あらすじ
管理会計は、将来の利益を生むための基本として、意思決定や投資の評価などのように、企業経営において欠かせない大事なナレッジです。予算管理、価格決定、受注可否判断、コストダウンなど、活用は多岐の分野で活用されますが、そのレベルの差がそのまま業績の差となって表れます。経理部など専門部門が担う「財務会計」とは異なり、技術部門、製造部門、生産管理、営業部門、情報部門、管理部門の第一線のマネジャーなどのすべての人が知っておくべきビジネス・ツールです。
本書は、「製品別採算管理」「事業ポートフォリオ管理」「投資案件管理」について、ケースをもとに企業の担当者に向けて実務的にまとめました。
【もくじ】
序章 管理会計とは何か
1.ケース:大手総合食品メーカーCEOの1日
2.経営ダッシュボード
3.将来の予測情報に基づく投資意思決定
4.管理会計とは何か?
第1章 製品別採算管理
1.製造業における製品別P/L管理
2.採算管理における販管費の取扱いと多軸管理の考え方
3.社内取引と仕切り価格
4.多品種変量生産での標準原価設定
5.多品種変量生産での原価差異分析
6.多品種変量生産での原価低減
7.製造・調達リードタイムが長い製品の採算管理
8.需給変動が大きい場合の採算管理
9.製品別採算管理によるPB製品の受注可否判断
10.サービス別採算管理
第2章 連結製品別採算管理
1.連結原価計算と連結製品採算管理
第3章 資本コストを意識した事業業績管理
1.事業とは
2.資本コストを意識した事業業績管理の基礎
3.投下資本の時価と簿価―事業別に資本コスト率を設定するか―
第4章 管理会計の基礎
1.P/L・B/S・C/Fとは何を表現しているのか
2.経営管理のための検討ポイント
第5章 投資管理(前編)
1.投資管理の全体像
2.投資計画作成―CGU―
3.投資計画作成―キャッシュフロー計画―
4.投資計画作成―投資判断―
第6章 投資管理 後編
1.投資実行のモニタリング
2.投資計画作成―2期にわたる投資―
3.実行後フォロー
終 章 P/L・B/S・C/Fとは何を表現しているのか
1.利益とは何を示しているのか
2.売上高とは何を示しているのか
3.営業キャッシュフローとは何を示しているか
4.フリーキャッシュフローとは何を示しているのか
5.B/S(貸借対照表)は何を表しているか
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Posted by ブクログ
管理会計の再学習に、ネットでお勧めされていたこの本を選択。著者はアットストリームコンサルティングの松永氏と内山氏。
感想。
とても良かったです。管理会計の『実務』というタイトル通り、実際に現場でどうするのか、という視点で書かれている、そんな気がします(私は現場で原価管理したことないので想像です)。
備忘録。
・月次決算は概算でもいいからなる早で知りたい。月の上旬に速報、その後確報で2回レポートされても十分。
・製品別PLの例は真似しやすい例示。売上高、売上原価、粗利があって、販売直接費を引いて製品貢献利益があり、その他販管費が引かれて営業利益へ。
・管理軸。代表的な軸は、部門別、顧客別、拠点別、チャネル別。
・販管費の多軸配賦は次の3つに分けて考えると良い。①直課‥特定の部門、製品、顧客のために直接発生したことがわかる場合に、その費用を直接負担させる。②個別配賦‥費目全体で親和性が高いもの、関係性の強弱がつけやすいもの。③一括配賦‥関連性が高い配賦基準がない場合、売上高とかの無難な基準で配賦。
・仕切価格の問題。まず、独立採算を明確に求める必要がなければ、仕切価格を設定した管理関係手法は行うべきではない。それでも設定する場合は「利益折半方式」が無難。
・製品別原価管理の目的。適切な販売単価、原価差異を認識しコスト低減に活かす、新製品の原価企画に活かす。
・標準原価と実際原価。原価標準表。大事。
・原価差異の分類分析の記載が、易しく細かくありがたい。
・限界利益(売上高-変動費)だけでなく、貢献利益(売上高-変動費-直接販売費)。そして貢献利益率が一定程度確保できる受注を。
・短期的に見れば、スポット案件で見れば、限界利益が黒字ならば受注すべき。長期的に考えると固定費を回収できるとか、会社全体の利益率、リソース配分の問題もあるので、貢献利益率に一定のハードルを設定して受注可否を判断したい。
・CVP分析の基本。費用の固変分解→限界利益と限界利益率の算出→損益分岐点売上高の算出→経営安全率の算出。
・連結で固変分解する方法の解説はわかりやすかった。合算して、川上側の貢献利益を消去し、固定費変動費を連結の観点かは再整理。また、実務上の負担を考慮して、現実的なやり方を選択しようという解決も参考になる。
・投下資本コストに見合う管理軸ごとの利益率確保。そのための事業部別BSの作り方の解説もあり。
・財管一致の必要/不必要。一長一短ですと。