【感想・ネタバレ】国家と記録 政府はなぜ公文書を隠すのか?のレビュー

あらすじ

公文書は歴史の記述に不可欠であり、後世の政策選択のためにも参照されるべき国民共有の知的資源。そして、国民の知る権利や行政の説明責任を担保するものです。このような理由から公文書管理法は制定されましたが、この数年来、その法の精神を裏切るように、皇室会議の議事録未作成、自衛隊日報の隠蔽、統計偽装問題が起き、森友・加計問題等、公文書が意図的に記録されず、隠蔽、改竄される事態が続発しています。情報公開法と公文書管理法があるにも関わらず政府が公文書を恣意的に作成せず、破棄したり、隠したりする理由は何なのでしょうか。本書はこの問題を概観し、あるべき公文書管理体制を展望します。◆主なトピック◆◎政府の統計がおかしい◎金融庁報告書問題◎新自由主義時代の情報公開と公文書管理制度◎公文書管理法はなぜ骨抜きにされるのか◎森友学園問題の再燃◎文書「改竄」と民主主義の危機◎文書主義と公文書管理法◎イラク日報問題に見る公文書管理の歪み◎加計問題に見る公文書公開のあり方◎皇室会議の議事録未作成◎電子メールは行政文書か◎対談 情報公開と公文書管理の制度をどう機能させるか 三木由希子氏(特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス理事長)

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Posted by ブクログ

公文書をめぐる具体的な問題を題材にしているので、理解しやすい。
メールなど電子文書の扱いは大きな課題となるだろう。

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2021年04月04日

Posted by ブクログ

政府の公文書開示に対しての批判は過去のニュース報道でも大きく取り上げられたように、加計学園、森友学園などの政府の行き過ぎた関与、工事代金や土地買収に関するもの、自衛隊の海外派遣時の日報など、その開示対象は多岐に渡り、様々な理由がつけられて開示されずにやり過ごされた感が強い。ニュースを見ていると、保管されていないもの、保管されていても公式なものと認められないこと、廃棄してしまったものなど、その取り扱いは開示請求を受けた側の裁量によって自由に片付けられている印象が強い。政治が国民の経済活動に深入りすると当然に税金を払う国民側からは、支払った税金の使い道や不正な利得に繋がっていないかなど、追求を受ける事が予想されるが、その証拠となる文書が自由に扱われるとなると当然批判の目に晒される。こうした事が繰り返される度に、より重要な政治議論が停滞し、国家運営に支障をきたしているとなれば、国家の文書管理に関する法制度は一体どうなっているんだと、疑問に思う国民も多いだろう。それは文書管理規定として存在するのだが、そこは数々の言い逃れや弁明をしてきた政治家だけあって、抜け道を上手くすり抜け、有耶無耶のうちに回避しながらいつしか記憶からも薄れ、やがては過去のどうでも良い事に落ち着いていく。監視すべき国民側が飽きてしまうと言った方が正確かもしれない。だが世の中にはしっかりこうした点に問題意識と情熱を持ち続け、改善を試みようとする勢力がいる事を本書は教えてくれる。本書に度々登場する特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウスなどがそれにあたる。本書はそうした活動団体が過去に指摘してきた(前述したような森友・加計問題など)情報公開に関する問題点や課題を中心に、国の情報公開が如何あるべきかについて述べていく。
国政としては前述した税金の使い道など含め、透明性のあるプロセス及びそれを証明するための議事録や過程で作られた文書の開示は必要であると認識する。然し乍ら、あまりに文書化にこだわり過ぎて、一般的な業務に支障を来すような手間が増加して仕舞えば、それこそ公務員の負荷に跳ね返り、結果として税金の無駄遣いに繋がるため本末転倒である。ただでさえ時間のかかる行政、加えて日本人特有の業務非効率や生産性の更なる低下を引き起こす結果となる。それを抑止する為の文書管理規定であるから、隙間を縫って逃げる逃げないは、各担当者の正しい事を正しい手続き、進め方で行うと言った人間性に委ねられる点も多い。行政は巨大なピラミッド組織であり、その頂点に君臨する行政官庁及びその長たる大臣クラスの指示には逆らえないだろうから、言ってみれば誰をどういった人間性を持つ政治家をそれに任命するか、結局は総理大臣の責に帰すというのはある意味正しい議論である。そして大臣クラスが全ての行政を一々末端の業務まで見れるというのは現実的にはありえない為、それを縛り統制するための法制度が重要だという、永遠に終わりの見えない議論を繰り返す。効率性と透明性のバランス、そこに人間性と融通の効く法制度、様々な要因が連なり答えの見えない議論に発展する。だが本書に記載されるような団体がそれを監視し、課題を指摘し続ける。筆者のような人物がそれを書籍に表していく、この姿こそが本書の役割なのだと理解した。
一つ効率性に関しては近年技術的進歩の著しいAIに向けられる期待は大きい。会議議事は「要約」として自動的に残してくれるし、わざわざ議事録に起こす必要もない。法律の整備が進めば、アメリカの様にメールによるやり取りも効果をあげられる。コンピュータの処理能力の向上と共に検索性が上がれば、タグづけなどの手間も減り、今よりもずっと効率的に透明性を高める事ができるのでは期待する。何れにしても政治とは分かりづらく不透明なものである。記録する人間に隠す人間、それを追求する人間。そして技術進歩と、その微妙な力加減によって、徐々に良くなって行く事を期待する。

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2025年03月24日

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