あらすじ
歴史、社会、政治、習俗などあらゆる観点から分析する、日本人論の教科書ともいえる名著。外国人としての客観的視点と、研究者としての知識を備えた深い洞察は、現代日本の問題を驚くほど示唆している――。
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日本人とは何者かを、歴史的背景から丹念にまとめあげ、その上で政治や経済、国際関係の仕組みや課題を的確に論じる。歴史を細やかに確認しているから、その後の論に破綻がない。なので、現代の状況や課題を考える時にも本書は大きな力になると思った。
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【今日の複雑かつ密接な国際関係下におけるより深刻な問題は、彼らが日本人であることを意識しすぎている点にこそあるので、日本人らしさの不足にあるのではない】(文中より引用)
東京に生まれ、歴史学者、そして駐日アメリカ大使としても日米関係の深化に努めたエドウィン・O・ライシャワー。そんな日本研究の第一人者がライフワークとした日本論にして日本人論です。訳者は、同時通訳者として活躍された國弘正雄。原題は、『The Japanese』。
40年以上前に執筆されたとは思えないほどに現代性・今日性を残した記述となっている点がまず驚き。時の経過に耐える古典としての堂々たる風格を備えた一冊だと思います。日本論・日本人論というと敬遠する人もいるかと思いますが、やはりその極北の一つともなるとレベルが違う印象。
ザ・クラシック☆5つ
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日本人とはいかなる存在か?
おそらく日本人ほどこの問いに熱心な民族はいないでしょうが、そんな問いに対し答えのひとつをくれる一冊でしょう。
本書は元駐日大使であり歴史学者でもあるエドウィン・O・ライシャワー氏のライフワークとしてまとめられた日本論、日本人論です。
初版は1979年であり当時ベストセラーとなったようですが、今読んでも全く色あせない、日本や世界に対する幅広い知識と深い洞察には思わず舌を巻きます。
今日の日本の実相を伝えたいとあるように、主に70年代の社会、経済、政治などについて述べられており、それらの把握のために国土や歴史的背景についても冒頭にまとめられています。元々外国人向けに書かれているので、日本人にはお馴染みの所も多いのですが、要所要所でライシャワー氏の高い見識がみられ飽きる事がありません。
最初の出版から40年がたっていますので今では当てはまらない箇所もありますが、私達の根底にあるもの、現代にも通じる日本人の性質や自分達に対する理解(あるいは無知)などが驚くほど浮き彫りにされています。
それと同時に、当時の社会や人々を知る上では大変な良書となります。「将来への展望は、過去を正しく理解しているかどうかによって決まるのが常である。」とする氏が述べた日本の将来と現在とに大きな差がない事からも、当時の有様がいかに正確に捉えられているかが分かります。
興味深い点はいくつもあるのですが、面白いなと思ったのが、「さいきんの若い学生は、個我の主張とはなにかを模索する過程で、個人主義ということばをやりすごし、むしろ「主体性」ということばを愛用するかたむきがある。」という所です。
これは今でもぴったり当てはまると思います。
個人主義なんていうと、著者のいうように勝手気儘というニュアンスを(日本人は)感じますが、主体性はなんだか素晴らしい人間のように思われる。
ただ、教育現場でも個性の尊重や主体性を育むといった言葉は使われると思いますが、会社組織で使われるものとは意を異にしている気がします。
学生の使う個性や主体性はやや欧米でいう所の個人の意味を帯びているのに対し、企業の求める個性と主体性はあくまで組織内で円滑に発揮でき成果を上げられる性質のものに限定されているように思います。
たまに見られる両者のミスマッチは、これもひとつの原因でしょうか。
また、新しい時代を迎えた今でも特に必読と思われるのが、最後の「世界のなかの日本」です。そのなかでは、外部世界との関わりが日本にとっていかに重要であるかを示しています。
日本は食料にしろ工業製品の原材料にしろ、他国と比べても輸入に頼る割合が極めて高く、故に世界中の国々と経済的な関係を持っています。よってひとたび世界の平和が崩れ、貿易が遮断されるようなことになれば、最も甚大な被害を被る国のひとつであることは誰もが知る所です。
にもかかわらず、これらに対する日本の姿勢が十分でない事が指摘されています。
