年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大陸、半島、そして倭国。
なかなかにスケールの大きな作品てました。
葛城皇子が策士なのが、とても良い(^^)

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2020年01月23日

Posted by ブクログ

この時代のことは中学高校で習ったことレベルの知識しか無い。本書のような裏事情があったらそれはそれで面白いし興味深いが、設定にリアリティは感じなかった。

人物造形にももう一工夫ほしいが、それなりに面白かったので良しとします。

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2022年04月05日

Posted by ブクログ

まさに歴史小説という感じ。
時間を追うごとに主人公的存在が変わっていくので、好感が持てた人物が消えていくのが悲しい(笑)

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2021年04月11日

Posted by ブクログ

葛城皇子(中大兄皇子)が良い人間として書かれた物を読んだことがないが、今回もやはり全然好感が持てない男振りだった。
彼の傀儡として動いていく豊璋を見るのがとてもしんどかったけど、まさに「運命に抗おうとしている者は、かけがえのないほど美しい」んだなぁって思いました。そういう人間の苦しみが美しい文学になって私たちが甘受してるんだな…つら…

キャラクターがたっててよかった。

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2020年12月05日

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