あらすじ
星々は語らない。淡く見えるとも強く輝く――
探偵と元軍艦の宇宙船がコンビを組み
深宇宙(ディープ・スペーシズ)での事件を解決する表題作の他、
異文化に適応しようとした女性が偽りの自分に飲み込まれる「包嚢」、
宇宙船を身籠った女性と船の設計士の交流を描く「船を造る者たち」、
少女がおとぎ話の真実を知る「竜が太陽から飛びだす時」。
“アジアの宇宙”であるシュヤ宇宙を舞台に紡ぐ全9篇。
現代SFの最前線に立つ作家、日本初の短篇集。
【収録作品一覧】
「蝶々、黎明に墜ちて」(“Butterfly, Falling at Dawn”)
「船を造る者たち」(“The Shipmaker”)
2010年度英国SF協会賞最優秀短篇部門受賞
「包嚢」(“Immersion”)
2013年度ネビュラ賞短篇部門受賞、ローカス賞最優秀短篇部門受賞/2012年度英国SF協会賞最優秀短篇部門最終候補、
2013年度ヒューゴー賞最優秀短篇部門候補、2013年度シオドア・スタージョン記念賞候補
「星々は待っている」(“The Waiting Stars”)
2014年度ネビュラ賞ノヴェレット部門受賞/2014年度ヒューゴー賞最優秀ノヴェレット部門候補、
2014年度ローカス賞最優秀ノヴェレット部門候補
「形見」(“Memorials”)
2015年度ローカス賞最優秀ノヴェレット部門候補
「哀しみの杯三つ、星明かりのもとで」(“Three Cups of Grief, by Starlight”)
2015年度英国SF協会賞最優秀短篇部門受賞、2018年度イグノータス賞翻訳短篇賞受賞/2016年度ローカス賞最優秀短篇部門候補、2016年度ユージイ・フォスター記念賞候補
「魂魄回収」(“A Salvaging of Ghosts”)
2017年度ローカス賞最優秀短篇部門候補
「竜の太陽から飛びだす時」(“The Dragon That Flew Out of the Sun”)
「茶匠と探偵」(“The Tea Master and the Detective”)
2019年度ネビュラ賞ノヴェラ部門受賞、2019年度英国幻想文学大賞ノヴェラ部門受賞
/2019年度ヒューゴー賞最優秀ノヴェラ部門候補作、2019年度ローカス賞最優秀ノヴェラ部門候補作、
2019年度世界幻想文学大賞最優秀ノヴェラ部門候補作
内容(「BOOK」データベースより)
探偵と元軍鑑の宇宙船がコンビを組み深宇宙での事件を解決する表題作他、異文化に適応しようとした女性が偽りの自分に飲み込まれる「包嚢」、宇宙船を身籠った女性と船の設計士の交流を描く「船を造る者たち」、少女がおとぎ話の真実を知る「竜が太陽から飛びだす時」など、“アジアの宇宙”であるシュヤ宇宙を舞台に紡ぐ全9篇。現代SFの最前線に立つ作家、日本初の短篇集。2019年度ネビュラ賞を受賞した表題作他、ローカス賞・英国SF協会賞受賞作を含む。
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Posted by ブクログ
目次
・蝶々、黎明に落ちて
・船を造る者たち
・包嚢(ほうのう)
・星々は待っている
・形見
・哀しみの杯三つ、星明りのもとで
・魂魄(こんぱく)回収
・竜が太陽から飛びだす時
・茶匠(ちゃしょう)と探偵
今まで読んだことのないタイプの作品でした。
シュヤ宇宙という、独自の世界を舞台にしているのですが、それぞれの作品に関連性はありません。
アジアを彷彿させる大家族主義、先祖崇拝、長幼の序、親孝行、輪廻転生、観音信仰等、私たちにも身近なそれらが、シュヤ宇宙に住む彼らの日常に深く影響を与えている。
しかし人々は死んでも、その記憶はデータ化されその多くは子どもに受け継がれる。
多くの御先祖様と実際に暮らす生活。
彼らの住む大越帝国は、過去に大きな内戦を経験している。
また、支配する民族と支配される民族に分かれているのに、包嚢を身につけることによって、見た目も文化も支配者の方に合わせていくうちに、アイデンティティが崩壊してくなど、遠い宇宙を舞台にしながらまるで現在の世界のことを書いているかのようでもある。
私たちの住む世界との最大の違いといえば、宇宙船は船魂を持って、人間の女性から生まれてくること。
宇宙船はあくまで機械なのだが、精密に設計された機械を女性の体内に入れ、母体に育てられることによって有機的な思考や判断力を身につけ、生まれてくる。
もちろんそれは母体にとって、とてつもない苦痛と危険を伴うので、生活のためにそれを受け入れるという階層の人たちは一定数いる。
船には母を同じくする人間の兄妹がいて、いとこがいて…。
船は深宇宙に人間を運ぶ。
深宇宙は肉体的にも精神的にも人間に深いダメージを与えるので、性能の良い船が必要となる。
深宇宙で死んだ人間は宝石になる。
そういう世界のあれこれ。
世界についての細かな説明は特にないので、読みながら少しずつ知ることになる。
それが楽しい。
設定が突拍子もないので、脳内で視覚化することもできなかった。
それでも、人々の哀しみ、あきらめ、怒りなど、ストレートに心に刺さった。
タイトルの茶匠は、船です。
人間が深宇宙に行くときに精神が壊れないように、その人に合わせて調合されたお茶(という名の合法的麻薬じゃないかな)を提供する船。
イメージできんが、そういうこと。