「多くの他国民に映る日本の姿は、他者がつくり出した世界秩序に黙々と参加するだけで、軍事力を回避するという形で消極的な貢献こそはたしているものの、これという積極的な貢献はしていない存在、といったところであろう。それどころか、経済成長率の高さに、秘密主義的な外見と、他者への無感覚とが加わり、世界秩序や世界貿易を破滅に導く可能性こそあれ、世界を遅滞なく動かしていく上に貢献できる存在とは、みられていない。」
なかなか耳に痛いご意見です。現在ではいくらか改善されていると感じますが、他所でおきている事にはどこか他人事、といった空気には残念ながら覚えがあります。
一方で著者は、日本の潜在能力から、21世紀の人類が抱える諸問題解決の為の、もっとも先導的なリーダーとなりうる可能性も示して本書を括っています。
40年前に書かれているものの、まさに今の私達への呼びかけであると感じました。
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ライシャワーさんは、1961~1966まで、駐日アメリカ合衆国大使だった人。
日本滞在時期は「一枝の桜」のオフチンニコフさんとほぼ重なっている。
ソ連視点との違いを知りたいなら「一枝の桜」と読み比べるのがいいかも知れない。
戦前の日本人論であるベネディクトさんの「菊と刀」から30年以上経ち、戦後の高度成長中の日本を論じているので日本社会の変化も読み取れる。
「菊と刀」が哲学的で抽象的要素が多いのに対し、本書は具体的な事実を基にしたノンフィクションであり理解しやすい。
今は1975年から50年も経っているのに、日本はあまり変わっていないと感じる部分が多かった。
エネルギー政策やコロナ対応など「なんで日本はこうなの?」という令和の日本を理解するのにも役立つ。
私が生きてきた日本の社会(家庭、学校、会社、宗教など)や政治(国会、選挙、政党など)の在り方が詳しく書かれており、
「そうだったなー」と感じたり「そういうことだったのか」と今さら知ったことも多い。
1976年の政治情勢を見ると、自民党が後退し与野党接戦で、今日の状勢と似ている。
当時は、田中角栄の金まみれの政治が非難を浴び、クリーンが売りの三木を総理にしたが、自民党の派閥抗争で三木おろしが起きる。
自民党支持が下がる中で、新興保守勢力として結成された新自由クラブが人気を得る。
現在は、旧安倍派の裏金問題などで自民党離れが起きており、クリーンな石破で自民支持者の引き留めを図っているが、自民党内の政局争いで石破おろしの動きがある。
国民が自民党の支持をやめても立憲民主党の支持に回るわけではなく、新興保守勢力として参政党や国民民主党が人気を得ている。
これまで、複数の野党は一つに纏まったためしがなく、今日の政局を見ても纏まる気配はない。
選挙制度があまり変わっていないので、政治家の体質もほとんど変わっていない。
本書は、「社会」「政治」「世界の中の日本」という章立てで、P190以降の500ページを割いている。
ライシャワーさんは、日本史研究家として有名だそうだが、本書は特に昭和に比重を置いた日本現代史だと言える。
今回、「菊と刀」「一枝の桜」「ザ・ジャパニーズ」と、外国人から見た日本・日本人論の本を3冊読んでみた。
この中では本書「ザ・ジャパニーズ」が断トツで面白かった。
1979年の出版ということは、バブルが弾ける10年も前で高度成長の真っただ中だ。
この時に、現在の日本の姿を見越したことを沢山書いている。
欧米の歴史や思想に精通している著者が、日本と世界の常識の相違から、日本の問題点を洗い出し警告している。
いろいろ指摘すれば何か当たるでしょうが、ほとんどの事が見透かされているように鋭く分析されている。
ライシャワーさんが生きていたら、現在の日本がどのように見えるのか聞いてみたい。
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驚くのは言語障壁を1970年代に指摘していたこと。このとき、英語圏も障害としていたが、今や、英語は世界公用語に近い言葉となったので、間違いと正解がこの本にも混在している。しかし、結果論かもしれないが、人口動態を見れば明らか。
日本人の変わらなさに辟易します。
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書店に平積みされてた700頁の文庫本。著者はエドウィン・O・ライシャワー博士、訳は國弘正雄さん。令和元年10月25日初版を確認し、即買した。
もともと1979年に外国人を対象にした著書で、アメリカではベストセラーになったとのこと。「歴史的背景」「社会」「政治」「世界の中の日本」の各項で驚くべき分析が明快かつ格調高い文章でなされている。もちろん、発刊後40年経った令和の「日本」が変貌した点はある(「大衆文化」「婦人」「政党」など)。しかしそれ以上に変わらぬ「日本」があり、我々「ジャパニーズ」が忘れてはならない生き方が指摘されている。即買してよかった。